新入生勧誘作戦
冬の間は練習試合も少なく地力の底上げに終始したので語ることは多くない。
相変わらず地獄の練習の日々だったとだけ記す。
春を迎え私は3年生に進級した。
受験生という言葉が周りからチラホラと聞こえるようになり、志望校調査だの進路指導だのが頻繁に行われるようになった。
そんななか今年も新入生の勧誘時期が到来する。
ラグビー人気が低迷していた当時、ラグビーという言葉は知っていても中身を全く知らないという新入生がほとんどだ。
なんのアプローチもなしにラグビー部に入ろうと思う人はまずいないと言って良い。
私もその一人だったのでよくわかる。
それでも今年は良い材料があった。
今年2年生になったラグビージュニアスクール出身者の弟が入学してきたのだ。
この弟くんを中心にラグビー部への入部希望者を募集し、さらに去年同様の勧誘活動を行った私たちは10名の新入部員を迎えることに成功した。
努力や根性、自己犠牲などを馬鹿にする風潮が強いご時世によく集まってくれたものだ。
この頃に世間で騒がれていたのがゆとり教育という言葉だった。
今でこそゆとり教育は失敗だったのではないかとも言われているが、この頃は詰込み型からゆとりある教育に変え、個性や創造性を豊かにするという目標の元、授業時間の削減が行われてきていた。
その煽りを受け授業時間の確保を求めた学校側は体育祭とは別に行われていた球技大会の廃止、2日間行われていた文化祭の短縮、また活躍した部への全校応援の廃止を決定した。
突然の決定に生徒たちは生徒会を先頭に抗議し、文化祭の短縮については見直しがなされたものの他の項目については実施が決まったのだった。




