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姉 1

「君の心は美しいね。君の妹とは違う」


 出会って間もない彼が言ってくれたその言葉が、どれだけ嬉しかっただろう。

 彼は私を唯一理解してくれた。


 


 妹は醜かった。

 見た目ではない。外見ならばこの国のどの娘よりも美しいだろう。けれど心はそうではない。

 

 妹は私のものを奪うことばかりだった。

 幼い頃からそうだった。

 両親はどういうわけか妹ばかり可愛がった。まず、愛情から妹に奪われた。私は妹に嫉妬した。なぜ、私は愛されずに妹ばかり愛されるのかと。

 とくに、母からの差別は酷かった。母は私の存在をいないものとして扱い、視界にいも入れてくれない。

 私はそれが悲しく、辛く、惨めで、妹が憎かった。


 時々、本当に時々両親が優しくしてくれる時があった。たとえば誕生日、私はケーキを作ってもらった。とても美味しそうだった。

 本当の誕生日の一日前だということを両親は気づいていなかった。おめでとうの言葉はなかった。それでも嬉しかった。

 

 けれど、そういう時に限って妹は私のケーキを奪った。妹がケーキを奪ったことを両親はとても怒ってくれたけれど、やはり妹のほうが大事なのだろう。

 翌日に妹が体調を崩した時は、両親とも妹につきっきりだった。

 妹を見舞いに行かないことを叱られて様子を見に行くと、ケロッとしていた。私は姉の誕生日に仮病をつかう妹が憎くて仕方なかった。

 

「お姉さまごめんなさい。せっかくの誕生日に」


 妹はそう言った。

 一番嫌いな妹だけが誕生日を間違えてなかったことも頭にきた。

 だけど、もし、万が一仮病ではなかったら?

 そう思うと冷たくは出来ず、結局「いいのよ」といって彼女を許した。



 似たようなことは、何度もあった。


 妹は度々病弱なふりをして両親に構われたがった。そうすればするほど両親は私を放置した。

 


 両親だけではない。私は婚約者も奪われた。

 私は公爵家の長女だ。

 それだけを理由に私は王子殿下の婚約者に選ばれた。

 正直嬉しかった。

 私を選んでくれたと感激した。


 私は私を選んでくれた殿下に、全てを捧げると約束した。


 けれど、数日後、婚約者を妹に変更したいと言われた。

 愕然とした。

 どうやら妹は王子殿下と密かに会い、親しくなったらしかった。

 私の目を盗んで行われたそれが、私はゆるせなかった。

 妹を問い詰めた。

 彼女は何も言い訳をせず、ただ笑うのだ。

 私を嘲笑う。

 ひどい妹だ。

 醜い妹だ。


 王子殿下に捨てられたことは社交界でも噂になった。

 殿下にとってもよくないことだったが、私にとってはさらに悪かった。

 私は結婚する機会を失い、社交界では取り残された。

 妹が王子殿下の元へ嫁ぎ、公爵家からいなくなると両親は本当に私をいないものとしてあつかった。

 私は体調を崩すことが多くなり、それもあってさらに社交界では浮いていった。



 そんな時、彼にあったのだ。





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