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ハゲの女神の紆余曲折(仮  作者: うまうま
第一章 辺境の地にて
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第16話 ハゲの女神(笑)は聖女(軟禁)となる⑤

〝レティーナはあなたの心を読むように言われてるけど、今は他に誰か潜んでいないか確認してもらっているの〟


 ティルナの横で微笑んでいるレティーナは『読む』の加護。


 語学系に強くなるという微妙な力しかないと言われていたレティーナの加護の力も、いろいろ試して読心が出来る事を発見したのはよく覚えている。『伝える』とは違って、無断で人の思考を読めてしまうのでこれに関しては扱いを慎重にするように仲間内でも口外しないよう約束しあった加護の力だ。

 もちろん『読む』加護持ちなら誰でも出来るというわけではなく、非常に繊細な操作を必要とし成功しているのはレティーナだけなのだが、出来る事を知れば悪用しようとやらせる人間は確実に出てくる危険なタイプの力である。


 レティーナはティルナに目配せをすると、膝の上で小さく両手の親指を交差した。

 ―—バツ。誰かいるのだろう。


 なるほど。アデリーナさんがすぐに出ていったのは女同士だから、というわけではなく友人同士で気心知れた相手に何を話すのか観察されているという事か。


 と、思ったらレティーナは私に視線を向け指で小さく丸を作った。正解らしい。

 とりあえず話を合わせよう。


「そうだったの? 全然気づかなかったわ。いきなりだったし、その後は無我夢中だったから」


 私の心を読むように言われているという事は、レティーナは辺境伯でその力を明かしたという事だろう。誰彼構わず言っているわけではないと思うが、それだけ辺境伯様を信用しているという事だろうか。——三角。って、また判断し辛いサインを。


「二人とも騎士になれたようだけれど、お仕事はいいの?」


 主人を裏切るような真似をしていて平気なの?という意味で聞けば二人とも問題ないというように頷いてくれた。


「大丈夫よ。ちゃんと許可は得ているから。グレイグ先輩じゃあるまいし、ね」


〝私達はあなたが宰相の手先だなんて全く疑ってないもの。あなた勢力争いとか権力闘争とか全く興味無かったし、レティーナの『読む』の実験台に自分から何度もなったじゃない。

 それに団長も疑ってないわよ。宰相の手の者が自分を知らない筈がないし、死にそうになってまで助ける筈がないってね。

 今回は辺境伯様が念のためにっていう事でレティーナが投入されたのよね。団長が殺されそうになった一件、かなり深刻に受け止めてるのよ。何しろ五年も前からうちに入り込んでいた奴だったから。

 って言っても、あなたからすれば何の話? っていう事でよく状況もわかってないでしょうけど〟


 くすりと笑って言うティルナに「そうですね」と肩を竦めて見せた。


「気絶している状態でこの辺境伯領まで運んだから心配していたのだけれど、どうやら問題ないみたいで安心したわ」

「リーンは頑丈なのが取り柄でしたものね」


〝ここは辺境伯様の城館よ。団長の腕を治癒した後、意識が無くて何度か危険だったんだけど無事で本当に良かったわ。

 なんで近場の王都じゃなくてこっちに連れてきているのかっていうと、辺境伯家とアイリアル侯爵家は先王陛下の時代から宰相家とやりあっているから、聖女なんて勢力集めに利用できそうな人間をあっちに渡したくないって思惑ね。団長もこっちの派閥だから〟


 ティルナに合わせてゆったりと相槌を打つレティーナ。頑丈が取り柄って、事実だけど酷いなぁ。

 概ね予想通りかと内心ティルナの話に頷きながら私は半眼を二人に向けた。


「私だって無理をすれば体調を崩します。人間なんですから」


 まったくもうと言えば、「ごめんなさいね」とレティーナ。


「でもほら、学生の頃に体調を崩したところを見た事がなかったですから」

「それは無理をしなかったからですよ」


〝あと普通は知ってると思うけど、団長は王弟殿下よ〟


 あ、はい。それは起き抜けに知ってびびりました。おかげで頭が回らなくなりましたよ……


〝王弟殿下は普通ならもっと上の役職についてておかしくない人なのだけどね……頭も悪くないし、あの見た目だから人を寄せるのにも使えるしね〟


 ざくっとティルナが王弟殿下を使う発言しております。

 ティルナは出会った頃から夢想する乙女というよりリアリストだったからなぁ。その見た目も相まって女子生徒のファンが多かったし。これが男だったらすごいもてもてだっただろう。


〝でも先王陛下の時代に流行り病が起きて、辺境伯領へ避難させられたの。本当は沈静化した時に戻る予定だったんだけど、宰相一派が実権を握ってしまってアイリアル侯爵様のご息女である王太子妃のアイリーン様を側妃へ降格させて、自分の娘を正妃に無理矢理して外戚になったでしょ?〟


 いえ、知りませんでした……。


〝だから戻ったら危険だと周囲が判断してそのまま辺境伯領に留まったの。何もしないのは性分ではないからって成長されてからは騎士団に入って、実力で団長になった割と真面目な人よ〟


 ははぁ……なるほど。そういう経緯のお人なのか。

 というかあの宰相(の父だな。年代的に)って伝染病の時にそういう事もしてたんだな。息子は特殊業務手当出さない奴だし、似たり寄ったりの思考回路してるのかもしれない。利用出来るものは利用してやるという感じの。


「無理はしていないなんて言って、結構夜更かしはしていたと思いますけれど?」


 思考を巡らしつつ、ティルナの突っ込みにちょっとだけ口を尖らせる。


「だっていろいろと本があったんですもの。うちにはそんなに本はありませんでしたから、知識の宝庫だと思って」

「入り浸ってらしたものねぇ夜中も忍び込んで」


 レティーナの相槌に、うっとなる。


 忍び込んでるのバレてたのか……


 にこりとレティーナに微笑まれた。


ブクマ、評価ありがとうございます。

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