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無
セカイから離れてベッドに戻り寝っころがる。目を開けてもそこには何もない。永遠に白い空間が広がっている。何も無い。空っぽだ。
果たしてこれは夢なのだろうか。夢なら真面目に考える必要はないはずだ。なのに俺は真面目に考えずにはいられない。
「もし俺がその異世界に行ったら、現実世界の俺はどうなるんだ?」
「そうだね。君は元の世界には存在しなかったことになるね。複数の世界に同一の人格が存在することは許されない。世界は君の痕跡を抹消するだろう。親も友達も教師も元の世界の誰もの記憶から君は消える。異世界に移れば君の戻るところは無くなってしまう。そこまでして異世界に行く覚悟が君にはあるかい?」
どうだろうか......。俺は再びまぶたを閉じる。うるさい母親、酒飲みの親父、おっさんみたいなガラガラ声の友達、毎日、放課後にかならず俺を職員室に呼び出す担任。いろんな奴の顔が浮かんでは消えた。
次にまぶたを開けた時にはすでに俺は決断していた。