鷹と剣
身体と身体がぶつかり合う鈍い音が道場に響く。
今までやってきた手を抜いた組手ではない、本気の打ち合い。
鷹通が右の貫手を放つと原田はそれを左腕でいなしながら、インに身体を入れながら身体をひねり、鉄山靠を放つ。
吹き飛ばされながら鷹通は笑い、聞く。
「いつ習ったんすか?」
追い討ちをかけるように足を踏み出しながら原田は答える。「ま、色々とな。」
吹き飛んだ鷹通は受け身を取りながら、原田の追い討ちの踏み抜きをすんでのところで躱す。
「やっぱりセンパイは謎が深えや!」
躱された原田は一瞬で間合いを取り、気を集中させながらまた、笑う。
「だろ?センパイだからな!」
気合を入れた正拳突きを原田が打つ。
鷹通はそれを受け流し、肘の関節をキメながら押し込めに掛かる。
だが原田はキメられた肘をそのままに足で床を蹴り縦に回転する。
肘をキメきれなくなり鷹通は手を離す。
「まじすか?片腕捨てて抜け出すってマジすぎっすよ…?」
原田は不敵に笑いながら体勢を立て直す。
「なあ鷹通、お前本当にやんのか?」
軽い口調とは裏腹の鋭い突きを繰り出しながら、原田は問いかける。
「ま、まあマジっすね!にしてもセンパイの動きってこんな速かったんす、ね!」
すんでのところで躱しながら鷹通も答え、お返しとばかりに踏み込んだ重い掌底を原田の腹に打ち込む。
「やるじゃねえか、どっちの意味でもよ。」
腹に受けた一撃に感心したように原田は少しよろめきつつ破顔する。
しかし、と腹を抑えつつ真顔になった原田は鷹通に問いかける。
「しっかし、道場の名前を背負って戦うってことも分かった上で師匠を訪ねたんだよな?」
鷹通の動きが止まる。
思考が高速で回転していく鷹通の脳内で、先ほどの師匠の言葉がリフレインする。