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絶望エスケイプ  作者: 藤村 光莉
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序章 決戦前日

 いよいよ明日だ。


 俺はこの時の為に、この一年を無駄にしてまで努力してきた。その努力が試される時がいよいよだ。


 高校から家までの帰り道を俺、大矢野勝生は歩きながら自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。そして、今まで起きた事を振り返っていた。


 俺は小学生の頃から卓球一筋でやってきて、中学にはそこそこの強豪校に入り、それなりの結果を出してきた。そして、高校では強豪と言われる海翔高校に入り、今では主将にもなった。


 しかし、良い事ばかりの連続ではなかった。

 むしろ、災難続きだったと思っている。


 この事については中学の頃からではあったが、対戦相手の組み合わせが不運ばかりで格上とばかりと当たってしまう。

 まあ、結果としてそれらの試合を実力で乗り越えてきたからこそ、今の強さがあると思ってはいるのだが....。


 高一の最後に行われた試合。

 ここで、俺は、球を返す事に必死になり、体に負担を掛けてしまった結果、右足の人体断裂という形になってしまった。


 その症状を聞かされた時、目の前が真っ暗になった。

 「俺はこの先、どうすればいいのだろうか?憧れであった卓球選手の夢を捨てて、別の道を探さないといけないのだろうか?」


 しかし、先輩や後輩、そして、恩師の熱い激励のおかげもあって、高校二年生をリハビリと基本練習に費やす努力をした。


 そして、今に至り、高校生最後の大会を目前に興奮しながらも、若干の緊張を持っている。


 こう振り返ってみると、俺は本当に周りの人達に支えられてばかりだと実感する。


 「大会が終わったらお礼代わりとして何かしないとな」


 不意に呟いた俺は、思い出したかのように、近所にある神社を目指し、急な下り坂を駆け抜けた。


 近所にある神社は、規模としては小さいが、多くの杉の木が茂っており、どこか神秘的な場所にも思わせる。


 俺は、大会の前に、少しでも神様を味方に付ければと思い、自分の財布から五百円玉を賽銭入れに投じて、祈った。


 「一回くらいは運が俺に付いてくれてもいいのによ」


 ため息まじりにふと、呟いた。

 そんな事を言っていると、ほんの少しではあるが、雨が降り始めていることに気が付いた。これくらい走ればどうにでもなると思い、走り始めようとしたその時。俺の左ポケットから振動音が伝わってきた。慌てて携帯を取り、電話に出ようとすると、母からだった。


 「勝生。今、かえってきているところ?」

 「うん。そうだけど?」

 「なら、良かった....。今夜のおかずに使おうと思ってた卵が冷蔵庫に無くて....」

 またか。

 「はあ。わかったよ。帰り際に買っていくよ」

 「さすが、勝生!まだ頼んでもいないのに自分から率先して....」

 いやいや、言っているようなもんだって。

 「一個買ってくればいいんだよね?」

 「うん。よろしくね!」

 「はいよ」


 そう言って携帯を閉じると、ため息を一つ吐いて、近くのコンビニへと向かった。


 慌てて買い物を済ませて、外に出ると、雨足が強くなっていた。


 「これは走れないよ。びしょ濡れになる」


 そう思い、俺は、建ち並んでいる店の屋根を利用して、少しでも濡れないようにした。

 今、歩いている通り沿いは車も少なく、水しぶきを受けることもないだろう。


 やがて、遠くの方で雷も鳴り始めた。

 覚悟を決めた俺は、また、家に向かって一目散に走り出した。


 家まで、あと少しかというところで後ろからトラックが通ってきた。そして、まともに水しぶきを受け、びしょ濡れになった。


 「なんで、こんなに嫌な事ばかりなんだ」

 そう思い、部活で使ったタオルを取り出し、可能な限り、拭い取った。


 「まあ、いい。あと少しで帰り着くのだからそこでゆっくり風呂に浸かるか」


 何とか思考を良い方向に切り替えて、走り出そうとしたその瞬間。


 ズドォォォン!!


 今まで聞いた事もない破裂音とともに、どこからか強烈な光を浴びた。

 雷が近くの大木を伝い、感電したのだ。

 そうとも、認識する間も無く、俺は訳も分からず、その場に倒れ伏せてしまった。

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