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129話 ゴルダの来訪

 新しい家に住み始めて10日。土屋達の襲来から8日目の朝の事。


 皆んなで朝食を食べていた時に表側の店の閉まった戸板をダンダンと叩く音がした。


 土屋達がまた性懲りも無く騒ぎ出したのかと俺たちは顔をしかめた。

 日中警備のバズッドさんはまだ来ていない。夜間から朝警備のガイが店の中側からの対応に向かったようだった。



「ツッチー懲りないね」



 ベーコンのような干し肉を薄く切って油でこんがり焼いた物をあっちゃんが呆れ顔で咀嚼していた。



「あれ? でもキーキー声がしない」

「今朝は田畑さんですかね彼女ボソボソ話すから」

「でもさーいい加減にしてほしいよねー」

「あ、これ美味しい!」

「どれですか?」

「焼きトマト…もどき?」

「あ、ホントだ! うまっ」



 焼いた野菜をパンに乗せたり、スープにつけたりと、それぞれが朝食を楽しんでいた。

 ……土屋達の事さえなければ、もっと心から楽しめてたはずだ。


 すると対応に向かったガイがすぐに食堂に戻ってきた。ガイの後ろにはギルドのゴルダがいた。



「朝早くからスマンな。メシ食い終わったらちと話がある」



 どうやら店の戸板を叩いていたのは訪ねてきたゴルダのようだった。

 ゴルダは、季節柄まだ使っていない暖炉の前のソファーに座ろうとリビング側に歩いていった。



「あ!土禁!」

「ゴルダさん!」

「ゴルダさんそこダメ!」



 皆んなに止められてゴルダはタタラを踏んだ。リビングのラグマット手前だった。セーフ。


 眉間にシワを寄せテーブルの方を振り返ったゴルダにガイが苦笑いしながら説明をした。



「ゴルダさん、この家のルールとかでそのマットの上は靴を脱がないといけないらしい」


「ああ? 靴を脱ぐって裸足か?」


「そうなんだと。そのゾーンは靴を脱いでリラックスする領域らしい。稀人は面白い事を考えるな」



 ガイはクスクス笑っていた。

 驚いた。ガイは俺たちが稀人と知っていたのか。ゴルダから聞いたのか?と、ゴルダのほうを見た。


 ガイは、食事のテーブルから余った椅子をひとつ持って、土禁ゾーンの手前にいたゴルダに渡した。

 ゴルダはその椅子に座りながら俺たちの方を見て首を縦に振った。



「お前たちが稀人である事は警備の3人には話してある」


「まぁあれだけ色々あればな、気づくやつは気づいているぞ、気づかない方がおかしいだろう」



 あれだけ?色々って何だろう。とりあえずメシを食おう。



 メシを食い終わり俺たち大人組はゴルダのいるリビング部分へ。



「あっちゃん、今日はエルダとふたりで買出しに行ってきますね」



 アリサがエルダと市場へ買出しに出かけた。

 ジェシカとキールはテーブルの上の食器の片付けと洗い物、ダン達男子組5人は裏庭のイッヌと馬の世話にむかった。

 ジョンはマルクを抱いていた。馬の世話の間はマルクをイッヌと遊ばせておくそうだ。



 俺たちは履いていたサンダルを脱いでマットの上に上がりそこらに腰を下ろした。

 俺らが全員座ったのを待ってゴルダが口を開いた。



「いくつかお前らに知らせる事がある」



 何だろう…ゴルダの表情からあまり良い話ではないかも知れない。

 ここ最近は事件つづきだ。土屋らの借家乗っ取り、ゴブリンの氾濫、開拓村の大脱走。そして新家屋への土屋達襲来………。


 この世界に来て、何とか頑張って生きようとしているのに、神様?ちょっと厳しくないですか?

 ヨッシー達も同じような事を考えていた様で、皆、暗い顔になった。



「ああと、まぁ、そこまで悪い話じゃないぞ」



 ゴルダが慌てて繕ったが、「そこまで」じゃないけど悪い話なんだ?

 あああ、聞きたくねぇぇ。



「まずひとつ。トリューに次の仕事が入った。指名依頼だから断れねぇ」



 え、夜間警備のトリューさん、まだ1週間なのに?元々短期とは言われていたけどな。

 トリューを起こしに行ったガイが、ちょうどトリューを連れて戻ってきた。



「トリュー、指名依頼だ。あとでギルドに寄ってくれ」


「そうか、わかった。ここは居心地が良かったんだが…」


「戻ったらまた紹介する。で、代わりは後で連れてくる」


「後任は決まってるのか?」



 ガイが気になったようだ。



「ワイズだ。宿を引き払って来るそうだ」


「お、ワイズか。前に一緒にやった事があるな。子供好きのいい奴だったな、確か」


「ああ、ここ向きだろ?」



 短期で交代とは言え慣れた人がいなくなるのは寂しいな。俺たちはしんみりしてしまった。



「初めから、子供好きで夜間警備に向いてるやつを数人で回していく予定だったぞ。トリューも今回の指名依頼が済めばまた警備のローテに戻る」



 ギルドってすごいな、そこまで考えてくれるんだ。俺たちも頑張ってギルドの仕事をしていこう。

 って、ギルドはもう通常業務に戻ったのか?それなら明日からでもギルドの依頼を受けたいな。



「で、警備交代の話はここまで。次はこの街にいる稀人の話だ。お前さんら以外の」



 え?俺たち以外の、この街にいる稀人?


 キックやナオリン達は今は開拓村にいるはず。俺ら6人以外だと…。


 最近毎日突撃してきてる土屋ら6人。土屋、田畑、上野、中倉、北本、上尾。


 借家乗っ取後はどこに行ったか知らんが、上戸、神島、飯星の3人。


 中野、小川と1係が7人、あと三好今日香の元開拓村組が10人?



 あ、あと男2名、渡辺さんと大山さんも街に残ったはずだ。確か…スラムに住みつつギルドの依頼を受けるとか言ってたな。


 誰の、何の話だろう。


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