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億回死せるは、偽勇者〜バッドエンドの集束地点〜  作者: つきらゆ
バッドエンドの集束地点
12/83

後始末




「い〜ったいーーーっ!!」


 ここはシェルター内仮説診療所。

 所々擦り傷を追ったネムが、保健委員に治療を受けながらシェルターに響く程の声をあげていた。

 治療に当たっているのは保健委員長のミラ三年生。

 その手つきは流石に素早く、暴れ回るネムに適切な処置を施していく。

 隣の簡易ベッドにはネムより重症だったヨール庶務が、白目を向きながら気絶していた。


「このくらい唾つけとけば治るのよ」

「何時の時代の人〜……」


 ヤブ医者もびっくりな台詞をミラは吐きながら、しかしちゃんとした治療は無事終わった。

 後ろでは他の保健委員達も忙しなく動き、どんどん来る怪我人達に右へ左へ目を回していた。

 明らかに足りない人手と病床、物資も足りなければ終わりも見えない。

 それでも文句も言わず駆け回る医療班に、ネムは生徒会以上のブラックだと笑いながら眺めていた。


「ん……あ、れ……?」

「あっ、リグ起きた?」


 隣に寝ていたリグが起きて、ネムは出来るだけ平静を保って話しかける。

 出来るだけクールな自分を装う為と、少しでもリグを安心させる為だった。

 ネムは一度は死を覚悟した。

 心の中ではもう別れを済ませていて、しかし蓋を開ければ三人とも無事。

 後は魔獣の掃討に向かったミュタ副会長と、姿を消した会長が無事ならネムの中では完璧に近かった。


「ネム……ここは……?」

「シェルターだよ。安全、安心、安眠〜」


 そんな事を笑顔で宣うネムに。

 この騒がしい中で安眠は出来ないだろうと、リグは寝ぼけ目で身体を起こそうとした。

 しかし思ったよりも身体が痛く、思い通りに動かない。

 そして、リグはだんだんと思い出す。

 魔獣の事、死にかけた事、会長が助けてくれた事。

 そして今緊急事態の最中だと思い出して、リグは慌てて飛び起きた。


「あ……っ!? あいたーー!?」

「──コラ! 寝てなさい重症!」


 痛みで思わず泣き叫び、直ぐにミラ委員長が飛んできて頭を押さえつけられ寝かされた。

 うう……と痛みにうずくまるが、しかしそんな場合では無いと自分を鼓舞する。

 リグは何とか寝返りを打って、隣で笑っていたネムに目線を向けた。

 こんな時にもその顔はやけにいつも通りで、リグはその呑気な顔に若干イラついた。


「ネム、会長は? 学園は?」

「あー、んーー。……知んない」

「ええ!?」


 ピューピューと口笛を鳴らしながら斜め上を見るネム。

 本当に何でそんなに呑気なんだとリグは思わず声を荒げさせた。

 しかしリグはだんだん貧血のせいで力が抜けて、そのまま布団に倒れ込む。

 緊急事態だろうが何だろうが、どの道リグにはもう何も出来そうになかった。


「ま、もーじき終わるんじゃない?」

「……そうなの?」

「王女様が色々動いてくれててさー。いやーあの子生徒会に入ってくんないかな〜」


 ネムの言葉に、まぁでも無駄な嘘をつく子でも無いなとリグもそこは信用する。

 じきに終わる。

 それに安心して、リグは祈りながら布団を深くかぶった。

 会長も、副会長も、できる限りの学園の皆が無事でありますように。

 ネムはそんな健気な同級生に、にししと笑って自分も寝転んだ。


「はぁ……今日は徹夜ね……」

「今日だけで済むといいねー」

「あ、今言っとくけど生徒会には支援要請出すから」

「ヨールが起きたら言ったげて」

「あんたホントに……」



「──だ、誰か手伝ってください〜……っ!」


 と、慌ただしいシェルター内に、その入口から声がかかった。

 当然周りは順番待ちだと視線を向けたが、しかしその人物を見て更にザワついた。

 ミラも何事かと視線をやれば、彼女も例に漏れずその人物に驚いた。

 正確には入ってきた少女が担ぐ、傷だらけのその人物にだ。


「──フーコちゃん、その子……!」

「た、たすげてくだざい……重いでず……」


 半泣きになりながら、風紀委員会のフーコが背中に担いでいるのはネメシス風紀委員長だった。

