影の王国
『影の王国』
遥か昔、世界の中心には「影の王国」と呼ばれる神秘的な王国があった。その王国は、太陽の光が届かない深い森の奥に位置し、常に薄明かりのような不思議な光に包まれていた。そこには、時間さえも異なり、月が一日に何度も昇ることができるという伝説があった。
王国の住人は「影の民」と呼ばれ、彼らは普通の人間とは異なる能力を持っていた。その力を使うことで、物理的な影を操ることができ、影を使った戦闘や魔法に長けていた。だが、その力を使いすぎると、影に飲み込まれるという恐ろしい呪いも存在していた。
物語は、影の民である青年、リオンの冒険から始まる。
リオンは王国の中でも特に強力な影使いとされ、影の王の直属の部隊に所属していた。しかし、リオンにはある秘密があった。彼は生まれつき、影に触れることなくその力を使うことができた。影を操ることができるのは、他の民と同じだが、他の者と違って、彼はその力がまるで体の一部のように自然に感じていた。
ある日、王国の最奥にある禁忌の地に突如として現れた異界の門。それはかつて、影の王国を滅ぼしかけた魔物の侵入を許した場所であり、長い間封印されていた場所だった。だが、門は今再び開かれようとしていた。
リオンは王から命を受け、その門を封印する使命を与えられた。しかし、門の前に立った瞬間、彼は不安に襲われる。影の世界と現実世界が交錯し、何か得体の知れない力がその扉から流れ出てきているのを感じたからだ。
「リオン、恐れるな。」背後から声が聞こえる。振り返ると、影の王、アザリアが立っていた。
「王よ、これが開かれた理由は?」
アザリアの目が鋭く光る。「それは、君の運命に関わることだ。君の力が、あの門を封じる鍵になる。」
リオンは疑念を抱きつつも、王の言葉を信じるしかなかった。そして、手にした剣を振り上げ、暗黒の扉に向けて力を込めた。影の力が彼の腕から広がり、扉に触れた瞬間、目の前の空間が歪んだ。
その瞬間、リオンは異世界の景色を目の当たりにする。そこには、無限に広がる闇と、そこから生まれる怪物たちがうごめいていた。門は、ただの扉ではなく、他の次元と繋がっていたのだ。
「あなたが来るのを待っていた。」突然、闇から声が響いた。
その声は、リオンの過去に深く関わる者のものだった。リオンは心の中でその声に答えようとしたが、その瞬間、彼の体を何かが引き寄せていく。
そして、目の前に現れたのは、かつてリオンが影の王国を滅ぼしかけた原因となった、失われた影の王女—リラだった。
「リラ...?」リオンの声は震えていた。
リラはかすかな笑みを浮かべ、言った。「私は死んでなどいない。あなたが開けたこの扉から、私は再びこの世界に現れる。影の王国は、私のものだ。」
リオンはその言葉に衝撃を受けた。リラが死んだのは、王国を守るために彼女自身が犠牲になったとされていた。しかし、どうして彼女がここに?