Aブロック入れ替え戦③
後半戦はKK高校のドロップキックで始まった。
最初の空中戦から続くモールまで、激しいぶつかり合いとなる。
私たちがガッチリ確保したボールはスクラムハーフ鈴木からスタンドオフ園田へ。
園田は高々とフォワード前方へボールを蹴り上げると自ら敵陣に駆け上がった。
これは通常オフサイドライン=ボールの位置なのに対してボールを蹴った場合は蹴った人間の位置がオフサイドラインとなるためだ。
この場合、園田が蹴った位置より前にいたフォワードメンバーはオフサイドラインを超えているため、園田が追い越すまでプレーに参加できない。
私は園田の位置を確認しながらオフサイドから解消されるのを待ちフォワードへ指示を出す。
「ステイ、ステイ、ステイ、クリア、ゴー!」
私はボールの軌道を予測しながら落下地点目掛けて突進する。
ボールを確保するためにも空中戦をバックス任せにする気はないのだ。
後半戦も前半戦と同じように戦線が目まぐるしく前後する消耗激しい試合となる。
互いに1本ずつトライを追加する形で終盤に入った試合は先手を取り続けていた私たちが5点リードを守り続けていた。
そして後半残り13分にそれは起こる。
敵陣10mライン付近で右に展開した私たちだったがクロスに飛び込んだセンター水野がボールを前にこぼし、それをKK高校がインターセプト。
不意を突かれた私たちは急いで戻るも追い付けずそのまま独走状態に。
ゴール寸前でフルバック佐藤が必死に飛びかかったが倒すに至らず、中央に同点トライを決められてしまう。
その後のコンバージョンも成功され、私たちは土壇場で2点のリードを許し逆転されたのだった。
これには応援する生徒たちからも悲鳴のような声や落胆の声が上がる。
コンバージョンキックが行われている間、私たちは悄然とゴール下に集まっていた。
誰も攻めはしなかったがボールをこぼした水野は今にも膝をつきそうな程だった。
私たちが落ち込む間も刻一刻と時が過ぎていく。
KK高校もそれをよくわかっておりコンバージョンにも注意されない程度に時間を使っていた。
そんな時、落ち込んだ雰囲気を吹き飛ばすようにキャプテン園田が声を張り上げる。
「お前ら顔を上げろ。俺たちはここで負けるために練習してきたのか!」
膝に手をついていたメンバーが顔を上げて応える。
「「「違う!」」」
「俺たちの方が絶対多く練習してる。俺たちは勝つんだ。すぐ取り返すぞ!」
「「「おおおぉぉぉ」」」
キャプテン佐藤の叱咤に私たちは再び闘志を漲らせた。
佐藤の言う通り私たちはここで負けるような練習などしてきていない。
気勢を上げる私たちに生徒たちからも大きな声援が送られてくる。
周りを見てみればいつの間にか100人を超える生徒が集まっていた。
みんな口々に「頑張れ」、「まだいける」「取り返せ」と声をあげている。
この声援に応えるためにも私たちは負けるわけにはいかない。




