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45話 閑話 ある騎士の証言① 騎士A

<騎士A 怒りの奮闘記>


 中隊長が走り込んできた。

 ここはムゥナという街に駐屯している騎士団の詰め所だ。


 大きな街には騎士団の駐屯所がある。

 魔物の氾濫や盗賊団の襲撃など街の自警団では手に負えない場合に備えて、国から騎士団が定期的に交代で駐屯している。


 このムゥナは街の規模としては小さく、本来なら騎士の駐屯はない。だが死の森から近いという事で1中隊が常に派遣されていた。


 中隊は、中隊長、副中隊長、小隊長5名、その下にそれぞれ10名の隊員で構成されている。

 小隊のひとつは街中の見回りや門の自警団との連絡等に出ており、3つは駐屯所に待機、残り1小隊は休みとなっている。



「現在詰め所にいる3小隊はすぐに出発の準備に取り掛かれ」



 飛び込んで来た中隊長が俺達に向かって叫んだ。


 4〜5日前に重要な任務が発令されるかもしれないと言っていた件か。


 どうやら稀人が現れるらしい。稀人が我が国に現れるのは58年ぶりだとか。

 俺が生まれるずっと以前、俺の親父が生まれるより前か。


 そもそも、稀人とは、どこか異界から来た何か不思議な力を宿したお方と聞いた事がある。


 しかも今回は国領の複数の箇所に現れるらしく、国の上層部もてんやわんやの騒ぎらしい。

 そのひとつが我々が現在駐在するこの街に近いという事で、俺達が急遽お迎えにあがる事になったのだった。



 そして、稀人の印が光ったのは「死霊の森」の上。


 よりによって、あんな危険な場所に落ちてくるとは!

 中隊長、副中隊長と小隊長3名と我ら30名で急ぎ森に向かった。



 中隊長は森の手前で騎馬と荷馬車と副中隊長及び2小隊を待機として残し、中隊長と1小隊の11名で森に突入した。




 死霊の森は獣や一般的な魔物のほかにアンデッドの魔物が出る。


 陽が高いうちはアンデッドは少ないが、暮れ始めると途端にアンデッドが急増する、らしい。


 らしいというのは、俺も俺がいる隊の誰もここに入った事がある者はいなかったからだ。

 唯一、中隊長が過去に一度だけ入った事があると話に聞いた。だが、森の浅いところで早々に引き返したそうだ。


 アンデッドには武器や攻撃魔法が効きづらく、手間取っているうちにどんどん増えていき、どうにも出来なくなるらしい。

 とにかく明るいうちが勝負だと俺たちは急いだ。




 神託の印が出たらしい場所に向かって森を突き進んで行くと、変な場所に出た。



 樹々に囲まれた中に突然現れる石壁の平たい建物。高さは一階程度だが、広さはかなりありそうな建物だった。

 壁には大きな透明の窓があり、そこから中が見えた。


 ん?

 なんか、人が大勢いるが?



「隊長……稀人っておひとりではないのですか?」


「いや、私も、おひとりだと勝手に思っていた。神官どのは人数はおっしゃっていなかったがこんなには……? まさか、全員、稀人ではあるまい?」


「稀人おひとりとお付きの方たちですかね?」


「いや、稀人がお付きを連れて降るとは聞いた事がないが、それにしても多い」



 だが、ぐずぐずしていられない。何しろここは死霊の森。

 建物の角の壁をよじ登ると階段が見えた。


 階段を降りた先にある扉らしきところから中隊長が先頭をきって中に入り、俺たちはそれに続いた。


 外から見た以上の人数がそこにいた。


 そして全員が黒髪黒目で変わった服を着ていた。



 やはり…………全員、稀人だろうか?


 そんな事を考えているうちに隊長が稀人の長と話を進めたようですぐさま脱出となった。


 森には12人で入ったのだが、この人数を守れるだろうか?ざっと見て百人くらいいないか?

 先頭に小隊長ほか1名、列の途中の左右に1名ずつを4箇所、最後尾に中隊長と俺がついて走る事となった。



 建物から出るのに押すな押すなでまず一悶着。1列で走り始めたがすぐに途中途中ダンゴ状態になった。


 獣や魔物が寄ってくるので静かに走るようお願いしたのだが、一向に口を閉じない。



「押さないで!」

「早く行ってよ!」

「抜かすわ!」

「ズルコミやめて!」

「いた! 草当たった!」

「サンダル脱げるうう」

「なんで、こんなとこ、走らないと、いけないのよ!」

「クモクモクモ !ぎゃあああああやあだああ」

「え! くもおおおお」

「ストッキング伝線したんですけど!」

「もうやあだあ」



 何だ、コイツら……。


 しょーもないお貴族さまよりもしょーもないぞ?稀人ってのはお貴族さまなのか?

 中隊長をチラリと見ると、死んだ目をしていた。



 わかります!そのお気持ち!


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