Aブロック入れ替え戦④
審判が再開の笛を吹く頃には残り時間が8分を切っていた。
もう時間がない。
そこでスタンドオフ園田は思い切った行動に出る。
再開のドロップキックを敵陣深くの22mラインぎりぎりの位置へ蹴り上げたのだ。
フォワードの運動量が落ちる後半戦終盤。
もしドロップキックが22mラインを越えてしまえばフェアキャッチ(22mライン内側でマークと宣言してキャッチすると宣言したチームにフリーキックが与えられる)のリスクがあり、またボールを味方が競れなければ簡単に蹴り返されて陣地を大きく回復されてしまう。
誤って蹴りすぎたりフォワードが落下地点に追い付けなければ相手に時間を稼がせる危険なプレーだった。
それでも敵陣深くに蹴ったのはフォワードが追い付くと信じていたからだ。
フォワード陣は期待に応えるべく私を先頭に落下地点へ突進する。
いつもなら落下タイミングを見ながら走る速度を調整するのだが、今回ばかりは全力で走らないと間に合わない。
私は他のメンバーを置き去りに落下地点へ急いだ。
敵陣深いこともあって落下地点には相手フォワードが密集している。
手を上げてキャッチをアピールする選手の左右にはサポートが入り、準備万端で落ちてくるボールを待ち受けていた。
ボールは園田の狙い通り22mライン手前に落下していく。
あと3mも伸びていればフェアキャッチになりそうな絶妙な位置だ。
走る私の目前で手を上げていた選手がジャンプし見事にキャッチ。すかさず左右の選手が腕を腰に回しタックルに備える。
私は構わず勢いのままキャッチした相手選手の腰に突き上げるようなタックルを見舞った。
会心のタックルだった。
浮き上がった相手はボールを味方に送れないままサポートもろとも私に引き倒されボールを落としてしまう。
慌ててカバーに来た相手フォワード陣に遅れてきたロック石川、ナンバーエイト佐々木、フランカー水谷が次々に突き刺さりボールに伸びてきた相手の腕を押し退けてボールの確保に成功。
さらに後ろから来ていたロック渋谷がボールを拾いすぐ左に突進。
止められたところにフランカー菅井、プロップ林が渋谷のフォローに入ってモールを結成した。
その頃には第一陣の私たちもモールに加わりじわじわと攻めていく。
私たちの必勝パターンだ。
KK高校も必死にディフェンスするも勢いに乗る私たちを止めることはできず、残り2mまでモールで進み最後はプロップ池内が二人を跳ね飛ばしながらゴールに飛び込む。
逆転トライ。
ここまで再開からわずか3分ほどの出来事だった。