 しかも前には白い髪の女の子も担いでいて、どうも一人で二人をここまで運んできた様だった。


「お疲れ様、預かるわ……ネメシスがこんなに傷を追うなんて……」


 ミラはネメシスを預かって、白い少女を担ぐフーコを奥の病床へと先導した。

 その事に周りから痛い視線を向けられるが、しかしそんな事を言っている場合でも無い。


 普通の生徒は魔力さえ回復すれば回復魔法がかけられるのだ。

 故に延命さえ出来れば問題ないが、しかしネメシスには回復魔法が一切効かない。

 一委員会の長ともなればその位の事は当然知っていた。

 だから彼女の治療は緊急だと判断し、順番を抜かしてでもミラはネメシスを先に見る事にした。

 オマケに、最強の象徴である彼女の傷ついた姿をあまり人目に晒したくなかったと言うのもある。


「ぅっ…………ぐ……」

「ネメちゃんっ!」

「後は任せて。その子もそこに寝かせてあげて」


 空いているベッドにネメシスを寝かせて、すると直ぐに白い布団が赤く滲む。

 しかしそれよりも腹の打撲が特に酷く、目に見えて臓器にまでダメージが至っている様に見えた。


「しょ…………う……」

「大丈夫よ。絶対に助けるから」


 気絶したままうわ言をつぶやくネメシスに、しかし聞こえてなくともミラは話しかける。

 意味が無いことは決して無い。

 これは自身への決意でもあったからだ。

 ミラは衝立でネメシスを囲って、その服をまくり上げ緊急オペの準備を始めた。


「死なせないわ。貴方はこの学──」


「醤油………………」

「……………………」


 治療道具を手に持ったミラの手が面白いくらいにピタリと止まる。

 しかし、彼女は直ぐに動き出す。患者の戯言などいちいち気にしていては人助けなどできるはずも無い。

 夢とは得てして、めちゃくちゃなものだ。

 脳医学は専門では無いが、一人の医者として理解はあった。


「醤油の………………枕…………!」

「…………」

「……い゛ッ…………!?」


 たぬき寝入りを疑って、傷口をつねってみればやっぱり普通に重症だった。

 そもそも傷の割に顔色が普通過ぎた。

 その安らかな寝顔はとてもじゃないが怪我人には見えなくて、何故かミラは無性に腹が立った。

 それを隣でハラハラと様子を見ていたフーコが、ミラの奇行に思わず声を上げる。


「な、何してるんですか!?」

「気にしないで。と言うか貴方は出て」

「あっ、はい……すいません……」


 フーコは申し訳なさそうな顔をしながら、しかし何処か納得いかない顔で衝立を出る。

 とは言えこれで託された任務は達成したのだ。

 フーコは堰を切ったように安堵を感じて、衝立の前に座り込んだ。


「はぁあああぁぁぁ…………つかれた……」


「おーい、フーちゃん〜」

「あ……ネムちゃん?」


 すると、少し離れた所からクラスメイトの呼ぶ声が聞こえた。

 フーコはよろよろと立ち上がり、もう一度踏ん張って自分を呼んだ友達の所へ向かう。


「おひさ〜」

「よ、良かった……皆無事だったんだね……!」


 傷だらけで三人並ぶ生徒会メンバーを見て、それでも無事だった事にフーコは自分事の様に喜んだ。

 ネムの隣ではリグも薄く笑っていて、フーコは日常に帰ってきたような安心感を覚えた。


「うぅ…………!!」

「あーりり、泣いちった。どしたん、話聞こかー?」

「ネムぢゃん、わだじごわかったーーっ!!」


 そして、今まで溜めていたものが全て溢れ出た。

 おーよしよしと仲睦まじく抱き合って、お互いの無事を祝い会う。

 フーコは本当に終わったんだと実感して、同い年の胸で盛大に泣いた。

 そうしてしばらく泣いた後に、もうひとつの大事な用事を思い出した。


「──あっ! ネムぢゃん!!」

「どしたい」

「あのね、この襲撃の犯人を皆で倒したの! だからもう大丈夫だよ!」


 ぱっと笑顔を咲かせながら爆弾を落としたフーコに、ネムは思わず吹き出した。

 その言葉を聞いていたリグや、そして周りにいた生徒達も同時に言葉を失った。


 そもそも犯人がいた事事態が初耳だったし、そしてとんでもないくらいの朗報だった。

 思わずネムはフーコの頬をペチンと叩いて、そのままもにもにと揉みしだいた。


「それ先言いなよ」

「ぶええ!? ご、ごめんね……!?」


 珍しく真顔のネムに、フーコはびびって涙を流した。

