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輝け!弱小KM高校ラグビー部  作者: 四方山林
21/22

ノーサイド

 コンバージョンも決めた私たちは5点リードを取り戻した。


 本日一番の歓声が生徒たちから湧き上がる。

 指笛が鳴り響き応援に来ていた教師も腕を突き上げて喜びを露にしていた。



 審判が再開の笛を吹く頃には残り時間2分あまり。

 KK高校には既に戦意が失われており、逆に私たちKM高校は戦意に溢れていた。


 KK高校のドロップキックを難なく捌いた私たちは自陣から右に展開。

 時間稼ぎなど考えず、もう1本取りに行く。


 1回、2回と早いボール出しで連続攻撃するとKK高校の防衛ラインは崩れ、センター水野やウイング今井が大きく前進する。


 この時点で後半戦の終了時間となりプレーが途切れればそこで試合は終了という時間帯に入った。

 それでも私たちは走り続けた。



 敵陣残り10m。

 ラックからボールが左に展開する。


 この時は何度も攻撃を重ねており、攻撃ラインには珍しく私とプロップ林、そしてスクラムハーフ鈴木が並ぶ。


 バックスの多くはまだ倒れており、立ち上がってフォローに回った私たちが攻撃ラインを構築した形だ。


 相手は2人。数的優位がある。


 私は敢えて走る速度を落とした。

 相手2人を私に引き付けパスを外に回せば、確実にトライを決められると判断したからだ。


 私は相手2人の中間へ走り、内に一歩ステップを切る。

 ステップに釣られた相手は狙い通り上半身と腰辺りにタックルをしてくる。

 内心ガッツポーズを決めながら私はパスを外に回した。


 しかしこれがミス。


 パスを取り損ねた林がボールをこぼしてプレーが中断。そのまま試合終了となってしまった。


 今でも自分でトライに行けば良かったと悔やむシーンとなったが、KM高校ラグビー部は大きな声援の中で逆転勝利を掴んだのだった。



 試合終了後、両校がハーフラインで整列しお互いに礼を交わして肩や背中を叩きあう。


 勝利した私たちは掲揚されていた旗の前に改めて整列。校歌を歌う。


 肩を叩きあったあたりで皆の目には涙が溜まっていたが、校歌を歌う頃には溢れ出していた。


 応援に来てくれた生徒たちも一緒になって校歌を歌う。


 ゴールポスト下で撮った記念写真は皆泣き笑いで酷い顔だったが最高の思い出となった。


 さらに心に残ったのはいじめが原因で1年生でラグビー部を去った藤田が私の所に来て「俺もラグビー続けてれば良かったな」と言ったことだ。


 私はただバシバシと肩を叩いて「応援してくれたんだ。仲間じゃないか」と言った。

 藤田も嬉しそうに笑い返してくれた。



 こうして私たち3年生は有終の美を飾ってラグビー部を引退したのだった。

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