表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
億回死せるは、偽勇者〜バッドエンドの集束地点〜  作者: つきらゆ
忘れた君への青春賛歌
47/83

EPISODEライラー1






 私は全てを持ってこの世に生まれた。

 今に思えば産声を上げた瞬間から異彩を放っていた様に思う。

 だって、世界は私を中心に回っていて、私より優れている人なんて一人もいなかったから。


 初めて神の存在を知った時、私はその生まれ変わりである事を自覚した。

 それを否定するものは須らくこの手でねじ伏せ叩き潰してやった。



 ──私は一ヶ月で言葉を話した。

 因みに歩いたのは二ヶ月と少しだ。

 教育だの習い事だの親は煩かったが、だいたい一度見れば直ぐに講師より上手く出来た。


 本当に、唯一惜しかったのは、適齢期を迎えても魔力が増えなかった事だけである。

 それでも天下のルフレですら、筆記満点で実技も少ない魔力で高得点を叩き出した。


 簡単だ。そこらの凡人達とは頭の出来が違いすぎる。

 兄や姉は国王の座を狙っているが、私がその気になれば彼らの努力など無に返す。


 けど、今のところ興味もわかないし、使えない奴らを導くのも面倒なだけである。

 ここでも会長をやれとか言われるだろうが、そんなの面倒だし当然やる訳ない。


「はぁ………………つまらない」


 並び立つものが一人もいないのは、全能ではあるがすぐに飽きが来る。

 私は今まで目標を持ったことがない。

 持つ前に全部達成出来たからだ。


 試練という試練が未だに現れないのは、それこそ私が与える側である証明である。

 しかし未だに私の記憶に残るような、私の試練を超える者も現れない。



『──続いて、新入生代表お願いします』

「…………はぁ?」



 ほんの一瞬だけ耳を疑った。

 私は代表挨拶何て頼まれていなかったから。

 今いるのは新入生の最前列で、そういうのは普通控えにいるものだろう。


 この時点で生徒会が無能である事が見え透いた。

 私は苛立ちと共に立ち上がる。

 ぶっつけ本番でもやれないことは無い。


 完璧に挨拶をこなした後、揃って地面に額をつけさせてやろう。





『新入生代表、ユーロ・リフレインです』




 ─────は?












