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暗殺少女のPK活動記  作者: 星粒遠
10/15

6話

「すいません!本当にありがとうございます!」


 なるべく早く走れるように装備を外したのか、素手で走ってきた男が頭を下げる。


「リグ君かな?」

「そうですね、掲示板と同じ人であってます」


 一応の確認を取るとシアは立ち上がる。

 もう休憩も充分に取ったことだし、夜狩りの再開だ。


「PKされたのに感謝されるかぁ……」

「ん?」


 小声で呟いたつもりだったが、消音の効果で聞こえたらしい。

 意外な、しかしよく考えれば当たり前の弱点に気付いたシアは状況に感謝する。


「いやぁ……画面ならともかく、VRでPKって嫌われそうじゃん?」

「そう……ですかね?VR初心者ならともかく、どっぷり浸かってる人は嫌わないと思いますよ?怒りはすると思いますけど……このゲームは運営からデメリットあるって言われてますし、尚更ですね」

「そんなもん?」

「そんなもんです」

「へぇ〜」

「さて……と。これお礼です」

「ん?」


 テントをインベントリに仕舞い終えたリグは、逆にインベントリから何かを取り出す。


「何これ」


 渡されたのは巻物だ。


「組合の利用が出来ないみたいですし、テントのこと知らなかったってことは覗いてもないんでしょうから」

「まぁ確かに……どれどれ」


 名前:スキルスクロール『二刀流』

 用途:スキルの取得

 説明:条件を満たしている時、スキル『二刀流』を獲得できる。


「おぉ!こんなの売ってるんだ!」

「やっぱり知らなかったんですね……片手武器の近接プレイヤーの目標にもなってるアイテムなんですが……」

「ありがと〜!でも目標になるくらいなら結構良い値段するんじゃないの?」

「まぁテント4つよりは安いですよ。それに僕も、固定PTの3人もシアさんと同じ社会的に嫌われる人ですから」

「私は廃人じゃないです」

「動きが間違いなく廃人なので言い逃れ出来ません」

「はい」

「ちなみに条件ですが、多分Lv20以上で2つ以上の武器術改です」

「ソースは?」

「僕のPTメンバーの取得出来た状況からです」

「それなら大丈夫だね」

「では僕はこれで」

「あ、1つ聞きたいことが」


 シアの言葉にアルヴィーンの方角へ脚を向けていたリグが振り返る。


「なんでしょう?」

「この岩、ランドマークだよね?」

「ですね、ゴーレムですよ」

「スキルチケット貰えた?」

「いいえ?というか貰え……あ〜、一番初めに倒した時ですか?」

「そそ、まぁ貰えないならいいか」

「安全圏いいんですか?」

「まぁ訳あってね」

「そうですか?んじゃ、それでは」


 そう言うとリグは歩きだす。

 その背中に向かって、シアは問いかける。


「死に戻りした方が早くない?」

「それでは!!」


 リグは走って岩山を下っていった。


「さて……」


 早速シアはスクロールを使ってみることにする。


「これはどう使えば……おぉ」


 巻物を開くと、スキルを取得するかどうかの選択が浮かぶ。

 当然Yesだ。


『スキル「二刀流」を獲得しました』

 二刀流Ⅰ

 ・両手に1つずつ剣を持っている時のみ全てのスキルを強化する。ただし、与えるダメージを大幅に減少させる。


 かなり強力なスキルのようだ、ランクも上位スキルとなっている。

 強力な分、デメリットが大きいのも頷ける。

 スキルを獲得すると、スクロールは青白い炎に包まれて消えていった。

 なんとも粋な演出である。


「このスキル、あんまり役には立たないよねぇ……」


 そう、シアのプレイスタイルは手数による連続攻撃ではなく、ハイド&キルなのだ。

 両手で短剣と長剣を握ったのは先程の強襲が初めてである。

 2つを使い分けているだけで、同時に使用はしていないのだ。


「う〜ん……要らないか」


 迷えば即決、シアはスキルから二刀流を削除する。

 少し申し訳ないとも思うが、持ち前の前向きさですぐに気を取り直し、シアは夜の闇に消えていった。

 ちなみに、削除したスキルはレベルⅠで覚え直すことは可能だ。



 ─────



「んぐっ」


 心臓を短剣で突かれた男が、声を漏らして消えていく。

 後に残るのは、所持者が死んだことで火の消えた松明のみだ。


「松明使ってると、場所が分かりやすくていいね」


 遮るものの少ない岩山で、松明の明かりは良い目印になる。

