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輝け!弱小KM高校ラグビー部  作者: 四方山林
4/22

凋落

 3年の抜けたKM高校ラグビー部は一気に弱体化した。


 それは当然だろう。


 なんといってもラグビーを知らないど素人がチームの3分の2を占めている。


 とくに問題だったのは2年生5人のうち3人がバックスで1人がスクラムハーフ。フォワードは1人だけだったことだ。


 フォワードはスクラムを組むこともあって時に専門職といわれる。


 そこに未経験の1年生が大半を占めるなど普通はあり得ない事態だ。


 それに追い打ちをかけたのは過酷な練習を続けているにも関わらず練習試合で連戦連敗したことだ。


 しかもただの敗戦ではなく目を覆いたくなるような大敗戦だ。


 夏休みの遠征を終える頃には完全に負け癖がついてしまい、特に1年生は負けても仕方ないといった諦めムードが蔓延していた。


「こんな試合をして悔しくないのか!お前らは県で最弱のチームだ!」


 監督の叱咤の声も部員達にはなかなか届かなかった。


 そもそもその監督をして「県下で最も厳しい」と言わしめるほど厳しい練習を重ねているのに一勝することもできないのだから。


 やがて練習試合の相手はAブロックのチームからBブロック、Cブロックと格を下げていった。それでもまったく勝てない。


 私は何のために辛い練習に耐えているのか、なんのためにラグビーをやっているのか、わからなくなっていった。

 


 雰囲気の悪い部活は歪みを生み、遂にいじめへと発展する。


 私と今井、鈴木、林の4人は列車通学をしており最終列車(21:46)に間に合うよう早めに帰らせて貰っていたので知らなかったが、他のメンバー数人が道具の後始末やボール磨きを藤田ひとりに押し付けていたらしい。


 知らなかったと言っても後片付けに参加していない時点で私も同罪だろう・・・



 藤田は身長180cmを超える恵まれた体格を持っていたが、少々不器用なところがあってボールの扱いを苦手としていた。


 おそらく試合中のミスがチームメイトの反感を買ったのだろう。


 それが原因なのかもっと複雑な理由があったのか詳細は分からない。

 ただ、藤田は部活に来ないどころか不登校となってしまったのだった。


 私は偶に登校してきた藤田に話しかけ元気付けようと試みたものの彼は曖昧に笑うだけで私に何も話そうとはしなかった。

 それはラグビー部と距離を置きたいと思っていたからかもしれない。


 結局、藤田と話す機会は減っていき次第に疎遠になっていった。


 その後、藤田は徐々に元気を取り戻し普通に登校するようになったが、当然ながら彼がラグビー部に戻ってくることはなかった。


 こうしてKM高校ラグビー部は14人になってしまったのである。

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