第一話
みなさんヨロシクね。
†序章†
「狡兎死して 良狗煮られる」、今まで大事にされた猟犬も、兎が居なくなると煮て喰われる。
西暦前259年、趙に人質となっていた荘襄王の子として都、邯鄲で生まれた者がいた。
後に始皇帝と称されたエイ政である。
その父(第30代)が崩御され、若干13才で第31代秦王となったエイ政は、母(趙太后)や、権臣 呂不韋等の傀儡王であったが蔚繚や李斯等の忠節な権謀術師の活躍で実権を取り戻すと、前221年 当時の国(群雄)を全て滅ぼし史上初の天下統一を成し遂げた。
因みに蔚繚とは
「孫子」、
「呉子」、に勝るとも劣らない兵法書の一つ、
「蔚繚子」の著者である。
李斯は政治経済、土木建築の最高責任者であった。
右に李斯、左に蔚繚、この完璧な布陣は今日でも理想ではないだろうか?
前置きが少し長くなったが、本編の主役は始皇帝ではない、韓信という、武者であるが始皇帝の時代が深く関わるので前途した。
†項羽と劉邦†
項羽、楚(今の香港より北東の辺り)の名門豪族である。
劉邦、沛県(今の中国の真ん中より南東側)出身でその日暮らしの乞食の親分である。
劉邦は人物掌握が上手く、中国でも数少ない平民上がりの皇帝となった大人物である。(あの有名な漢帝国の創始者だよ)
一方、項羽は劉邦と覇権を争うが最後の最後で大惨敗を喫し、この世の人物ではなくなる。
項羽はカリスマ性はあるが人物を信じ切れず、逆に劉邦に離反されたあげく、兵法家の検索をも疑い親族にまで離反された。
対極のこの二人...。しかし劉邦の人物掌握もさることながら、本編の主役 韓信の働きは劉邦その人以上である事は確かである。
†韓信の股くぐり†
韓信、彼は淮陰という地方にいた。
青年時代は一定した職に就かず、使う事もない剣をぶら下げて野良仕事をしている老婆に飯をたかっていた。
韓信
「婆さん、いつもスマンなぁ。」
老婆
「...。」
韓信
「...?」
韓信
「..おらが出世したらこの恩は必ず返すからサァ、明日もたのむよ!?」
老婆
「ヘッ!今日も明日もくいっぱぐれが、出世だって!? だいたい毎日ソコで剣磨いてるだけじゃあねぇの!!チッ!!」
韓信
「...」
韓信
「オラは今、あんたをこの剣で刺し殺す事だって出来るんだ!でもそんな事をする為に磨いてるんじゃネェ。誰かがオラを必要とするその時までは使わネェ!!!」
韓信はこの時少し酔っていた。
勿論泣け無しの銭で買った酒だ、三日目だというのに半分以上は残ってた。元々酒はあまり強くないのだろう...。
翌朝 彼は淮陰市場に飯を漁りに出かけた。
この市場は小規模ながら、”モノ”はある、まがい物の酒、払い下げの○○干し肉、しかし韓信の興味は女と、ソコで募集する反始皇帝連合(反秦帝国)の入軍志望者集めだった。
商人
「いらっしゃい!いらっしゃい!!」
ザワザワ・ザワザワ
楚役人
「始皇帝が死んだ今、秦帝国に何の力があろうか〜!!今こそ!かつての楚王国を復権するべき!!!立ち上がるべきだ!」
韓信
「(馬鹿な!ほざいてろ! オラは楚なんかどうでもイイ。それに秦帝国にはまだ李斯がいるじゃねぇか。あの人恐ぇんだから!)」
犬肉商人
「オイッ!韓信!!」
韓信
「!?」
犬肉商人
「まーた剣ぶら下げやがって。使った事もネェくせに、俺を刺してみろ!」
仲間
「ヒャーッハッ!!旦那、コイツにそんな芸当無理だっつーの!」
韓信
「...。」
犬肉商人
「ヘッ!ならよッ。俺様の下くぐんな!! ならよ、酒奢ってやるよ!!アアーん!?」
韓信
「(今はコイツらに勝てっこネェ!)」
犬肉商人
「ンンっ」
ガサガサッ
韓信
「・・・」
仲間
「ヒャー!旦那!くぐったゼ〜!?」
犬肉商人
「ハッハッハッ〜!オメェ恥知らずカァ〜!?マァイイや、ほらよ、酒だ!でもソレいつのだったっけ???ガッハッハ!じゃあな股くぐりの韓様〜!」
やじ馬
「イヤーね、あの人。韓信っていうの?恥知らずな人...。」
韓信
「・・・」
結局この日、韓信は志願兵になれずまたいつもの老婆の仕事場へと引き返した。
韓信と劉邦はどこか似ている様で似てない。
乞食まではほぼ同じ様であるが、いかんせん韓信には人物掌握の術が欠けていたのかもしれない。
彼はただ貪欲に自信の場を求めていた様にさえ感じる。
劉邦が人物掌握に長けていたのに対して、彼は自分を試す為に後に劉邦の幕下に参加した...。
いわばお互いの利益がソコで一致したともいえる。
補足ではあるが劉邦は韓信や長良=〔劉邦軍参謀〕他、面々等はほぼ好き勝手にさせている。これが後に大問題に発展するのだが...。
つづく
今日もありがとう。