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セカイ
「斎藤くん、目を開けたらどうだい?」
この声は現実世界の声だろうか。それとも夢の世界の誰かの声だろうか。
「とりあえず起きようか、広樹くん」
どちらでもいいや。俺に呼びかけていることに変わりはない。
勢いよく上体を起こすと、そこは真っ白な空間だった。純白であり、無しか存在しない次元。そこにポツンと安楽椅子があり、見たこともない誰がが座っている。だがその服装には見覚えがあった。
「うちの高校の制服じゃんか!」
「君が慣れ親しんでいる服の方がいいかと思ってね」
見知らぬ誰かは俺の目を見てそう言う。なかなかの美少年だった。
どうやら俺は夢を見ているらしいことは明らかだ。こんなアホみたいな突拍子もないことが現実のはずがない。とりあえず、夢だからテキトーに受け答えしておこう。
「ところでお前は誰だ?」
俺の人差し指は『誰か』の方に突き出される。
「僕は誰でもないよ。強いて言うならセカイってとこかな。もしくは君自身と言うこともできるかもしれない」