アロー
「では時間なので終わりにします。」
授業が終わり私は教室を出て訓練室に向かった。
「勉強熱心だな!研究の進捗どうですかぁ?」
向かう途中、ふいに肩を叩き話しかけてきた男は魔学所の中級魔導士、カキナイだった。
「ぼちぼちだよ。そちらこそ、例の男に殺されてるもんだと思ってたよ。」
「ははは、さすがに頭を冷やしたんだろ。あの態度は改めたほうがいいよな。
俺としては、怒り狂って勝負になれば面白かったんだけどなー。」
「さぞ自信がおありなこと。」
「並に魔導士やってねえよ。上級に早く上がりたいぜ。」
「まあ、殺されないように祈っとくよ。」
「どんだけ殺されて欲しいんだよー。まあ、なんとか生きときますわ。」
「じゃあな、また明日。」
「またな。」
別れると、カキナイは組合の方に向かったようだ。
カキナイは中級魔導士のエース的存在で、上級魔導士まで秒読みのとても素晴らしい人物だ。
彼の操る魔法は種類こそ少ないが、
それを極めたことによって巧妙に操る事ができる。彼の魔法の操り方は本当に見事なものだ。
そんな彼を私は目標にして努力している。
私は訓練を一旦終え、図書室に向かった。
今日は本腰を入れて取り組み中の研究に関係ある本を読み漁ろうと思っていた時だった。
「おい!オドリバ!いるか!!」
「だから図書室で大声を出すなと言ってるだろう。迷惑だから本当に控えてくれよ。恥ずかしくないのか?」
「すまん、それより大変なんだ!」
「レスター、いい加減にしてくれよ。それほどに緊急を要するのか?」
「カキナイって奴が、戦闘場で例の男と戦うことになったらしいんだ!そいつ、知り合いだろ!?」
「本当に戦うハメになったのか...わかった、今すぐ行くよ。頼むから次からは静かにしてくれよ。」
私とレスターは図書室をでて魔学所の内の戦闘場に向かった。
戦闘場は円形で、外周りが観客席になっている。普段は模擬戦などに魔導士や組合の冒険者が借りて使うので観客席の意味はないが、
稀に昇級トーナメントやイベントなどが行われ、そういう時に活用される。
そんな観客席は来た時点でほぼ満席だった。
カキナイは中級魔導士のエース的存在。
なぜ戦う事になったかは詳しい事は知らない...まあ知らなくはないが、
そんなカキナイと調子に乗っている話題の男との対決となれば、
見たい人も沢山出てくるという訳だ。
観客が勝負を急かしている様からまだ始まってはいないようだ。私とレスターは始まる前になんとか席に座ることができた。
「にしても、本当にいいのか?ここでやめとけばまだ世間の評価は痛い奴で済むぜ。」
「殺すぞもぶ野郎、かかってこいよ。」
「なんだかよくわからんが、開始でいいか?」
会場は一瞬で静まり、緊張が走った。
「3、2、1、0!」
男は一直線に端からカキナイに向かって走り出した。
カキナイは何もせずその場で静止している。
全く相手の情報がないので相手の出方を見るようだ。
すると走りながら男は何もない空間から剣を取り出した。全く見た事もない魔法だ。
会場がざわめく中、
「やみの剣」
男がそう言うと剣は黒い霧のような何かを纏った。魔法で作り出した武器に魔法をかけて戦う?スタイルなのか、相変わらず全く見た事がない。
そのまま男はカキナイに向かって真上から真下にそれを思いっきり振り下ろした。
「はあ、本当になんなんだお前?戦い方がガキ以下だぞ...」
カキナイは動きを見切りさらりと横に避けると、アローの詠唱を始めた。
男はそれでもカキナイに切りかかっているが、
私でも余裕で避けれそうな剣さばきだ。振るのも遅すぎる。
「アロー!」
「は?舐めてるのか?雑魚呪文じゃないか。」
ああ、あいつは知らなかった。確かにアローは最弱の攻撃呪文だ。だが極めたとなれば話は別だ。
男は受けてもいいと思っているのか攻撃をやめるつもりは無いようだ。
そこに光の矢が放たれた。
見事に腹部に命中したが流石にこの程度の呪文ではダメージは少ない。
が、カキナイはダメージでは無くノックバックに用いた。
命中した瞬間男は馬にでもはねられたように吹っ飛びアリーナの壁に激突した。
壁に傷はつかないようにできているが、当然飛ばされた本人はダメージを受ける。
相手の体勢が整う前にすかさずカキナイは次のアローを唱えた。
「そこから動くなよ。壁が定位置なんだから。」
「クソ、ミレイ!」
男がそう叫ぶと、
放たれた矢は空間中の何かに命中したようだ。
そして突如その空間から男が連れていた女が現れた。
「死ね!」
女はこの間受付に向かって出していた謎の物体を取り出しカキナイに向けた。
「ちっ、性根まで腐ってんのか!汚いぞ!うーん、オドリバ!来てくれ!2対
ドン
そう鈍い音が女の持つ物から響き、
何故かカキナイは倒れた。
「死ね!もぶが!」
そう言うと男と女は謎の空間に消えた。




