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第2話

また書きました

†韓信の検索†


数日後、韓信はなんとか楚軍に入隊することができ、最下級ともいうべき雑兵だがしばしば軍団長や師団長へ、自らの意見、作戦等を上奏した。


韓信

「何故だ?もう何回も上奏したのに、まだ北上するのか?」


雑兵

「ケッ!北へ真っ直ぐ攻めたほうが最短距離だろうが!! それに俺達楚軍は強い! 飯は食えるし、女は掠い放題だ!」


韓信

「(馬鹿な野郎だ。このまま北上したら、章邯しょうかん率いる秦軍最強軍団と戦う事になる。勝っても被害損害は多大、その僅かな軍勢で咸陽(かんよう。秦国の都)を制圧出来るはずがない)」


軍団長

「韓信という奴はいるか〜!?」


韓信

「オラ、い、いや私ですが」


軍団長

項伯こうはく様が呼ばれておる、すぐに行け。」


韓信

「へい。」


韓信は自分の検索を見てくれたのか期待しながら項伯の下へ向かった。


韓信

「失礼しやす!韓信、只今着きやした。」


項伯

「おぉぉ、入れ入れ。」


以外に気さくな雰囲気に思えた。


項伯とは、項羽の叔父である。あの癇癪玉で天下無双を誇る甥とはまるで正反対であった。

勿論例え項羽であっても叔父には、どこと無く頭が上がらない少年時代を共に過ごした師に近い様な者であった。

項伯からすればその優越感があり、今日の人物を形成したともいえる。


項伯

「君が韓信か?」


韓信

「?へ、へい?」


項伯

「ふん、やたら検索してくるので机上の虫とやらかと思ったが、案外背が高くて頑丈そうじゃのぅ。」


韓信

「へい、もったいない言葉でやす。おっ母が聞いたら喜びやす。」


項伯

「ンン。御母堂は達者かな?」


韓信

「3年前に死にやした。」


項伯

「なんと。辛かったのぅ。所であの検索はそちが考えたのか。」


韓信

「へい。項羽様はなんて言いやしたか?」


この時の韓信はまるで言葉使いがなってない。しかし項伯はこの頭の良さそうな大男がどこか滑稽に見えた。


項伯

「いや籍(せき。項羽の字)にはまだ見せる訳にはイカン。あやつは受け入れないだろうしな。」


韓信

「そうでやすか。」


項伯

「実は范増(はんぞう。項羽軍団一の軍師)もワシに同じ事を言ってきてのう、そこにそなたのコノ検索じゃ、目に止まったわい。もうちとワシに詳しく話さんか?」


韓信

「では...。」


韓信は項伯に北上する際のメリット.デメリットを事細かく説明した。

項伯は驚いた、范増のソレと全くと言ってイイ程 韓信の検索は一致していた。

范増は熟練された軍師で最高機密の軍略を外部に漏らすはずもない、項伯は韓信を自分の傍らに置こうとしたが彼はなぜか拒んだ。

韓信からすれば項伯など所詮項羽のお目付け役、それどころか自分が項羽をコントロールしていると勘違いした輩なのである。

この様な者の側にいるといつか自分に火の粉が降り注ぐと思った。


†咸陽炎上†


一方、劉邦軍は項羽軍団が北を攻めあぐねている隙に、迂回して抵抗勢力を吸収しつつ、ついに秦国の都咸陽に入城した。


劉邦

「やっぱり咸陽は立派な所じゃ。女の質が諸国とはまるで違うわい。」


蕭何しょうか

「劉邦様、私は祝宴の用意を整えますので失礼させていただきます。」


劉邦

「あぁそうか、お前は相変わらず真面目じゃのう。これだけの女がおるのに見向きもせん!好きにしろ。」


蕭何

「では失礼します。」


この関係が面白い。

劉邦と蕭何は同郷ではあるが、立場は逆であった。

劉邦はコソ泥の親分、蕭何は役人である。

コソ泥の親分である劉邦の貴重な情報を蕭何はうまく活用していた。

さすがにコノ関係はマズカッタらしく、蕭何は劉邦を亭長(ていちょう。最下級役人)に取り立てた。

しかし秦の始皇帝が死ぬと各地で蜂起する者が相次ぎ、立場が悪くなった蕭何らは人気の高い劉邦をその町の主として、自らはその右腕として、今日に至っている。

実に頭が切れる。

逆に劉邦はほぼ何もしていないといってイイ。

彼はいつのまにか名参謀達を支配下に置いていた、まさに天性の人物掌握術を身に着けている。

運がイイとも取れる。


†韓信、共に漢中へ†


間もなく章邯軍を吸収した項羽軍団が咸陽に程近い鴻門こうもんに迫ると、立場の低い劉邦は僅かの側近だけを率い項羽に謁見し、自軍は悪魔でも項羽軍団より下であり咸陽で貴軍を迎える準備を整えていた事を説明した。


それまで激怒していた項羽は劉邦のへり下った態度に気分を直し告げた。


項羽

「あいわかった。劉邦よ、お前は感心な奴じゃ。このままその足で漢中へ布陣し賊を征伐してくれ、その暁には漢中の王を名乗るが良い。」


劉邦

「ははー。」


これを見た范増は項羽の下へ駆け寄り耳打ちした。


范増

「項羽様、あやつを漢中に入れてはなりません。いっそ成敗なされ。」


項羽

「あ?こんな奴をやったら俺様の面子が立たんわ。コイツはこのまま利用した方がイイ。」


范増

「そうでございますか、ならば兵数を限定し、しかも志願者のみとしましょう。如何でございますか?」


項羽

「そこらへんは任せる。」


厳しい条件の中、劉邦は漢中へ逃げる様に向かった。


韓信

「志願者かぁ。范増様もなかなかやるなー。 それを甘んじて受けた劉邦様はもっとやるなー!」


雑兵

「そうかぁ?漢中っていやぁ中原ちゅうげんとは別世界、あんなとこ俺は嫌だね!」


韓信

「好きにすればイイさ。オラ、いや俺は志願するよ。」


韓信は志願し、項羽軍団から劉邦軍へ乗り換えた。

この時項伯は彼を捜したが見付からずついに諦めた。


韓信

「聞くところによると劉邦様はよく意見を聞く人物らしい。それに取り巻きの連中もたいした人物だろう、間違いない。」


韓信は険しい山道を一生懸命行軍し、脱落する事もなくようやく漢中へ入った。


この後項羽は咸陽の宮殿を焼き、墓稜を暴き返す等人々の反感をかった。


この項羽の卑劣な行動は咸陽の民達から猛烈な反感を買い、後に劉邦軍団が東進を行った際、大義名分の一つとなった。


つづく


ありがとうございます

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