 それに、松明を使っているプレイヤーは総じて暗視を持っていないか、低レベルのようなのだ。

 視線がこちらを向いても気付いた様子が無い。


「これなら昼間のやつ、リベンジ出来るよね」


 相手の位置がすぐに分かり、かつこちらを見られる心配は少ない。

 となれば、昼間に達成出来なかった5人という目標に、もう一度挑戦するのも悪くはないだろう。


「よ〜し、んじゃ……」


 周りを見渡し、適当な明かりを見つけるとそちらへ向き直す。


「行きますか」


 シアは闇の中を明かりめがけて駆け出す。

 全くこちらに気付かないプレイヤーは、しかし静かな闇から聞こえる足音に気付いたのか、既に近くに居たシアへと振り向く。


「えっ?」

「惜しい、バレた」


 シアは止まることなく男の右を高速で駆け抜ける。

 もちろん、長剣で男を両断しながらだ。

 不思議そうな声を上げた男は、最後まで何がそこに居たのかもわからないまま死亡する。

 振り抜いた剣を戻すことなく、右に下げた姿勢のままシアは次の明かりへと走る。


「でさ〜」

「へぇ〜」

「はいごめんね〜」


 何かを会話していた男女の2人組は、真正面からいきなり現れたシアに反応出来ない。

 シアは右下から左上へ斬り上げ、右側にいた男を斜めにスライスする。

 跳ね上がった剣の位置は左側で、いまだ呆然としている女の真上だ。

 すぐさま刃を縦にすると、両手で柄を握り勢い良く振り下ろす。

 体を左右に両断されるように赤いラインが入り、女はすぐさま男の後を追う。


「次」


 シアは短く言葉を発すると、再び走り出す。

 次の明かりに居るのも2人組、ただし今度は両者とも男だ。

 そして、背後から迫るシアに気付く様子は無い。

 気付かれることなく剣の間合いまで近付いたシアは体を左に捻りながら、大きく踏み込む。

 踏み込む音に気付いたのか、振り返ろうとする2人だがもう遅い。


「おっりゃあ!」


 可愛げなど無視した気合の乗った声とともに、左から右へ一閃。

 まず始めに一瞬の手応えの後、剣が重くなる。

 剣が一瞬だけ軽くなったと思えば、再びの手応えと訪れる重さ。

 2人まとめてぶった斬ったシアは満足そうに頷いて足を止める。


『スキル「背面攻撃」のレベルが上がりました』

 背面攻撃Ⅴ→Ⅵ

『スキル「疾走」のレベルが上がりました』

 疾走Ⅳ→Ⅴ

『スキル「一撃必殺」を獲得しました』

 一撃必殺Ⅰ

 ・一定以上の威力を持つ攻撃を強化する。スキル『即死耐性』を一定確率で無効にする。一定以下の威力での攻撃を弱化する。

「おぉ?」


 どうやら二刀流と同じく、初めから上位スキルのようだ。

 ちなみに、説明文から即死耐性の効果も読むことが出来た。


 即死耐性

 ・一定確率で即死攻撃を無効にする。受けるダメージは無効にならない。


「ふむふむ、森の男が即死しなかったのはこれか」


 以前に森で心臓を貫いたにも関わらず、即死しなかった男のことを少しだけ疑問に思っていたが、これで解消された。


「上位はだいたいデメリットあり?何でもかんでも出来ないようバランス調整かな」


 例えば二刀流と一撃必殺では両者とも活かした共存は難しいだろう。


「ま、良いけどね」


 何が良いのかは分からないが、シアは取り合えずそういうことにしておく。


「さて……使い心地を試してみましょうかね」


 軽く伸びをしたシアは再び闇に紛れていく。



 ─────



「一撃必殺さいこ〜……」


 空が薄明るくなってきたころ、シアは適当な岩に腰を掛けていた。

 ちなみに、腰を掛けている岩は大きな蜥蜴のモンスターだったりするのだが、襲われる気配はない。

 遠くで岩に擬態する瞬間を見て近付いたのだが、触れても反応が無いので腰を掛けさせてもらっている。


「ラニア良い……私このゲームなら廃人になってもいい……」


 既にプレイ状況は一般プレイヤーから見れば廃人のそれなのだが、廃人には常人とは違った基準でもあるのだろうか。

 さも自分はまだ廃人では無いかのように呟く。

 そして、シアがここまで幸せそうなのには勿論理由がある。


 少し前に、寝る前に最後の1人にと襲ったプレイヤーの装備が、フルプレートの全身金属鎧だったのだ。

 流石に襲うのは少し躊躇したのだが、見た感じ動きが遅く、逃げるのは簡単だろうからと襲ってみたのだ。

 結論から言えば男か女かは分からないが、このプレイヤーは即死した。

 後ろから近付いていったのだが、フルフェイスで視界が悪く、自身の発するガチャガチャとした金属音で足音も聞こえていないようで全く気付かれる事なく背後を取ることができた。

