妄想通学路
翌日。学校前にて。
「黒髪ロング・・・美少女・・・」
鷹通は一歩間違えば変質者といった独り言をブツブツ言いながら学校に登校する。
「よおタカ・・・って、いつものアレか?」
軽薄そうな金髪の男が鷹通の肩を抱きながら怪訝そうに問いかける。
「おお、竜太、おはよう。」
竜太と呼ばれた金髪の男は少しぎょっとして、後ずさる。
「お、お前が・・・黒髪美少女の妄想から一瞬で帰ってきた・・・?今日は槍でも降るんじゃねえか?」
鷹通は笑いながら答える。
「はは、さては竜太知らんな?センパイの情報だと、今日あたりその夢にまで見た美少女が転校してくるらしいぞ?」
さらに竜太は驚き、一瞬逡巡した後、冷静さを取り戻しながら言う。
「お前さあ、高校3年生の秋だぜ?この時期に転校してくるって相当ワケアリって感じだろ・・・。ウチの高校は特に部活が強いってわけでもねえし、就職に強いって訳でもねえ。」
鷹通はそれを聞き唸る。かなり唸った。
「確かに・・・。うーむ。しかしセンパイが嘘を言うとも思えんしなあ。いや、うーん。」
竜太はそんな鷹通を尻目に、そそくさと学校へ向かっていく。
「じゃあな鷹通、俺は遅刻は御免だから先に行くぜ」
そんな声も聞こえていなかった鷹通は、当然の如く遅刻するのだった。