 とはいえ、それは本当に朗報だった。

 ネムは今自分がやるべき事を思いついて、痛みを無視して立ち上がった。


「失礼〜」

「……ごフッ!?」


 そして、寝ていたヨールの上に飛び乗った。

 少しでも高さを出して注目を集める為だ。

 そしてネムはシェルターを見渡した。

 どいつもこいつも死にそうな顔して、希望なんてないみたいな顔を浮かべている。

 そんな顔してちゃ人生つまんないよと、けど今までは言っても仕方なかった。

 でももう大丈夫。

 ネムはちっちゃい背を精一杯伸ばして、その手を高く空へと上げた。



「皆ーー!! もう全部、解決したってさーー!!」



 多少の脚色は、人生のスパイス。

 ネムは演技でも何でもなく、満面の笑みを浮かべていた。


















───────────────────────

────────────────────






 瓦礫を持ち上げて、倒れてる人を起こして、死んでしまった人を一箇所に集める。

 偶に逃げ延びた魔獣が出てきて、有無を言わさず即殺する。

 そんな作業を初めて早二時間。

 疲れは感じるが、それでも手を止めようとは思わなかった。


 爆弾で赤く染まった空は、今度は夕日で赤く染め上げられていた。


「……立てるか?」

「た、助かった! ありがとう……ッ!」


 瓦礫から助けた生徒が俺の手を取って、泣きながら感謝を伝えてくれる。

 軽く肩を叩いて安心させて、歩ける事を確認したあと医療拠点のあるシェルターまでの道を伝えた。

 その後ろ姿を見送って、一息つきながら辺りを見回す。

 どこもかしこも倒壊した瓦礫だらけで、隅まで探そうとすると本当にキリがなかった。


『こちら生徒会長、ネイル・アクスター。ただいま魔獣の掃討を確認した。繰り返す、ただいま魔獣の──』


「お、早いな……!」


 あの後別れた会長の声が聞こえて、そしてその朗報に思わず口角が上がる。

 ベリアルを倒して、空の魔獣も倒して、そして今地上の魔獣も討伐を終えた。

 つまりこれ以上の被害の拡大は防げたと言って良いだろう。

 大きな山を乗り越えて、俺は確かな勝利と安堵を実感した。


「──お疲れ。少し休憩しないか?」

「あ、パスカル。そっちもお疲れ」


 近くで救助に当たっていたパスカルに声をかけられ、投げ渡された水を危なげなく受け取る。

 そして瓦礫の上に二人で腰掛けて、パスカルと並んで夕日を眺めた。

 冷たい水が喉にしみて、下手な酒より今は効いた。

 そして、水のせいで動いた胃にそういえば昼食も殆ど途中だったと思い出す。

 この調子では食堂もやってないだろうし、今日は非常食が配られるのを待つしか無かった。


「にしてもよく間に合ったな」

「まぁね。襲撃が来てから直ぐに取り掛かったんだ」

「流石だな……ホントに助かった」


 会話に主語が抜けているようだが、今二人とも爆弾の話をしている。

 俺とパスカルは結構息があって、平時なら割と会話がなくても互いの意思は伝わるくらいだ。

 とはいえ、それは俺が知るパスカルとの話だが。

 今ここにいるパスカルは何時の彼女だろう。

 隣に座る彼女との距離はそれなりに近く、そこそこの信用は感じ取れた。


「にしても、これは一体何が起きているんだ? 過去に戻ったかと思えば、しかし私の記憶と随分違う」

「……この世界はさ、何度もループしてるんだ」


 この世界に来て、二回目の説明。

 一人目はライラ。滅茶苦茶な話の自覚はあるが、それでも彼女は信じてくれた。

 でも、理系の道を行くパスカルには少し信じ難い話かもしれない。

 しかし彼女は彼女で意外とロマンチストという側面も持っている。

 いや、ノリで爆弾を作るくらいだし、別に意外では無いのかもしれない。


「ループ……」

「そ。……俺が死ぬ度に、入学式までやり直してる」

「……成程。じゃあこれは、その内の一つの記憶と言う訳か」

「そうそう」


 パスカルは水のボトルを揺らしながら、いつも通りの理解の速さを披露してくれた。

 一瞬死と言う言葉に険しい表情を浮かべたが、しかし彼女は結局何も言わなかった。

 彼女は気遣いの達人。こればっかりは異論は認めない。

 俺は残った水を一息であおって、腰掛けていた瓦礫から身を離した。

 

