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感情のソーサラー  作者: よるのとびうお
第一章 魔法の発現
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二人の戦い



 目の前に(そびえ)えるは船を越すほどの大蛇。宙に浮かぶは黒い翼の魔物。未だかつてない強敵を目の前にサンティオーネの最高戦力がぶつかる……!!


 エルビスは駆けつけるや否や直ぐに光を集め矢を(かたど)らせるとシーサーペントとは逆方向にそれを放った!


「希望の魔法……一縷の望(グリマ・ランツァ)!!」


 象られた何本もの光が空間を縫う様に進み護衛団の間をすり抜けていくと、逃げ惑うアクアリザード達を次々に仕留めていく!!


「エルビス様! お前ら、この救援を無駄にするな! 全速力で退避してシュレイロード様にご報告を!!」


 先程まで退路とアクアリザードの進行が重なり、港から距離を取るのに手こずっていた団員達が中央まで引いて行く。そんな彼らを包むフィリアの魔法も次第に光が薄くなっていくと……付与が消えた。そして──


愛の祈り(ディア・ケルシオン)!」


 全員の退避が完了した。目を閉じて自分の心を落ち着かせる。分散されていた感情がフィリアの元に集まってくると今、一つになる。彼女の体が眩いほどの光を放つと体に残る多くの傷や出血がみるみるうちに治っていく。


「皆んな一緒に戦ってくれてありがとう……後は任せて。大好きなこの街をこれ以上壊すなんて──」


 彼女は祈りの姿勢を解き目を開くと戦闘体制に戻る!


「──私が許さない!!」


「ようやく僕を見てくれた様で嬉しいよ!!」


 エンシーレは体制を整えたばかりのフィリアに向かって空を蹴り出し急接近を仕掛ける。彼女に狙いを定め体を回転させながら突き進むとその勢いのまま黒い翼を叩き付ける! 地面は飛び散り砂煙が舞い上が──煙の中からフィリアが飛び出す。彼の翼を横に転がり紙一重で(かわ)すと煙が晴れる間もなく再び接近する。力一杯跳躍し振りかぶった拳には先程より大きな光が集まる……!!


「はぁぁぁぁぁああ!! 愛の鉄槌(ディア・クラッシュ)!!!」


 姿が見えないが構わない。煙の中央を狙ってそれごと叩きつける! 煙の中に潜んでいたエンシーレは煙の流れが変わるのを感じ取るとすぐさま空へ飛び立ち間一髪で攻撃を躱した! 直後、爆音と共に煙と地面が弾け飛ぶ。その威力は空間を伝わり飛び立ったエンシーレにも感じ取れる程だ。


「ははは素晴らしい! なんて美しい魔法なんだ……!!」


 彼は空中で体を(ひるがえ)しフィリアから距離を取る。が、彼女の追撃は止まらない。


愛の衝撃(ディア・ソニック)!!」


 しなやかな脱力からの正拳で空間を弾く。弾かれた空間はフィリアの魔法と混ざり空気を切り裂きながら飛んでいく……!!


「うおっ、く、おっと!」


 エンシーレは旋回しながらそれらを躱すが、猛スピードで迫る魔法に当たれば無事では済まない……彼の涼しい表情にも焦りが生まれる。まだここで終わる訳には──





 ──向こうで体勢を立て直したフィリアが魔族と衝突している。その後ろに佇むシーサーペントはそんな二人を構う事なく街に上がろうと体を進めるその時、強力な光の矢が大蛇の横腹を抉る!! 大蛇からは苦痛な叫びが漏れ、その衝撃は空気を轟かせる……!!


「お前の相手は俺だ……!!」


 エルビスの存在を認識した大蛇は歪む表情を改めガチガチと歯を鳴らすと瞬時に距離を縮めて来る!


「ギャウッッ!! ギシャーー!!!」


 簡単に丸呑みされる程の大きい口、迫り来る牙、エルビスは体を投げ出して何とか攻撃を避けるが無理な体勢で避けたせいで弓が手から転がり落ちていく。弓を拾いに……いや、そんな余裕はない! 転がるすぐ側に牙が落ちると凄まじい音を立てて礫が飛び散る。シーサーペントは地面を噛み砕いた口の中に獲物がいない事が分かると一撃、また一撃と続けて地面を噛み砕いていく。


 それを転がり続け紙一重で避けるエルビス……だが、弓との距離が離されていく……!!


「く、くそ、これじゃあ……」


 何とか弓の方向へと意識を向けるが、狂った大蛇はそれを許さずに空間を噛み砕き続ける。一度でも避けそびれたらフィリアの回復でも間に合わないだろう。このままではいつかは捕まってしまう……


「しょうがない……」


 エルビスは弓を諦めると今度は自分を仕留めようとする牙に全集中力を向ける。少しでも巻き込まれれば致命傷。振り掛かる牙に触れるぎりぎりの距離を狙い……躱す!! 直後、すぐ目の前の地面を大蛇の牙が砕く! すかさず彼はその頭に片手を(かざ)し強く輝く光を直接打ち込む……!!


「希望の魔法! 希う光明(オプターレ・ランツァ)!!!」


 一瞬、閃光が周りの影を奪う。刹那の静寂が過ぎ凄まじい衝撃音が轟くと大蛇の頭が胴体をその場に残して吹き飛び、それを追う様に吹き荒れる突風が辺りに衝撃の勢いを伝えていく! 海面は荒れたち土塊は飛び散り突風は空間の全てを飲み込んだ……!!


「ふぅ……弓でイメージをしないと繊細さに欠けるな」


 吹き飛ばされるシーサーペントを見ながら彼はそう呟くと弓を拾いに歩き出した──





 ──空を飛び回りぎりぎりのところで魔法を躱しているエンシーレ。空気を切り裂きながらフィリアの魔法が過ぎて行く!


「くそ、まだここで終わる訳には……うお!?」


 向こうで凄まじい光量が放たれたと思うと突風を引き連れて大蛇の頭が側を過ぎる!! 空を駆ける彼の翼もその突風に巻き込まれと僅かだが制御が乱れ体勢を保てな──


愛の衝撃(ディア・ソニック)!!」


「ぐああああああ……ぼ、僕の翼が!!!!」


 一瞬だけ綻んだ隙をフィリアの魔法が切り裂く! 片翼が千切れたエンシーレは激しく回転しながら落ちて行くとその勢いのまま水面に叩きつけられた……!! それに遅れて大蛇の胴体がゆっくりと傾いていき海面を叩いて沈んでゆく。飛び散る二つの水飛沫に港に転がる大蛇の頭。


「はぁはぁ……さぁ、今日は盛大な宴を開かなくっちゃ」


 激しい戦いを終えたフィリアは息を切らしながら笑った。エルビスも弓を拾い上げ歩いてくる。港には倒れたアクアリザードやシーサーペントとの激闘の跡が残り復興には時間がかかるだろう。しかし、奇跡的に犠牲者を出さずに切り抜ける事ができた。


「エルビス、お疲れ様! そっちは大丈夫だった?」


「ああ、何ともない。それより何故七つの波紋(ゼノゲミュート)が……」



 ──その時、ドーン!!! という大きな衝撃音が街中から響き渡り礼拝堂の一部が崩れる光景が目に飛び込んでくる。そう、今回の戦いは犠牲者を出さずに切り抜ける事ができたのだ。今、この時迄は。




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