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学内平和推進委員会!  作者: はるまき
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初仕事 1

中等部の校門を、少し厚いヒールのローファーでリズムを刻むように軽やかに通り過ぎる。セミロングの黒髪がなびいた。

歩くのは早いほうで、前にいる人達を次々と抜かしていく。そして、決まって皆んな私に見惚れてしまうのである。(可愛いからしょうがない)


10月に入り、去りきっていなかった暑さがやっと消え、秋の気配を感じられるようになった。

そして10月になったということは、私の学級委員としての活動が始まることを意味していた。


同じクラスの学級委員は浅羽(あさば)(みなみ)という男子だ。

クラスが同じになるまで顔は知らなかったが、男女共に人気があり、中学に入ってすぐの頃からその名前はよく聞いていた。

浅羽は運動神経が良く、顔も整っている。何人もの女子が恋心を抱いていることもつむぎは知っていた。

(私はまーったく興味無いけどね)

つむぎは、この中学校のレベルでは満足できないのである。


昇降口に入ると、普段とは一変して多くの生徒で溢れていた。つむぎは不思議に思いながら、人と人の間を縫って靴箱へと向かう。

その時、後ろから何者かに腕を掴まれた。

「きゃあ!!変態!!」

咄嗟に叫び振り払おうとすると、背後から「ああごめんごめん。そういうんじゃなくて...」と、聞き覚えのない女の子の声が聞こえた。

「え、おんなのこ?」つむぎは目を丸くする。

振り返ると、そこには背の高い部活着を着た少女が立っていた。大きな丸い瞳に、頭に乗っかっているこれまた大きなお団子が印象的だ。

少女はにこっと微笑むと、「ここじゃ人がいっぱいだから、とにかく1組行こ!」と言って、またつむぎの手を取った。



「さっきは突然ごめんね、私は難波汐梨(なんばしおり)。1組で、学級委員やってるんだ!ちょっと急に集まんなきゃいけなくなっちゃってさ、探してたの」

汐梨に連れられてきた教室には、他に2人の学級委員(と思われる人物)がいた。

「お、新人だね!?急に難波に連れてこられて驚いたでしょー?こいつ説明力皆無だから。」

中学生にしては体つきががっしりとしている男子が、つむぎに気付いて近づいてきた。

「いや、まぁ、説明は無かったけど...」

「ここに来た方が早いと思ったの!ほんとに杉原嫌いだ。大っ嫌い!」

汐梨は叫ぶと、つむぎの後ろに隠れた。でも体育会系男子は気にしていないようだ。

「あー、言い忘れてた、俺は杉原将一(すぎはらしょういち)。一応委員長もやってるんだー。」

「知ってる、よく見るから。」

そう言うと、将一は嬉しそうに笑った。

「それで、あそこにいるのが茂木(もてぎ)茉子(まこ)。3組だよ」

少し遠くで椅子に座って見守っていた女の子は、茉子という名前だったらしい。話に自分が出てきて驚いたのか、名前があがった時、ピクっと反応した。

立ち上がるとつむぎ達の方に来て、「よろしくね」と言った。小さくて可愛らしい容姿からは少し意外な、落ち着いていて大人っぽい声だった。

短めのボブの髪の毛を外側にはねさせていて、お洒落に気を使っていそうだ、とつむぎは思った。

「あれ、そう言えばあの2人はまだ?遅くない?」

「浅羽君は来ると思うけど...」

「あ、涼太(りょうた)は図書館行ってるのか。もーー!仕事さぼんな!」

「しょうがないよ。雫内(しずうち)君は本の虫だから...」

「ほんっとに茉子、あんな相方持って大変だよね、ごめんね!私が今度こっぴどく言っておくから!」

「難波に叱られるなんて雫内が可哀想...」

「はあ!?」

「あ、あの...」3人の会話についていけないつむぎは、小さな声で言う。

「あ、そうだよね。雫内のこと知らないよね」

「でも、説明するのは面倒臭いと言うか...」

「涼太とは会った方が分かりやすいと思う!!!」

(いやいや一体どんな人なのよ!!!)

3人の返答に困惑していると、将一がはっと何かに気付いたような顔をした。

「そういえば、名前聞いてなかった!なんていうの?」

あ、言ってなかったっけ。

自己紹介をしようと口を開いた瞬間、そばのドアがガラガラと音をたてて開いた。

「戸田つむぎ、14歳。誕生日は6月23日で蟹座。血液型はB型で、一人っ子。帰宅部だが習い事にピアノ、バレエ、ダンスなどなど...」

茶髪の男子が左手に紙を持ち、そこに書かれているのであろう内容を読み上げてていた。...私の個人情報を。

つむぎはそんな行為をするこの男子に引きながら、慌てて止めにいく。(でも我を忘れないよう、女の子らしく注意しながら)

「ねえ、待って待って待って!それ私の個人情報だよね?」

茶髪は紙から視線を外し、正面を向く。目と目が合い、やっとつむぎはこの男子が誰だか理解した。

「つむぎちゃん、本当に100点満点だね。彼女にしたいくらいだなぁ」

浅羽南が楽しそうに笑っていた。

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