国
「世界というものは一つじゃない。君の生きている世界の他にも様々な世界がある。ここでいう世界とは、君の知覚の範囲内を指すのではなく、君の存在する宇宙を指す。いわゆるパラレルワールドだ。生命体の存在しないセカイもあるし、物理法則が全く異なるセカイや魔法が実在するセカイもある。僕は 『セカイ』としてそれぞれのセカイを視ているんだ」
微笑みながらこちらを見るセカイの顔は少し影がかかっていた。
「その数あるセカイの中で国というものがない世界がある。正確には国というものの形成に至っていない世界がある。僕としては君にその世界で国を作ってほしいんだ。悪い話ではないだろう?」
悪い話ではないかもしれない。これまでのクソみたいな人生をやり直せるかもしれない。そう思うと最近、夢の中にまで及んできていた未来に対する絶望が少し晴れた。だが、果たして国づくりなどできるだろうか、こんな頭の悪い俺に。
「『優秀な』人間が国を作るんじゃあない。君みたいなやつが作ってこそ国なんだ。別に国を作ってくれというのは僕のお願いであって強制じゃない。君は異世界で新しい人生を送りながら、暇な時に国を作ればいい」