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魔法の木

作者: はやまなつお


近未来。


「人格チェック法」と「悪人削除法」を世界中が採用、

「悪人」が全人類共通の敵と認識された。


全人類の1割が悪人判定されて「大虐殺時代」が10年続いた。


その後、軽・重犯罪者は消滅、基本的に共存共栄に変わった。

争いは激減、治安は向上した。


新しく出現する「悪人狩り」、

「本性を隠す知能犯罪者狩り(通称モリアーティ狩り)」は続いていたが。


反重力エンジンが発明され、個人情報カードを持っていれば

世界中どこでも旅行することが可能になった。


共通語が作られ、基本文型は簡単に覚えられるので

世界中の人間が対話可能に。


悪しき制度、習慣は廃止されて、世界中がより良い方向に

変化するように導かれた。



青年ハンス・ギルバートは反重力ボートで長期旅行、

ヨーロッパのある村にやってきた。

丘の上に奇妙な大木があった。


「トネリコのようだが。こんな巨大で神々しい木は初めて見た。

まるで飛天が浮かぶながら笛でも吹いていそうだ」


動画撮影して。

その夜は大木の下にボートを着地して眠った。



夢の中。


農業の村。村長の家で、ハンスは慣れた調子で食事をしている。

村長の娘さん(平凡な顔立ち)と親しげに話して。

どうやら彼女と結婚していて子供もいるらしい。


そこで目が覚めた。


現実。

「キャーッ!」女性の悲鳴。

暴空族バイク20台ほどが飛び回り、地上の若い女性を追い立てていた。


反重力ボートを発進させる。

「人格チェック確認、Dランク判定、悪人削除法により処刑許可します」機械音声。


ハンスは自動レーザーをセットしてシュート。

バババババッ!


バイクは体をむき出しにしているので暴空族の頭部、心臓を貫いていく。

殺し屋免許を持っているので悪人は削除できる。


墜落していく20台と20人分の遺体。

駐在さんが来たので後の手続きをまかせる。


娘さんは村長の娘で、家に招かれて食事に。

先ほどの夢を話す。


娘レイチェル

「あの樹の下で夢を。それはかならず実現することです!

条件があって、それは作用を知らないこと。


何てこと、村長の娘は私だけですから・・・」



3 


レイチェルは何か雑用をハンスに頼んで逗留するように仕向けた。

1ヶ月もすると二人は恋仲になった。


村長や村人もハンスが立派な人物と認めた。

ハンスもレイチェルの事を恋しく思うようになって。月日が過ぎて。

1年後に結婚、老齢の村長が亡くなって4年目にはハンスが村長に。

子供も2人生まれた。


4 


ハンスとレイチェルが食卓を囲む。

「こんな運命の結婚ができるなんて夢のようだわ。

私たちが出会ったのは、ちょうど5年前の今日ですね。

あの木が私たちの縁結びの神です」


「ああ、あの夢か。でも木が神なんてどうかなあ?

結婚して妻と暮らす夢は見たけど、君ほどの美女ではなかったし。

偶然だと思うよ」


「あたしほど綺麗ではなかった、ですって!

じゃあ私ではない女性と結婚するのが貴方の運命だったってことになるわ!」


「君を夢で見たと思ったのかい?だって君と出会う前だから。

顔はわからないだろう」


「あなたは私の運命の相手ではなかった、何てこと!」

レイチェルは飛び出していった。


夜になってレイチェルは戻って子供の世話を始めた。

しかしふさぎこんでいて笑顔を見せなくなった。



5 


「しまった。相手のプライドを傷つけてしまった。

カンバーセーション(対人交渉術)を忘れてしまった。


夫婦は本音で話し合うべき、と油断した。

親しき仲にも礼儀有り、適切な距離感を保つべきだった。


相手の価値観、幻想を壊してはいけない。

宗教、人種問題と同じで感情と論理では、感情が優先される。


ここからカバーするには・・・。

レイチェルは「あの木の下で眠って見る夢は実現する」と、

幻想というか宗教のように信じている。だったら・・・」


ハンスは反重力ボートであの丘の上の木の下に行って昼寝しました。

夕方に戻ってくると。


「久しぶりにあの樹の下で眠った。夢を見たよ。

君と仲良くこの家で暮らしている夢だった。


子供たちは10才ぐらいだった。だから5年後ぐらいの夢だ。

僕としては実現してほしいんだけど・・・どうかな?」


レイチェルは、じっとハンスを見ました。

「あの樹の下での夢・・・ああ、だったら・・・

その夢での女性は私だった?」


「もちろん君だ」


「良かった。」

そうしてレイチェルは、いつもの笑顔を見せてくれました。


ハンス(今度の嘘は墓場まで持っていこう。夢は見ていないんだから。

かならずしも、いつも正直が正しいわけじゃない・・・)


レイチェル(夢の木の事を知っているんだから予知夢は見ないはず。

 嘘を言ってる。でも私と仲直りしたいのは本当のよう。

 ならば気づかないふりをしていよう)


手本はリヒャルト・レアンダー「夢のブナの木」

(創作童話集「ふしぎなオルガン」の1編)。

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