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絶望エスケイプ  作者: 藤村 光莉
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3章 異世界での第一歩

 辛いなー。本当に辛い。


 画面に食い入るような態勢で、プルプル震えている俺を見て、ルルは笑いを堪えている。


 「ぶ、ぶはははは!」


 しかし、堪え切れず、腹を抱えて笑った。


 「な、何だよ!ルル達もこんな能力になるかもしんねーぞ?計ってみなよ!」

 「なーにムキになってんの?そこまで言うならやるよ。さ、やろ?レイリ、アリーシャ」

 「う、うん」


 レイリがどこか悲しげな表情で俺を見てきた。やめろー!そんな見られ方はされたくない!!


 「じゃ、じゃあ私がするね」


 初めはレイリがするみたいだ。まだ、どこか申し訳なさそうな顔をしている。いやいや、レイリのせいじゃないから気にしなくていいのに....。


 キュイーン。


 レイリの力を計ってみると....。


 頑強 二八、体力 四七、俊敏 四一、攻撃 六一、知能 二〇、運 二五


 「私....。攻撃が高いのね。意外だわー....」

 「レイリさんの能力は悪くないですよ!冒険者になっても全然問題ないですよ!」

 「ぼ、冒険者ですか....」

 「次はどなたがします?」


 俺の能力を見てから、俺らが計測するサポートとして受付の人が努力してくれている。


 「ルル、先にいい?」

 「いいよ!」


 ここで、アリーシャが珍しく積極的になった。さすがのアリーシャも自分の能力が気になっているみたいだ。


 さて、アリーシャは....。


 頑強 五二、体力 五五、俊敏 三八、攻撃 二五、知能 三一、運 二七


 「....」


 自分はどこか良い所があるのだろうかと言いたさそうな、不安な表情で受付の人に説明を求めるように視線を合わせた。


 「あー....アリーシャさんは、どちらかと言うと守りに徹して戦える素質がありますよ!」

 「そ、そう?よかった....」


 不安の表情が一変し、安堵したものに変わった。

 ん?でも良く見ると、運は除くとして、どこか俺と似ている気がする。まあ、そこまで気にする程ではないか。


 さて....。


 残すはルルだけだ。


 「最後はあたしね!」


 急かすようにピョンピョン跳ねながら計測台の前にいる。もはや、鳥のイメージはどこにもなくなってしまった。


 「えい!」


 待ちきれなかったみたいで素早く行うと....。


 キュイーン。


 頑強 四〇、体力 二八、俊敏 六二、攻撃 四三、知能 十九、運 十八


 「これは....」


 ルルの反応を待つ前に受付の人が身を乗り出して言った。


 「知能と運が低いとは言ってもそれ以外でのバランスが良い!何よりも、俊敏の値が高いですね!」

 「えへへへ....」


 かなり褒められたのでルルは素直に照れた。


 「なんでだよ....」


 俺の本音を心の中で呟くつもりが、声として漏らしてしまったみたいだ。


 「ショウさんと言いました?あなたの能力も悪い訳じゃないですよ。そりゃあ極端なものもありますけど....。ゼルさんも言った通り、能力は上げることができます。やり方は人様々です。なのでコツコツ上げていければ良いと思いますよ!」


 これ以上ないくらいの励ましを受付の人はしてきた。ありがたい。ありがたいけどよ....。


 「運なんて....どうやって上げればいいんだよー」


 俺の呟きに受付の人は返す言葉が無かったみたいで、沈黙した空気が訪れた。



 「で、でも!皆さんの能力はそれぞれ良い所があるので、冒険者としてパーティーを組むのも悪くないですよ!」

 「そ、そうなのか?」


 一つの新しい可能性を受付の人が見出だし、俺は、つい反応してしまった。

 でも、本当にできるのか、わからない。少し心配でゼル兄の方を見てみると、こちらも心配そうな顔をしていた。


 「冒険者か....」

 「しかし、なりたいと言ってすぐなれるものじゃないですよ?能力だけで判断するのも良くないので腕試しをしていただく事になります」


 なるほどね。実際の力を見る事で本当にその素質があるかを確認するためか。


 「そういや、一つ聞きたい事があるのだが良いか?」

 「どうぞどうぞ!」


 受付の人に質問しようとすると仕事が増えたのか、元気に答えた。


 「冒険者は、具体的に何をするんだ?」

 「んー....目的はその人それぞれですけど、基本的には、受付所からの依頼を受けて、依頼主の目標を達成する所ですかね」


 へー。聞いてて面白そうだ。俺としては、こういう選択も悪くないのだが....。


 「皆はどう思う?」

 三人に聞いてみる事にしてみた。


 「どうって何が?」

 「冒険者としての素質があるか、腕試しを受けるかってことよ」

 「んー....。アリーシャとルルはどう思う?」

 

