戦いの理由
「俺のよ、元いた道場なんだよな。雨宮道場っつーのはよ。」
思考が弾ける。
原田の言った言葉が理解できない。
「え?なんすか?」
思考がまとまらない鷹通が馬鹿みたいに聞き返す。
「だからよ、俺がこの道場に来るまで居たのが雨宮道場。んで、自分がつえーと思い込んでた俺は心をへし折られたわけよ。自分よりふた回りもちっせー、しかもヒョロヒョロの女の子にだ。」
原田は自嘲するように笑うと、手をひらひらさせながら身振りでお開きだと伝える。
「ダッセー話だと笑ってくれてもいい、だがよ。俺をボコボコにできるようになってようやくスタートラインだっつーのは理解しておけよ。
才能のねえ俺が一日一歩進歩していくとしたら、あの女は一日3歩進んでやがる。腹が立つことにな。」
鷹通の肩を叩きながら原田は続ける。
「俺をボコボコにできるようになってよ、そっから一日5歩進んでいける才能がありゃあの女に勝てるようになるぜ。まあ、頑張れや。」
マシンガンのように情報を叩き込まれた鷹通が話をようやく飲み込めた時には、原田はもう道場を出ていた。
「師匠の因縁の相手の子供で…
先輩の因縁の相手で…
俺の初恋の相手で…
道場の名声をかけた代理戦…?
なんでこんなごちゃついてんだよ、俺の恋路は…。」
また取り残された鷹通は、頭を抱えるのであった。