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34話 異世界の街

 これが異世界の街かぁ。通りや周りの街並みをしみじみと見回した。



 パソコン画面で見たゲームとはやはり全然違うな。

 当然だけどなんていうか現実っぽい。足元のデコボコのレンガ道とか、ホコリっぽい建物の汚れた壁とか。


 小説では「中世ヨーロッパの街並み」なんてよく表現されているけど、この感じがそうなのか?

 それ系の映画に出てくる背景っぽいと言われればそんな気もする。



 大通りはデコボコではあるけど一応石畳、大通りと言うだけあって結構広い道が真っ直ぐ続いている。

 道の両側には石や木やレンガで作られた家や店が並んでいる。


 ああ、なんか、海外旅行に来たみたいな気分だな。テレビでよく見るドイツかスイスあたりの田舎町みたいな感じだ。馬車とか馬が似合いそうな街並みだ。


 一軒一軒覗いてみたいぞ。スマホで写真を撮りたい気持ちがグッと上がってきたが我慢した。今度時間がある時にこっそり撮ろう。



 さてと、大通りをズンズン進んで行き大きな四つ角まで来た。

 右に曲がると神殿だっけ?


 でも神殿に行く気は無い。

 俺を置いていったやつらと合流なんて、するわけがない。



 まずはギルドだろう。

 冒険者ギルド。ギルドで冒険者登録して身分証を作るぞ!




「ええと…」



 冒険者ギルドってどこだ?



 あたりをキョロキョロ見渡してみたが、わからんぞおおお。さっきの門番のおっさんに聞いてくればよかった。


 自分の迂闊さを悔やみながら、誰に聞こうとあたりを見ると、道端に座り込んでいる小さな子供を見つけた。


 日本の年齢だと小学校入学前くらいかな?

 かなり痩せていて髪はボサボサ、身なりも擦り切れて破れたゴワゴワのワンピースのような服を着ている……女の子?


 ストリートチルドレンかな?わからない。

 日本ではストリートチルドレンなんてほとんど、というか全く見たことなかったからな。



 石壁の外側にスラムみたいなのがあったけど、街の中にもスラムがあるのかもしれない。

 それはさておき、俺はゆっくりと女の子に近づいて行った。そして女の子の正面ではなく横にしゃがんで話しかけてみた。



「こんちわ。今忙しいか? もしヒマだったら道案内をしてくれないかな?」



 いきなり話しかけてきた俺にビックリして、女の子は飛び上がるように立ち上がった。



「あ、俺、この町は初めてで迷子なんだよ。あ、その、もちろんタダじゃ無い。案内料は払うよ?」



 慌てて早口で言い訳を口にした。怪しかったかな?怪しい人間に見えるかな?


 立ち上がった女の子は去ろうとした足を止めた。少しの間、俺の目をジッと見つめて悩んでいるようだった。

 俺は急かさずに女の子の返事を待った。

 やがて小さい声で返事が返ってきた。



「いいよ。どこに行きたいの?」



 よっしゃあ。



「ありがとう。まずは冒険者ギルドかな。ギルドの場所は知ってる?」


「知ってる。こっちよ」


「ありがとう。君の名前を聞いてもいい?」



 いやホント、俺、怪しくないからね。誘拐犯とか変態じゃないから。




「………………アリサ」



 少しの沈黙の後女の子は答えた。



「そう、アリサ。よろしくな。俺はカオ」



 もちろんゲームの時の名前を名乗った。こっちの世界では今後も「カオ」で通すつもりだ。



 アリサに連れられて大通りを左に曲がって進んでいった。神殿とは逆の方向だな。


 歩きながらアリサと少し話をした。

 アリサはスラムで暮らしているという事だった。スラムは街の壁を挟んで外側と内側の両側にあるらしい。

 ちなみにアリサは壁の内側のスラムに住んでいるそうだ。


 年齢は8歳だそうだが、あまりに痩せて小さいので8歳には見えなかった。

 スラムに住んでいても毎日仕事を見つけに大通りに来ているそうだ。

 冒険者として登録して働けるのは10歳からなのでそれまではなんとか小銭を稼いでしのぐしかないらしい。


 とはいえスラムの子供に出来る仕事がそうそうあるわけもなく、もっぱら屋台や食堂で食べ物クズを貰って帰る日々がほとんどらしい。



 ネット小説では異世界に転移した主人公が、孤児院を作ったり孤児の面倒を見たりしていたが、現実的にはそれどころではないよなぁ。

 他人の面倒より自分の面倒だよ。まずは自分の生活を確立しないとな。


 だって俺ってば、身分証もなければ、今日泊まる宿もない、職もない、そして金もないのだよ!


 アイテムボックスの中にはゲームの時のお金がわずか30Gあるだけ。


 疑問。

 ゲームのお金ってこの世界で使えるのか?仮に使えたとしても30ぽっちじゃなぁ。



 アイテムボックスの中の30Gはゲームでは皆「30円」と言っていた。

 ゲームでは町に倉庫屋さんがいて、プレイヤーは皆、倉庫を利用していた。


 キャラの持ち歩けるアイテム数や重量に制限があったため、狩りに不要なアイテムは倉庫に保管するしかなかったのだ。

 倉庫は入れるときは無料だが、出すときに30Gが必要だった。


 パーティ狩りではドロップを分配をする。その時に自分が元から持っていたお金とドロップしたお金が混ざってしまってわからなくならないように、たいていの人は倉庫にお金も全額預けていた。

 もちろん出す時のために30Gだけは手元に残してだ。


 たまに、うっかり全額倉庫に入れてしまい、倉庫から物(もちろんお金も)が出せなくなる人がいた。

 よく倉庫の前で「すみません〜〜誰か30円恵んでください〜〜」と泣いて頼む人を見かけた。


 かくいう俺も、ええ、やりましたよ。うっかり全額倉庫に入れましたよ。

「30円貸してくれる人いませんか〜〜」と倉庫前で泣きながら叫びましたとも。


「あげるよw」と笑いながら30円、もとい30Gを地面にポイと置いてくれる親切な人がいて助かったけど。

 今思えば、親切な人が多くて楽しいゲームだったな。



 思い出はともかく、この世界のお金を持っていない俺は、まず冒険者ギルドに登録をせねば。

 そしてさっきイッヌ達が取ってきた鳥とウサギとイノシシを売ってお金に変えるのだ。


 左に曲がったあと大通りをいくらも歩かないうちに、今度は右の脇道に入った。

 そのあとすぐ左に曲がって、「道覚えられるかなぁ」と不安に思った時、アリサが建物を指差した。



「ここだよ」

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