 すると、アリーシャは。

 「私は、試してみたいかな」

 「私も、この力が生かせる所を自分で見てみたいな!」


 続いて、ルルも挑戦したいという心意気を見せた。


 「まあ、私も気になってはいたし、やってみようかな」


 そういう事で、俺と三人全員の意見が揃った。


 「ゼル兄、そういう訳でやってみてもいいか?」


 念の為に、ゼル兄に聞いてみる事にした。


 「い、良いと思うぞ。挑戦してみるというのは....」


 やっぱり自分の妹を連れていくというのは抵抗があるのだろう。だが、妹たちの意見と言われてしまっては否定できないみたいで頷く程度の返事になった。


 さて....。


 「じゃあ、その腕試しというのは何なんだ?」

 「はい!それは、この近くにナビク鉱山というのがあるんですが、そこの十層まで行って、アスル鉱石と呼ばれた青色の鉱石を採ってきて欲しいのです」

 「え?それだけでいいのか?」

 「それだけって....。言っておきますけど、私達が採れるのならとっくの昔に採ってますからね!」

 「そ、そうですね....」


 身を乗り出すような勢いで責められ、肯定するしかなかった。


 「その鉱山には、モンスターが棲みついているんです。それらを凌いで採ってきて欲しい鉱石を持って帰ってきて下さいと言っているんです」

 「ただ、当然、武器や防具は持っていないはずなので、そのところは、私達の方から支給させて貰います。あと、こちらを!」


 そう言って渡されたのは、見た目が辞書のような本である。


 「これは?」

 「それは、大体の技がどう発動できるかが載っている本です。それを使って、技を習得、発動していって下さい。それと武器と防具をうまく活用してナビク鉱山の十層まで行って下さい。ただ....」

 「ただ?」

 「十層というだけあってそれより下の階層もあるんです。あるのですが、そこは立入禁止なので、そのあたりは気を付けて下さい」

 「は、はあ....」

 「では、心意気も踏まえて準備をお願いできますか?」


 受付の人から聞かれたので。


 「三人とも行けるか?」

 そう聞くと....。


 「う、うん。頑張ってみる!」

 レイリが三人の返事をまとめて返した。


 そして、鉱山に行く心構えをして、ギルドから支給されるという武器と防具を確認してみた。武器は見る限り、大きく三つに分かれているみたいだ。剣とは言っても刀とか刃先の長いものではなく、どちらかと言うとナイフとかそう言ったものに近い。先程、貰った本には技を活用する事で、本来の武器の強度を上げたり、それこそ、刃先を長くするのも可能みたいだ。もう一つの武器は、これは、ハンマーだろうか。斬るのではなく、殴るのに特化したものだ。そして、あと一つは、弓である。これは言うまでもなく、遠距離での支援を基本とした武器である。俺は、どうしようか....。


 剣にしたい気持ちもあったが、攻撃が高くない事はわかっているので、弓にした。


 防具は、騎士が着けるような全身を覆うものではなく、小さい盾と、心臓部を守ってくれる鎧だけであった。これも、技を使うことで、強靭なものに出来るらしい。


 しばらくすると、三人共の準備が出来たらしい。それぞれが武器と防具を着けてやってきた。レイリは武器として、ナイフ、アリーシャは弓、ルルはハンマーにしたみたいだ。それぞれが特徴があって良いと思う。皆の準備が出来たみたいなので、ナビク鉱山へと受付の人に案内してもらいながら向かう事にした。



 鉱山へと向かう途中、住んでいる町の者達からの視線が俺らに集中しているのがわかった。


 「ここでの冒険者は少ないのか?」

 「はい。とても少ないです。ここの所はあなた達のように挑戦する人もいなかったので、町も少し驚いているみたいですね」


 どうりでか....。期待とかそのような視線でもないような気もしていた。この町は確かに静かだし、見る限り人も多くはない。人とは言っても、レイリの話によると、この町を含むべスティルという国は、獣族と呼ばれているらしい。


 やがて、鉱山の入り口に辿り着いた。鉱山は見る限り、なだらかというより、ゴツゴツしているようでどこか雰囲気を感じる。


 それと、先程の皆からの視線もあったからか、入り口を前にして、俺は少し、緊張してしまった。

 それを感じたのか、レイリが声をかけてきた。


 「やめてよね、ショウ!ショウまで落ち着かなくなったらどうにもできないから」

 「俺って、いつからそんな貴重な存在になったんだ?」

 「それはわかんないけど、まとめてくれそうな感じがしたし....」


 何だろう。レイリは鋭いな。現実で、俺は、部長もやっていたからレイリの感じた事はある意味、間違っていない。だから、俺は、少し驚いてしまった。


 「おう....。それは、ありがとう。やれる限り、頑張るよ」

 「うん!そうしてくれると助かる!」 


 レイリの言葉で少し落ち着いた。そろそろ、行くとするか....。


 「よし、行こうか!」

 「うん!」

 「わ、わかった!」

 「頑張るよー!」


 俺の一言に合わせるように、レイリ、アリーシャ、ルルが返してきた。


 「くれぐれも、十層までですからねー!」


 受付の人が心配してか、念の為に大声で言ってくれた。


 「わかってるよ!すーぐ、戻ってくるから!」


 そう言って俺らは入っていった。



 「本当に大丈夫かよ....」


 その様子を見て、ゼル兄は小さく呟いた。

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