虹の女神アイリス。
涼風が気持ち良い…
ボクの頬を優しく撫でて行き過ぎる。
川面に映つる月光が時おり吹く風に揺れる。
メダカの群れが一団となって
あちらこちらと忙しく動いている。
ボクは川辺を歩き海を目指した。
この碁盤の目の様な町は交差点へ来ると
遥かに山向こうまで見通せる。
風通しがよい平地を行き過ぎる風。
明け方なら雀や目白などの小鳥たちが
陽気な鳴き声を聞かせてくれる。
しかし夜明けまでは少し間があるようだ。
ふと先程、曲がった角に目をやると……
長い髪の美しい女性が白いレースの衣に身を包んで立っていた。
ボクが歩き出すと彼女も歩きだした。
一定の距離を取り、離れず近づかず…
彼女も、海辺へ散歩なのかな。
気になったが、そのままボクは海辺をを目指した。
昼間なら水平線が見える小高い丘の上に着いた。
まだ真夜中なので星空。
オリオンの三連星やスバル星等が輝いている。
ボクはポケットからお気に入りの
使いふるされたオカリナを取り出した。
【星に願いを~♪】
オカリナの透き通った音色が夜の海へ響く。
すると、どこからかピアノ音色が聞こえてきた……
丘の上の柵から身を乗り出し辺りを見回すと
白い砂浜に白いグランドピアノ。
海風に長い髪をなびかせ微笑む美しい女性。
星の光を受けて七色に輝くペンダント。
彼女の奏でるピアノの音色は、まるで天使の囁きのよう。
彼女の曲に合わせてボクもオカリナを奏でる。
お互いに初対面なのに……息がピタリと合う。
この不思議な感覚はなんだろう?
ボクに優しく微笑みかける彼女。
彼女の周りを虹のような光が包む。
昔、物語りで聞いたことがある。
天と人の架け橋。
虹の女神
【アイリス】
ボクは一目で君に恋をしたよ。
君と話がしたい……
ボクは丘の上から
下の白い砂浜へと続く長い階段を降りた。
………………
砂浜へとたどり着いた時
既に君の姿も、あの白いグランドピアノもなかった。
ボクは夢を見ていたのかな…
ふと足下を見ると
星と虹が刻印されたペンダントが落ちいてた。
彼女からのプレゼント…ボクの宝物にするよ。
また、会えるよね。
…きっと
海に向かいオカリナの音色を響かせた。
遠くの夜空に流れ星が1つ。