 後は簡単だ。

 いつも通り、捻った体を利用して剣を一閃。

 金属鎧など無いかのように振り抜かれた剣は、その勢いのまま手から離れて遥か遠くへ飛んでいってしまった。

 すっぽ抜けてしまった剣を慌てて拾いに行ったところで、擬態する大蜥蜴を見付け、好奇心から近付き、何も無いと分かったところで先程の金属鎧を斬り裂いたことを思い出した、というわけだ。


「廃人と言えば課金、寝る前に課金アイテム覗こう」


 あながち的外れでもない事を言うと、シアはメニューから課金アイテムの項目を探し出す。


「ん〜……自動蘇生薬、最大回復ポーション、経験値ブースター……お?」


 シアの視線の先にはこのようなアイテムが表示されている。


 名前:カラーパレット(赤)

 用途:装備の色変更

 説明:装備の色変更の際、赤色を選択できるようになる。

 値段:500BIL(ビル)


 他にも青と緑と白と黒の4色もあるので、5色全てを購入すれば様々な色が作れると言うことだろう。

 色の他に、光沢もあるのは珍しい。

 5色セットで2200BILで販売している。

 光沢はセット販売はないようだ、1つ500BILで販売している。

 100BILが100円なので、2200円だ。


「お〜。良いのあるじゃ……ん?」


 名前:カラー変更チケット(5枚入)

 用途:装備の色変更

 説明:選択した装備を色変更出来るようになる。※選択された装備は恒久的にカラー変更が出来るようになります。※別売りのカラーパレットが必要となります。

 値段:300BIL


 10枚入550BIL、20枚入1000BIL、50枚入で2250BILも販売している。


「えぇ……P2Pなのに結構良い値段……」


 LOは月額1500円の基本プレイ有料だ。

 基本プレイ有料のゲームは大体の場合が課金アイテムは安かったりするものだが、どうやらLOは違うらしい。


「ん〜……買っちゃえ」


 結局、シアは5色セットのカラーパレットと光沢パレット、カラー変更チケット50枚入を2つ、合計で7200BILの買い物を済ませる。


『購入ありがとうございます、購入されたアイテムの詳細はヘルプよりお確かめ下さい』


 シアはヘルプを無視すると、早速メニューに追加されているカラー変更を選択する。

 装備のカラー変更とカラー変更チケットの使用、の2つの選択が出たのでカラー変更チケットの使用を選択する。

 アイテム欄にあるカラー変更チケット未使用の装備、この場合は薄羽の短剣と長剣、弓、現在装備している防具全てが出てくる。


「そういや弓あったなぁ……」


 弓の存在をすっかり忘れていたことに呆れつつ、弓を除く6つを選択。

 残りチケット枚数が100枚から94枚に減る。


『選択した装備がカラー変更出来るようになりました』


 続いてカラー変更を選択。

 すると、シアのインナー姿が3Dモデルで浮かび上がり、装備を選択できるようになる。

 どうやら、客観的に見ながらそれぞれの装備の配色を弄っていけるようだ。

 武器も防具も、いかつかのパーツ毎に配色が可能となっているらしい。


「さて、黒と白で……あれ?赤青緑買う意味合った?」


 どうやら無駄な買い物をしたらしい、お金があるとはいえ無駄な買い物はしない主義のシアは少し落ち込む。

 が、すぐに復帰するとモデルに防具を付けていく。


「取り合えず、こことここは黒で、ここは白……」



 ─────



「こんなもんかな」


 だいたい10分ほど色を弄っていたシアは満足したように頷く。

 短剣と長剣は共通で、刃は黒く柄は黒に白いラインだ。

 防具も黒をベースに白を少し加えている。

 肌色を除けば目も髪も装備も、何もかも黒と白で統一された見た目だ。


「あ〜……寝よ……」


 シアは日が登ってくる方角を確認すると、岩の影になる側へと移動して睡眠を取る。

 ちなみに、確かにどこでも寝ることは可能だが、普通は寝やすく安全な場所を選ぶ。

 とはいえ、これも慣れれば意外と悪環境でも寝れるようにはなるのだが。

少し前に装備詳細で色を説明した意味が無くなりましたね。廃課金プレイはさせません。ビジュアル面での課金は惜しまないプレイヤーも多いのでは?─線の前後の改行を1行から2行に変更してみました。


12/11 掲示板2でクロスとリグが途中から入れ替わっていたので修正、それによって6話の冒頭キャラをクロスからリグに修正

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