─────────────────────────

─────────────────────







「待ちなさい」

「……………」


 目の前の細身の男が振り返る。

 そのボケっとした動作にまずイラついた。

 大抵の奴なら私の声を聞いただけで、震え上がってつむじを見せるのに。


 しかしそいつはまるで鬱陶しそうに、頭をかきながら私の目を見てくる。

 ……今気づいたが、死人みたいな目をしていた。

 壇上を遠目で見た時には分からなかった。


「……ふぅん…………アンタが首席ね」

「…………決闘とかなら本当にいらない。お前の方が偉い。凄い。だから帰ってくれ」

「は? ……なに、アンタ」


 まくし立てるようにそう言って、帰れと言ったのに自ら帰ろうとする男。

 内容は褒めるものだったがコイツは殺す。

 こんな生意気な態度をとる奴は初めてだったから。


 私はまだ誰にも何も言っていないけど、取り巻きが気を利かせて男の道を阻む。

 戦いは純粋な力だけではない。周りを動かす才能も大いに重要なものだ。


「私を無視できる訳無いでしょ?」

「…………毎度毎度……」


 男が何かを呟いて、しかし小さ過ぎてあまり聞こえなかった。

 何から何まで陰気臭い男だ。本当なら正直近づきたくもない。

 こんな男にたとえ入試で負けても、それ以外が一つでも負けているとは思えなかった。

 とりあえずこの寝ぼけた男をぶちのめして、やはり私が一番という事をここに証明する。
















「───あれ……………」

「…………もう充分か?」




 私は床に転がっていた。

 地面に体が付いたのは初めてだった。

 頭が思う様に働かなくて、今何が起きているのかすらよく分からなくなる。


 頭が真っ白になる経験を私は今生まれて初めて味わっていた。

 数秒、数分、下手したら数時間……。

 体感それくらい長く放心していた。


「…………っ……」


 まず初撃を軽い動作で避けられた。

 その時点で終わると思っていたから驚いた。

 次の瞬間、左側に衝撃を受けて、バランスを崩したら目の前に男がいた。


 私は咄嗟に残りの魔力を使って、避けようの無い範囲光魔法を唱えた。

 しかしそれすらまるで予期したようにシールドに阻まれ届かなかった。


 そして、後は…………。


 武力で押し負けたのもこれが初めてだった。



「──ッ……ふッ、ざけ………ッ」



 ただの人間に負けるなんて事あり得ない。

 何故なら今まで一度も負けた事がなかったから。

 こんなぽっと出の訳の分からない男に、私が劣るなんてまず有り得ない。


 固有能力──そうだ、考えられるなら後はもうそれしか無かった。

 それなら次は絶対に負けはしない。

 その種を明かして手足くらいは引きちぎってやる。



「──もう一回よッ!!」

「…………あ、あの」


「……………………………………は?」


 目の前に居たのは取り巻きの女だった。

 別に許可なんてしてないけどいつの間にか増えていくただのモブ。

 名前も覚えてない気弱そうな女が居て、しかしあの男はどこにもいなかった。


 まさかと思うが脳がそれを否定して、私は覚束無い足で立ち上がる。

 取り巻き全員が気まずそうな、見たことも無いような目で私の事を見ていた。


「か、帰ったみたいです……」

「………………………………」



「ふ、ふふ、ふふふ…………」


 ここまでコケにされたのは初めてだった。

 体が勝手に震えるのが逆に面白くさえ感じる。


 まあ良いだろう。その喧嘩大いに買った。

 それこそ幾らでも言い値で払ってやる。


 考えれば丁度魔力も空だったし、仕切り直す必要があるのもまた確かだった。

 しかし王女に舐めた態度をとって、ただで済む道理など有りはしない。



「ユーロ……、ユーロ・リフレイン………!」




 アンタは私がこの手で殺す。


 私は人生で初めて目標が出来た。




















──────────────────────────

──────────────────────







 入学から丁度ひと月が経った頃。


 私は結局、なんにも上手くいっていなかった。


 

 



「ああああ!! ────もう! 何なのよ!!!」




 人生初めてのヒスが響く。

 数名がびくついて部屋を出ていった。

 けど私はそれすら気にならなくて、最近癖になった貧乏ゆすりを手で抑える。


 何でこんなに荒れているかなんて、そんなのもうあの男しかいなかった。

 都度五度目の敗北を先程経て、私は無様に保健室に足を運んでいる。


「ほら、じっとして」

「さっさと治しなさいよ!」


 ボブカットの女が私にヒールを掛けて、治ったのを見届けて直ぐに立ち上がる。

 魔力は全然回復して無いが、どの道こんなのあってないようなものだった。


 けど間違いない。今回で確信が付いて、アイツの能力はまず未来予知である。

 種が分かれば後はどうとでも出来る。次はどうしてやろうかと出口の扉を勢いよく開けた。


「わぁっ!?」

「…………ッ」


 すると丁度向こうに白い女が居て、驚いて持っていた荷物を落とした様だった。

 しかしそんなものに手を貸すはずもなく、すぐ退けなさそうなので横を通りぬける。


 モブに構っている暇など微塵もない。今私の目にはアイツしか映っていなかった。

 その事実が余計に癪に触って、さっさと乗り越えようと私は足を進める。



「もう、感じ悪いわね……」

「いたた……」

「大丈夫? ノノアちゃん」

「……うん、私は大丈夫だよ!」



「………………」


 人間は常に群れる生き物だ。

 けど私は神の生まれ変わりだから群れは必要ない。

 誰かと居たってそいつは足を引っ張るだけ。

 私は一人で既に完成されている。


 背中に刺さる彼女らの視線に、しかし何故か苛立って足を早めた。

 最近はあの男に付きまとってるせいか、いつの間にか取り巻きも一人もいなかった。





「あぁ……! ムカつく…………ッ!」


 私はもっと褒め称えられるべきである。

 全ての中心に立つのは私であるべきだ。

 何故ならその能力が私にはあるから。

 なのに、あの男を起点に歯車が回っていく。


 魔力がなくても問題は無い。

 力は男より弱くても武術がある。

 なのに……その全部があいつには届かない。

 惜しいと思える戦闘すらまだ出来てなかった。




「────何なのよーーー!!」



 私は再度ヒスが抑えられなくて、近場の窓を開けて思いっきり叫んだ。

 少しもスッキリしなかったし、なんならただ恥ずかしいだけである。


 こんな思いをしてるのも何もかも全部、あのいけ好かない男のせいだった。

 あんなに強い上固有能力まである癖に、この世の不幸みたいな面で練り歩いている男。


「はぁ………………………………馬鹿みたい」


 それでもいつかは勝てる。

 そう思って私は挑んでた。

 けど、段々何をやってるのか、何をしたいのか、自分でも分からなくなってきて……




 ──アイツなら、私と対等で居られるんじゃないかって。



「…………ッ!」


 そんな思考が一瞬頭をよぎって、わたしは背筋を正して頭を振る。

 そんな馬鹿な。私は何を考えているんだ。

 次についたため息はそれはもう長かった。



「はぁ…………………………、…………なに…………?」






 そんな折だった。

 私は窓の外の空を一人で見上げる。

 まるで夜みたいに魔獣が群がっていた。

 私の知らない何かが動き始める。


 私は当たり前に神なんかじゃなくて、ただの人間だったとこの日思い知らされた。

 井の中の蛙大海を知らず。

 私は井戸を造る側だと勘違いしていた。

 


 五月一日の事だった。


 私は何も、出来なかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