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11話 社内清掃①

 島係長からのメールは、わかっていてもハラが立った。

 結果は同じでも言い方があるだろう。


 島係長とのフレンド登録は速攻解除した。


 中松さんと大森さんにはメールでお願いしておいた。



「誰かに聞かれたら鹿野さんと連絡が取れなくなったとだけ言っておいてください」




 そう。

 これが夢だろうが現実だろうが、もう「会社」に気を使うことはしなくていいんじゃないか?


 あっちの世界では派遣を切られると生活が困窮するので我慢してきた。

 どんな無理難題を言われてもひたすら頑張ってこなしてきた。


 でも、この夢か現実かは知らん世界でそんな我慢は必要か?

 やまと商事という会社にしがみつく必要はあるか?

 向こうが俺を切り捨てた。

 この世界でまで、あの会社の人達の奴隷でいる意味は、もうない。


 まあ、ひとりで残されても強気でいられるのは、たぶんステータスにゲームキャラのアイテムや魔法があるからだろう。

 ただの人間で、こんなところにひとりで置き去りにされたら、そりゃぁもう怖いし不安だし即死ねるな。




 さてと、これからどうしよう。


 マップを出して最大にしてみた。

 真ん中の四角(この建物)に青い点(俺)、そして森の中を移動している黄色い点がウジャウジャと細長く伸びていた。

 これは社員たちだな。



 離れていた赤い点が、黄色い点の集団の方へとゆっくりと移動していってる。

 なるほど、急いで森を抜けないと危険と言っていた意味が理解できた。

 ゆっくりしてたら集まってくるな、(モンスター)が。


 今から追いかけても赤い点に囲まれそうだし、やはりここに一晩籠るのが得策だろう。


 籠るのは資料庫にだけど、その前にする事がある。


 この建物にある物品を色々と頂戴しておこうと思う。

 え?ドロボーじゃないぞ?

 社内清掃だぞ。


 ここがそんなに危険な森なら、この先みんながここに戻ってこれるとは思えない。

 日が暮れるまでまだ時間があるので、持っていけそうな物をアイテムボックスに入るだけ詰めていこうと思った。



 まずは自分の机の中‥‥‥えーい!メンドくさい、机ごと収納!

椅子もポイ。


 中松さんと大森さんの机と椅子もポポイ。

 パソコンとかプリンターはどうする?

 この世界に電気があるかわからないが、一応収納っと。

 FAXはいらない。(電話回線が不通だから使い道なさそう)

 事務室って意外と使えそうなものないなぁ。



 次、給湯室。


 お客様など来ない部署だが、社員のためのお茶タイムで使用されている給湯室。

 ちなみに俺は派遣なので使用を禁止されている。(ムカっ)

 どのみち、茶を飲む時間も無かったけどな。


 お局社員曰く、

「ハケンは仕事するために雇ってあげてるのよ。仕事中にコーヒーとか絶対ダメだからね」

 だそうだ。

 お前に雇われてるわけじゃねぇぞ。


 使用禁止だった給湯室に初めて足を踏み入れた。

 あるわあるわ。


 コーヒーカップ、湯呑み、ポット、布巾、湯沸かしポット。

 日本茶、インスタントコーヒー、ドリップコーヒー、紅茶、ココア。

 割り箸、紙皿、紙コップ、ラップ、紙ナプキン、(年末乾杯用かな?)食器洗剤、スポンジ、布巾用洗剤、バケツ、ゴミ箱、雑巾などなどなど、使えそうな物がいっぱいだ。


 もちろん全部いただいていきますよ。

 ちなみに冷蔵庫に入っていた社員さんの飲みかけペットボトルやアイスはパス。

 冷蔵庫を持って行こうかと思ったが、あまりに中が汚かったのでやめた。



 次は、総務の備品室だ。


 こちらも入ってビックリ。

 何だこれ!!!


 大量のコピー用紙は量はもちろんサイズもカラーもバッチリ揃っていた。

 文具は全て箱買いで置かれていた。


 ボールペン、シャーペン、エンピツ、色鉛筆、蛍光ペン、マジック、消しゴム、シャープの芯、付箋、セロハンテープ、ガムテープ、糊、ハサミ、ホチキス、ホチキスの針、メモ帳、定規、パンチ、ノート、クリアファイル、各種バインダー、ボックス、電卓、輪ゴム、クリップ、乾電池、もろもろもろ。


 何だ、この種類の豊富さ!量の多さ!文房具屋さんかぁ!


 俺が派遣された初日に、


「文具は自分で用意してくださいね 。仕事にくるんだから持ってくるの当たり前だから」


 と、お局社員に言われてその日の夕方、近所の文房具屋で自腹で揃えたんだよな。

 その後もずっと自腹だ!

 本来は仕事で使う備品は会社の経費で購入するのが当たり前だが、『ハケン』は別と言われたので渋々従っていた。



 それから、ダンボール箱多数とヘルメットと軍手も、たぶん防災用か。

 全部いただく。

 片っ端から手で触れて「収納」と言って歩いた。



 いや〜〜、アイテムボックスすごいなぁ。

 まだ満パイにならないぞ。


 よし、次!

 事務室から出てトイレへ。


 積んであるトイレットペーパーをいただく。

 あと、使用中のももったいないからホルダーから外して収納した。


 トイレの奥の用具入れの中は意外と広く、さらに奥が電気室の様な空間に繋がっていた。

 そこにはトイレットペーパーが入った未使用の大きなダンボール箱がたくさん積んであった。


 はい、いただきます。

 掃除用具もいただき。


 女性トイレもね。

 は、初めて入った。……お邪魔します。(痴漢じゃないよ?)


 …………。

 汚かった。(夢が破れた。いや、なんの夢?)




 それからフロアの北側にまわった。


 22階は西側と南側が事務室で、総勢100名ほどが働いていた。

 東側は大きな資料庫、そして北側は応接室や会議室が並ぶ造りとなっていた。


 北側にある部屋を端からまわり、会議室等の長机、パイプ椅子、ホワイトボードなどを頂戴した。

 それから応接室から、ソファー、テーブル、花瓶、絵画などをいただいた。



 北側の一番端にある小さな倉庫、そこには災害用グッズのダンボールが山のように積まれていた。

 たしか、災害時にこのフロア100名が何週間かは滞在できる備蓄があると聞いた覚えがあった。


 2リットルの水や乾パン、水で戻せるおこわやピラフ、焼き鳥やサバ味噌の缶詰、毛布、銀色シート等がそれぞれ詰まった山ほどの段ボールがあった。


 す、べ、て、アイテムボックスに収納させいただきました。

 ありがとねー。


 それにしてもアイテムボックス恐るべし。

 どんだけ入るんだよ。

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