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ハゲの女神の紆余曲折(仮  作者: うまうま
第三章 女神の再来
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第184話 聖女は知る①

 あれから一ヶ月程で悪露は落ち着き、身体の方も大分回復した。

 出産から一晩経ったらものすごい足が浮腫んできて驚くほど太くなってパンパンに皮が張っていた(冗談抜きに象の足だった)のには参ったが、気づいたシャルが様子を見に来る度に加護を使ってくれたので助かった。

 授乳の方は頻回で寝るか授乳するかご飯食べるかの日々をこなしていったが、一般家庭ならオムツ変えたり着替えさせたりあやしたり、家庭状況によってはこれで家事までしないといけないのだから随分と楽をさせてもらっている。


 唯一辛かったのは、マッサージ。

 母乳の出を良くするためと吸いやすくするために先生にマッサージされたのだが、控え目に言っても拷問だった。

 張ってガチガチになっているところを、にこにこと情け容赦なくやられてあやうく悲鳴が出かけた。妹から話には聞いていたから覚悟していたのだが、予想以上に痛かった。ドアに指を挟んで腫れてジンジンしているところを捻り上げる感じと言えばいいだろうか。普通にぎゃー!と叫びたいぐらいには痛い。

 世のお母様方はこんなご苦労をされていたのかと意識を飛ばして耐えたら、よく叫びませんでしたねと言われた。叫んで良かったんですか……


 今ではマッサージのおかげか、いただいた母乳の出を良くする薬草茶(スパイス的な味で、チャイのミルク無しに近い)のおかげか、母乳は順調に出るようになった。

 それでも男の子だからかリエトの飲む量が多くてフィリアさんにも手伝ってもらっている。まだ直接授乳は出来ないが、四六時中一緒にいたおかげか抱っこしてしばらくは泣かなくなった。一歩前進である。


 本日は昨年から予定されていたシャルの戴冠式なのだが、私は本当に必要最低限の部分にだけ出席する事になっている。具体的に言うと、戴冠の儀のみ。そこでシャルは陛下から王冠と王笏、宝玉を授けられる事になっており、その後シャルから私に王妃のティアラが授けられる。

 今回ばかりは由緒正しいカッチリした服装になるかと諦めていたのだが、授乳事情を考慮するとラシェル様がネセリス様と考えてくださって胸周りを締め付けないドレスにしてくださった。しかも母乳が出てしまってもしみ込まないように加工済みだ。ありがたや。


 いつもはリエトと産褥用の部屋に籠っているのだが、今日は準備のために一緒に元の部屋へと来て一か月ぶりにお風呂に入ってサッパリして、ギリギリまで楽な恰好でいさせてもらっている。


「リーン」


 ノックと同時に扉が開きシャルが声を掛けてくるが、授乳中と気づいて素早く入って閉める音が聞こえた。ネラーがすぐに気付いて前に立って影にしてくれたからあちらの部屋からは見えなかっただろうが……


「ノックしても開けたら意味がないで――」

「すまない」


 謝るシャルが近づいてくるが、ぽかんとして見上げてしまう。


 社交ではほとんど礼服を身に纏っていたのだが、今日のシャルは肩章のついた金の縁取りがされた白の騎士服に深い青色のマントまで身に纏っていた。

 個人的に男性で白色系統の服は相当人を選ぶと私は勝手に思っている。しかも戦闘用の騎士服ではなく儀礼用の装飾過多の騎士服。大半の人が服に着られるであろう出で立ちなのに、背が高くて足が長いからそれが恐ろしい程様になっていて、違和感が何一つ無い。


「リーン?」


 ……あれ? シャルってこんなに恰好良かったっけ? 最近大型犬のイメージが強すぎて忘れてた?


「いえ、何でもないです」


 と、答える合間にチカチカと光が瞬きあっという間に野次馬が現れた。ここのところリエトを抱っこする度によく見ていたが、ここまで目にくる発光は久しぶりな気がする。


 シャルは相変わらずそっちには興味が無いようで首を傾げた。


「もしかして、この衣装が気に入ったのか?」


 ……何故バレた。


 顔色は変えなかった筈だ。声も変化させていない筈。なのに何故。


「…えー……そうですね。似合ってます。恰好いいですよ」


 なんとなく小声で言えば嬉し気に微笑まれて、衣装効果のせいか輝いて見えて直視できずリエトに視線を落とす。


 と、


「ようやくこれた」


 大きな溜息とともに知らない声が聞こえた。


 ネラーとクリスが私の左右に立ち、前にシャルが、そしてその前にレティーナが声の主に剣を構え、そしてその前を私が張った氷の壁が覆った。


 だが相手を見たシャルが、あ。と声を出して私に手を上げた。


 知り合いか?


 どこでも〇アが使える相手を兄以外に知らないので驚いたのだが、シャルが警戒を解いたので氷を消す。


「もしや、カルというのがあなたか?」

「うん? 名を知っているという事はお前が新たな導き手……じゃあないな。そっちの子かな?」


 ひょいっと軽い調子でシャルを避けるように顔を覗かせてきたのは、輝くような銀髪に金色の目をした綺麗な女性だった。

 なんだか目がちょっと独特な質感で、妙な感じがする相手だ。こう言うと失礼かもしれないが、ガラス玉のような目をしている。

 レティーナは敵ではないと判断したのか剣を納めてシャルの前から横にずれている。


「あぁそうだね。そっちの子が導き手だ。うん、良さそうな子……うん? フィジー? これはレリアじゃないか?」


 視線を私から虚空へと向けて問いかける女性。


「なるほど? それでお前はそんなに弱体化しているのか」


 ふむふむと頷く女性。ちょっと怖いのだが……誰と話しているんだ。そこにナニかいるのか? やめてくれよ、この部屋にそんなの居るとか嫌なんだけど。


「どなたです?」


 小声でシャルに問えば、返ってきたのは女性からだった。


「私はカル。お前達が言う所の精霊だよレリア」

「精霊……」

「実に明確な道標をありがとう。お前の心の在りようは今も昔も変わらないね」


 にこりと微笑まれ何のことかと首を傾げる。


ブクマ、評価ありがとうございます。

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