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ハゲの女神の紆余曲折(仮  作者: うまうま
第三章 女神の再来
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第175話 聖女と父②

「いや、本当に除け者にされたとか思ってないからね? わかってるとは思うけど子供じゃないから、しがらみとかそういうのも理解出来るよ。

 それに言動はあれだったけど、でも私の話はちゃんと聞いてくれてたし、母さんに反対されてもやりたい事をやらせてくれたでしょ?」


 それは……と父の口が動いた気がしたが、声にはなっていなかった。

 芳しく無い反応に違うのか?と訝しむと、はーとため息をついたのは兄で、何を思ったのかパンパンと手を叩いた。


「やめやめ。やっぱ父上殿が全部話せる段階になってからにすべきだ。ドツボに嵌る。

 んで、お前から見れば知ってた俺も父上殿の共犯者だろう。その上で言うが父上殿も俺もお前を蔑ろにしたつもりはない。それだけは確かだらな」


 そこんところ間違えんじゃねぇぞと念押ししてくる兄に、首を傾げつつ頷く。


「……はぁ。そうなの」


 何だかえらく予防線を張られたような気がするのは気のせいか?

 一体を何を言えないと言うのか……


「父上殿はあれだろ? フィザーがいいと言うまで話すつもりがないんだろ? 芋づる式になるから」

「ドミニク、その名も出すな」


 兄の質問に頭が痛そうに父は額を抑えていた。


「出したところでわかるわけがないだろ。とにかくだ、今は本当の姿はこれで、事情があったんだってことまでこいつが理解すれば十分だろ?

 それとも何か? わざわざ中途半端に言葉ケチって誤解するような事を望んでるってのか?」


 イラついたようにガン垂れる兄に、父はまたため息をついて首を横に振った。


「いや、お前の言う通りだ。

 駄目だな……どうにも、この姿で話すのはどうしていいのかわからない」


 本当に弱ったように疲れたような笑みを浮かべる父。


「父上殿は考え過ぎなんだっての。いっつもいっつもだんまり決め込んで頭の中だけでごちゃごちゃ考えて。自分で難しくしてるとしか俺には思えんね」

「そうかもしれないな……」

「いやぁ兄さんはちょっと考えなさすぎっていうか、思ったら即行動でついていけない事もあるけどね」


 耳が痛いという顔で反論しない父に、しょうがないなと援護に入れば兄は片眉を上げてこちらを向いた。


「あ? 思ったら動くのは当たり前だろ」

「いやだからって母さんに相談もなくあっちこっちふらふらしてたのはどうよ」

「ああ? だからそれはちゃんと稼いでいただろ?」

「そういう問題じゃないんだって」

「じゃあどういう問題だよ。それで領地運営出来てんだから問題ないだろ?」

「そりゃ母さんがやってくれてるからでしょ。いずれは兄さんが引き継がないといけないんだから定期的に戻るとかして覚えていかないと困るって事」

「あの領地をか? あんなもん代官派遣すりゃ済むだろうが」


 あ、この兄、前は接収されればいいとか言ってたけど本心はこっちだな?最初からやる気が無かったんじゃないか。


「いや上の方々はそういう手段取れると思うけど、うちってそんな伝手ないじゃない」

「ないわけないだろ」

「え、あるの?」

「伊達にあちこち動き回ってないからな」


 ふふんと得意げに鼻を鳴らす兄だが、全く誇れないと思うのですが? 普通に領地経営に携わっていた方が母は安心していたと思うのですが?


 まったく。と言ったところで父の視線に気づく。

 穏やかな目で見られていて、何だか気恥しい。


「父さんは本当に気にしなくてもいいよ。何か理由があったっていうのはわかったから。あ、でも教えてもらえるなら一つ訊きたいんだけど」

「答えられる事なら」


 クイシス王子にも言った言葉だったが、打って変わって柔らかい口調になんだかこそばゆい気持ちになる。


「アクバールの騎士って父さんの事?」

「そうらしい」


 苦笑いで父は頷いた。


「なんでそんな風に呼ばれてるの? なんかラーマルナを壊滅に追いやったとかなんとか言われてたけど」

「それは……その……」


 言い淀む父の横で、兄が底意地の悪そうな顔をしてニヤニヤと笑いだした。


「父上殿はな、キレてラーマルナに殴り込みかけたんだよ」

「は?」

「ドミニク」


 少し焦ったように遮る父だったが、兄のニヤニヤは止まらない。


「なんだよ事実だろ? リーンの惨状を見た直後にこっちに侵入してきてた奴ら全部発狂させて叩き出して、ついでにあっち側の軍上層部を軒並み半殺しにして恐怖植え付けてほぼほぼ行動不能に陥れたんだから」

「は?!」


 まさかの内容に、父を見れば父は片手で顔を覆って恥ずかしそうにしていた。耳を澄ませば年甲斐もなくやってしまったとかなんとか呟いて……


 ……まじなのですか。父よ。

 いや、その内容で年甲斐とか言って恥ずかしがっているのもどうかと思うんだけど、やってる事がデカすぎてつっこめない。

  

「んで、その時に見られたその髪の色でアーヴァインの死神だってラーマルナには言われて、それが変化してアーヴァインの騎士って事で周辺国にはうちの最終兵器だと思われてるわけだな。俺が間違われる事が多くて嫌になってたから、父上殿が表に出て来てくれて助かったわ」

「さすがに子供に後始末をさせるわけにはいかない。見られるのがわかってやったのは私だ」


 とんでもない話を平然と話している二人が別次元の生物に見えてきた……

 兄も大概だと思ってたけど、父はどうやらその上をいくのかもしれない。


「陞爵の打診もきたんだろ? どうすんだ?」

「受けたくはないが、今後の事を考えるとそうも言っていられないな」

「ふーん。じゃあ領地の方は?」

「そちらも仕方がない。いくらか人を戻してそれなりに整える事になる。お前はどうする気だ? ドロシーさんとずっとここにいるつもりか?」

「んー…それでもいいかと思ってるんだよなぁ」

「なら代理を誰にするのか考えておいてくれ」

「あいよ了解」


 ……何やら、本当に私の知らない事が多い模様。

 もうなんでもいいですよ。問題が起きなければ文句ありません。


 そういえばレティーナはいずこ? もしかして気を遣って出てくれてたのかな。

ブクマ、評価ありがとうございます。

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