「よし、もうひと踏ん張りして来る」

「……もうかい?」

「魔獣はもう居なくても、助けを求める人はまだ居るだろうし」


 そう言って笑えば、いつもの様にパスカルも笑ってくれる。

 と思いきや、パスカルの顔は少しばかり険しいままだった。

 そしてパスカルも瓦礫から腰を浮かして、そのまま俺の元へと近づいてくる。

 止まらない足にどこまで近づくのかと緊張を走らせると、結局彼女は俺の頬に手を触れた。


「…………」

「……パスカル?」


 問いかけても、彼女は何も言わない。

 珍しいあまり見ない行動に、流石にどうすればいいのか戸惑った。

 彼女はしばらく俺の肌に触れて、そして満足いったのかその手を離す。

 記憶を持つ故の俺の知らない行動。無意識に俺は身体を強ばらせた。

 そして。


 彼女の目の端には少しばかりの涙が見て取れて、俺はそうか、と内心思った。


「私はさ」

「……うん」

「結構何と言うか、後腐れのない性格をしていると思う」

「まぁ……そうかな」


 照れとも取れる、どこか懺悔とも取れるような話し方をするパスカル。

 いまいち要領を得なかったが、それでも今はただ次の言葉を待った。

 何処か歯切れが悪い時点でパスカルらしくないとは思う。

 けど、だからこそ彼女はとても、大事な事を話そうとしていると思った。


「だから、この世界で目覚めた時も、別段前の世界に未練は無かったんだ」


 そう言って俯く彼女の肩は、目で見てわかる程に震えていた。

 これ程までに弱ったパスカルは、俺も初めて見たかもしれない。

 パスカルの記憶が何時のものかは、聞いてみないことには分からない。

 けれど、彼女の様子を見れば凡そのあたりは付けられた。


 彼女と二人で、ルフレ魔術学園を辞めて隣国に逃げた亡命の記憶。

 彼女と最も密接に関わったのはあの時だったから。

 だから多分、彼女はその世界から来たんだと思った。


「なのに……君を見ていると、あの日の続きを願ってしまう」


 そう言って、彼女は俺の手を取ってそのまま両手で包み込んだ。

 どこか憂う様な表情に、そんな顔も出来たのかと思わず俺はドキリとしてしまう。

 夕日を背に、手を繋ぎ合う一度は心の繋がった男女が二人。

 これ以上無いくらいにロマンチックな光景に思えた。

 夕日に染まった彼女の泣き顔。

 誰だって、出来ることならその涙を止めて欲しいと願ってしまう。


「ユーロ。……また私と、一緒に居てくれないか?」

「…………」


 彼女の記憶。

 俺の目的。


 彼女は、多分一言言えば引き下がると思った。

 だからこそ、俺はそれを伝えるのに余計に勇気が必要だった。

 けれど、必要以上に期待をさせて、弄ぶような事は最も嫌だから。


「パスカル、俺は────いっ゛!?」


 それなりの決意を持って、彼女の気持ちに答えようとした。

 なのに、それを遮るように俺の側頭部に何かが飛んできた。

 完全に油断していた故モロに直撃し、俺は痛みにその場に蹲った。


