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ハゲの女神の紆余曲折(仮  作者: うまうま
第三章 女神の再来
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第162話 聖女の初めての社交の季節②

 とまあそのようないろいろな経緯があって、本日王家主催の社交の開始となる夜会に出る準備しているのだが……じゃらじゃらと未だかつてないものを付けられている。

 お腹を締め付けないよう胸の下で切り替えがあるAラインのドレスはさらっとした軽い質感の仕上がりで(実際これまでのものと比べるとかなり軽い)、白い布地に光沢のある金糸で植物の刺繍(見覚えがあるそれはたぶんシャルの花紋)がなされている。白色系統なのはアクアマリンをハッキリ見せるためらしい。見た目は白いからこれでヴェールがあったら完全に妊婦用ウェディングドレスだ。

 胸元はあまり開いてないタイプで(ガッツリ開いてたらパンパンに張ってる胸の青白い血管が見えてやばかった。妊娠前から比べれば二サイズはアップしたような気がするが嬉しいというより痛い)、首にはダイヤを入れて編まれた帯状の銀細工の首飾りをしている。この首飾りには中央に例の大きな楕円形のアクアマリンが鎮座している。これだけでずしっとしているが、耳にも涙型の(首飾りよりは小さいが)アクアマリンがぶら下がり耳たぶを引っ張っている。で、アップにされた頭にも小さなダイヤ型のそれを集めて花に見立てた飾りを散らされている。

 まぁここまではいいんだが、問題は指だ。スクエア型を使った二連の指輪をしているのだがこれがちょっと痛いのだ。最近むくみ気味で……つけた時は平気だったんだが、だんだんときつくなってですね……でも外してもいいですかとか言えない。

 みんな今回のドレスのデザインから関わっているので、つける宝飾品にもとんでもなく拘っているのだ。だからまぁ宣伝担当でもあるわけだし、しょうがないかと諦めている。

 

 用意が整ったところでシャルが迎えに来てくれた。

 辺境伯領で見た騎士服に近い服装で、黒地に銀の縁取りがしてある。飾り釦は鈍い銅色で統一されており、これはたぶん互いの色を意識してあるんだろうなと予想がついた。しかしまぁ、いつもの事ながらとんでもなく似合っている。大体何着ても似合うからなこの人。


 部屋に入ってきたシャルは一瞬動きを止めたが、すぐに近づいてきて聞いてきた。


「似合っているが、重たくないか? 寒くないか?」


 申し訳程度の賛辞?と、心配性の言葉が重なる。

 ドレスも今つけている宝飾品もまだシャルに見せた事は無かったのだが、一瞥だけで興味が無いらしい。らしいといえばらしくて笑ってしまう。デリアさんがいたら叱責ものだ。


「大丈夫ですよ。普通のドレスよりも重たくないくらいです。下も冷えないようにはいてますから平気です。シャルも似合ってますよ」

「ありがとう。それならいいが……」


 シャルは私の手を取ると一瞬目を細めた。その瞬間指に感じていたむくみの感覚が消えていた。

 すごい観察眼だな。助かったけど。


「ありがとうございます」

「他には?」


 小声でお礼を言うとさらに尋ねられた。しんどいとか痛いとかそういう事はないかと訊いているのだろうと思う。


「……えー……たぶん、ないです?」

「なんで疑問系なんだ」

「思いつかないので?」

「……まったく。無理をするなと言ってもこれだから……途中、様子がおかしいと思ったら中座にするからな」

「さすがにお腹が張ったりしたら言いますから」

「靴は? 踵の高い靴では無いだろうな?」


 スカートの裾を捲ろうとするシャルの手を慌てて止める。

 ちょっと!まだみんな居るからそれは駄目だって!


「大丈夫、大丈夫ですから」

「足も浮腫むくんでいるのではないか?」

「大丈夫ですって」

「腹帯はしているのか?」

「してますから」

「骨盤ベルトは? ドレスだからと外してないか?」

「してますから!」


 オカン状態が発動したらしいシャルにあれやこれやと聞かれ、周りの侍女達が慣れた様子であらあらと微笑みながら退室していくのがいたたまれない。もうついでに野次馬の君らも退室してくれないかね。毎度毎度勝手に出てきやがって……シャルが原因だとしたら無理か……


 シャルは侍女が居なくなったのを見て私の前にしゃがみ込んだ。安定の精霊無視である。シャルの目には精霊シャットアウトフィルターでも掛かっているのだろうか。


「いろいろと考えたのだが……」


 改まった様子に何を言うのだろうとちょっと身構える。今更出るなとは言わないと思うが、過保護だからな。


「辺境伯領でお披露目をした時の事を覚えているか?」

「お披露目? えぇはい、覚えてますよ」


 ドロシーさんの事件があったのだ。インパクトが強くて忘れる方がどうかしているだろう。


「あの時と同じことが出来るか?」

「……まさか、襲撃が予想されるんですか?」


 いったいどこの派閥、いや国外からの賓客も来ているから、そちらの線もあるのか?と思ったら、首を横に振られた。


「警備に抜けはない。そうではなく、あの時演技をしていただろう?」

「演技? ……っていうと、一目惚れ云々のあれですか?」

「それだ。それをもう一度出来るか?」

「やれと言われればやりますけど……どうしたんです?」

「牽制したいんだ。余計な事を言わせないように」


 牽制……って事は、二人の間に入り込む余地はありませんよと見せるのが目的って事か?

 という事は、前回の社交の季節で接触してきたベッカー伯爵家のミュゼットさんとか、ブルーム伯爵家のエレオノーラさんとか、フロイント子爵家のヘルミーナさんとか、ヘーディケ子爵家のマクシーネさんとかが諦めずにいるという事か。

 地獄の蓋がパカッと深淵こんにちは事件からこちとら情報収集しましたよ。

 私を心配して情報開示しない侍女達を説き伏せて、中立派から元ミルネスト派で構成された押せ押せ御令嬢の筆頭格を確認したらこの辺だった。側妃希望だから爵位もそこまで必要ではないためハングリー精神旺盛な男爵令嬢とかもいたんだが、最終的にどこぞの子爵と結婚して春の社交後半まで残れなかったようだ。これはこの男爵令嬢に限った話ではない。醜聞でリタイアした子もいる。裏の戦いが熾烈で怖い。というか、リタイアした子が不憫でならない。関係が無さ過ぎて拾い上げる事も出来ないが。


ブクマ、評価ありがとうございます。

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