初めての練習試合
半ば強引に入部させられたラグビー部。
一緒に入った1年生部員は全員で10人。ラグビーの経験者はひとりもいない。
まったくの素人集団だった。
しかもその半数は私と同様に半ば強引に入部させられたこともあって部活にあまり積極的ではなかった。
なにしろラグビー部の練習は過酷の一言。
高校のすぐ隣に社会人ラグビー部の練習グラウンドや筋トレ設備、照明が揃っており、監督がその社会人ラグビー部のOBだった事もあって設備を貸して貰えた事も大きい。
今でこそ幸運だったと思えるが、当時は他の部活がみんな帰った後まで練習が続く毎日を恨めしく思ったものだ。
それでもモチベーションを高めるイベントもあった。
それは練習試合だ。
練習試合を行った多くの高校に勝利する先輩たちの姿は素直に格好良いと思ったものだ。
当時主力だった3年生は強く、県下でもベスト8に名を連ね、準決勝、運が良ければ決勝に駒を進められる程だったからである。
同じく強豪校だった近隣のKK高校との練習試合ではお互いがトライを取り合う好試合で見ている私自身も心躍ったものだ。
そんなある練習試合の日。
前半で大きくリードした後半戦で監督から私に交代の指示がでた。
7番フランカーでの交代だった。
当時の私は入部して一ヶ月弱、ルールもろくに覚えておらず、とても務まるとは思えなかった。
今思えば経験を積ませるためだったのだろうが当時の私にはかなりのプレッシャーだった事を覚えている。
緊張しながら出場した私は数度のタックルとスクラムを組んだだけであっと言う間に足が動かなくなった。
見ているだけでは中々分かりずらいがラグビーはとても体力が必要なスポーツだ。
走ってはタックル。倒れてもすぐ起き上がり味方が捕まれば助けるため相手に突進する。
ラグビーを知らない人でも全力で力を出すとすぐに限界がくるのは想像がつくと思う。
タックルもボールの奪い合いもフィジカルがもの言う。スクラムなどは言うまでもないだろう。
全力を何度も振り絞りその合間に走ることを想像してもらえば、ラグビーが如何に体力を消耗するスポーツかわかると思う。
私が担ったフランカーというポジションはスクラムを上から見た場合の右端に位置し、スクラムから離れやすいポジションである。
いち早くスクラムを抜けボールを追って味方のフォローに向かったり、相手のキックを妨害に行く役割だ。
ワールドカップの中継でもスクラムから出たボールをスクラムハーフが高く蹴り上げるシーンや後ろに送ったボールを大きく外に蹴り出すシーンがあるが、これを妨害しに走っていく選手はフランカーであることが多い。
また、バックスの攻撃に参加することも多く、フィジカルに加え走力も要求されるポジションだ。
そんなフランカーとして出場した私は初めて出た試合だったこともあってメリハリの利いたプレーなどできず、常に全力でプレーした結果10分ともたずに体力を使い切ってしまったのだった。
それは同じく1年で試合に出た石川や佐藤も同様で自分たちが如何に体力不足なのかを痛感させられることになった。