「〜〜〜ッ!!」

「ゆ、ユーロ!?」


「──やっぱりね」


 悶絶しながら半泣きで、飛んできた方向に視線を向ければそこには無表情のライラが立っていた。

 彼女は何かを振りかぶった体勢をしていて、そして俺の足元には砕けた拳大の石が落ちている。


「ライラ! 一歩間違えたら死ぬからな!?」

「…………」


 しかし何も言わない彼女に、本気度を感じて俺は震え上がった。


「……来なさい、二人とも」


 あの後の続きが今から始まるのか。

 そう身構えた俺に、しかし彼女は詰め寄ること無く後ろに振り返ってそう言った。

 終始無表情の彼女は怖かったが、パスカルも呼ぶという事はどうやら私情では無い様だった。

 俺はパスカルに肩を貸してもらって立ち上がり、そしてそれを見るライラの表情は僅かに揺れていた。


「…………」

「…………」

「…………」


 そのままライラに先導されて、倒壊した校舎の中を俺たちは無言で歩いた。

 ライラもパスカルも何処か探る様な空気を見せて、俺は空気の重さにただ黙秘を貫いた。


 そして、


「ここよ」


 たどり着いたのは第一校舎一階の会議室。

 第一校舎には生徒会やその他委員会、教員室や会議室等、後はシェルターへの入口もここにある。


 余談だが校舎は全部で十七ある。

 第一校舎が一番古く、先程言ったように委員会等の施設が配備されている。

 その他の校舎は、その殆どが授業を行う教室など。

 国の施策で今出産数を上げている為、年々生徒と校舎は増える一方だった。



「連れてきたわよ」

「ご苦労」


 そして、俺とパスカルは先導されるまま中に入った。

 状況はだいぶ変わってはいるが、俺は今から行われることに大体の推察は付いている。


 そもそも、会長が言っていたのだ。聞きたい事は山程あると。

 魔獣を倒して、救助にも目処がついたなら次はこうなるはずだった。


 中を見渡す。

 そこに居たのは、予想通りに見知った顔ぶればかりだった。


 生徒会

 風紀委員会

 各委員会の委員長達

 教員の代表


 殆ど全員が軽くない怪我を負っていて、しかし一人も欠けることなくこの会議に集まっていた。


「ユーロ・リフレイン。約束通り、全てを話してもらう」


 会長の言葉に、最後の正念場だと気を引き締める。

 はっきり言ってしまえば、これは尋問ですらあった。

 俺が派手にやらかした時は、よくこうやって呼び出され時には処刑までされた。

 その事実を思い出し、冷や汗は走るもののそれでも今回は風向きが違う。


 会長、パスカル、ライラ、ネメシス。ここにいる四人は記憶があるのだ。

 なら大丈夫、とはまだ言えないが。

 それでも俺は一つの目標を立てた。


 入学初日の今日この場で、ここにいる全員を仲間に引入れる。


 それはまだ一度も成した事の無い、もし出来れば最速で最高の勇者ムーブだ。

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