豊作
苗を植えるらしく、今日はその手伝いに呼ばれた。
種はさまざまな形をしていて、見ていて飽きない。
「おやっさーん。これはどこに植えればいいんだー?」
星形の種を掲げて、おやっさんに手を振る。
「あーそれはね! そこの右の、奥! そう! そのまま数歩前に歩いて……あー行き過ぎ行き過ぎ、二歩下がって、そこ! そこに埋めておくれ!」
「俺すごい動くんだけど!」
「なーに言ってんだー、兄ちゃんは動いてねーよー」
なかなか厳密に決まっっているらしい。
次はこれか。
「おやっさーん。この種はー!」
銃型の種を掲げる。
「あー、それはそのまま三歩先、そして右に五歩行って、三歩下がったら、左に五歩だ」
「おやっさーん、そこよりこっちに植えた方がいいんじゃねーか?」
「だめだよ、だめ! そうしないと兄ちゃんのお昼ご飯抜きだかんなー」
「げ、それはやだよ〜。わかった、これでいい〜⁈」
「あー、まぁそれでいいよー」
あ、おやっさん今お昼ご飯つまみ食いしたな?
約束なのにひでーや。
まあいいや。んで、次の種はっと。
「おやっさーん。なんか紙みたいなんだけどこれは〜?」
人の顔がうっすら浮かび上がった種を掲げる。
「あーそれは三歩下がりなー! そこでいいよ〜。あ、でもあんまり見ないようにしな〜。帰ったら柔軟剤で服を洗うんだよ〜」
「確かに、なんか変だ。目瞑っとくわ〜!」
人生が固まりそうだ。
さっさと埋めちまおう。
「おやっさーん。植え終えたよ〜」
「おーお疲れさん! んじゃまた来週もよろしくな〜」
「はいよ〜」
来週もまた種が増えるって言うんだから大変だよな。
収穫できればいいんだけれど。