ああ、初恋よ。さようなら。
初投稿です。ただの、自己満足です。
私、鈴鹿美玲は物心がついた時から2つ上の高橋優二様のことを慕っておりました。
私が婚約者となれた時など、泣いて喜んだほどです。
しかし、最近の優二様には不信感しかなく。そして今、もう、愛想が尽きてしまいました。
「美玲、君との婚約を解消する。俺が愛しているのは君ではない。君のことは妹として可愛がっていたつもりだが、…調子に乗りすぎたな。彩乃に手を出す等馬鹿な真似をよくもしてくれたものだ。金輪際俺達に近づくな。」
「…………はぁ。」
思わず溜め息が漏れてしまいましたわ。優二様の片眉がピクリと動き、口が開く前にスマホを取り出します。
「おい!!この状況がわかっているのか?!」
「静かにしてくださいませ。あ、おじ様?はい。今、優二様から婚約破棄すると言質をいただきました。はい。はい。わかりましたわ。」
「…誰と話している?」
通話終了ボタンを押して優二様と先程から優二様の腕に縋りついている彩乃さんを見つめニッコリ笑った。
「優二様のお父様ですわ。」
「!?何故、父に!?」
「何故って…私達の婚約破棄というものは両人だけですむものではないでしょう?もうすぐ優二様のお父様の代理人の方がいらっしゃいますわ。このような観衆の前で婚約破棄なんて本当はしたくありませんが…優二様がこの場所を選びましたから仕方がありませんわね。」
「ふん。見せしめにもなっていいのではないか?これより先、彩乃に手を出す等馬鹿な真似をするものがいなくなるだろうからな。」
「そうですわね、」
嫌味の応酬に周りの空気がギスギスしだした頃、彼が現れた。
「お待たせ美玲。」
「いいえ。大丈夫ですわ。」
「代理人…て、何故兄さんが…。」
「久しぶりだね。優二。」
「は、はい。ご無沙汰しております。」
優二様の代理人として現れたのは優二様の6歳上の喜一様。異例の若さでご実家の家業と別に独立した会社を立ち上げ最近では海外でも活躍している方。
そんな喜一様に優二様は幼い頃から嫉妬をし、それ以上に憧れを抱いているらしいのです。
「あの!!私、花宮彩乃といいます!!」
今まで黙って優二様にくっついていた彩乃様が、優二様を押し退けて喜一様に話しかけ始めた。
「ふうん…君が。」
喜一様の目が細められる。冷ややかな視線。
彩乃様はそんな様子に気づいておられない様子。優二様は二人の温度差に顔を強張らせている。
「あ。これ、美玲と優二の婚約破棄の書類。慰謝料はそちら側の言い値を払うから遠慮なく書いてって父が言っていたよ。その分優二の通帳から出すらしいから。」
「は?!なんでこちらが慰謝料なんて払わなければいけないんだ!?」
「…当たり前だろ。こんな人がいる前で婚約破棄をして。しかも、その理由がお前の浮気。ちなみにその隣のお嬢さんにも慰謝料請求できるからね。がっぽりもらっちゃえ!!」
「はぁ!?なんで私が!?」
「彩乃は被害者だぞ!!美玲に虐められていたんだからな!!むしろ、慰謝料もらうのは彩乃だろ!!」
「?美玲がその娘に何をしたっていうんだ?」
「それは、悪口だったり、服を切られたり、そう!!この前なんか階段から突き落とされたんだから!!」
見てよ!!とばかりにガーゼのついた腕を見せてくる。
「ふーん。そう言うならこれ見てみなよ。」
スッと出されたタブレット。そこには、一人の女子がキョロキョロと辺りを見渡したかと思えば、勢いよく"自分から"階段を転がり落ちていく映像。
「ねぇ。これって誰に押されたの?俺には誰もいないように見えるんだけど。むしろ、自分から転げ落ちたようにしか見えないんだけれど、君には誰かが…美玲が押した様に見えたのかな?」
顔面蒼白になる彩乃。優二はその映像を目を見開いて見つめている。
「それは…、私の気のせいだったみたいです。ただ、足を滑らせて転がり落ちただけかもしれません。で、でも服は?!服が誰かに切られたのは確かだわ!!」
「そ、そうです!!服が実際に切り刻まれているのは俺が確認しました!!」
「優二が見たのは切り刻まれた服だけで、美玲が切り刻んでいる所を見たわけではないんだろ?まぁ、僕も監視カメラではその犯人を押さえることはできなかったけど。…一体いつ、その犯人は花宮さんの服を盗んで切り刻んで戻したんだろうね?」
「それは、きっとこの女が!!」
「君は…どうしても美玲を悪役にしたいらしいね。なら、この件もはっきりさせよう。」
「はっきりって、兄さんは誰が犯人か知っているんですか?」
「いや。だいたいの予測はついているけど。僕が犯人を突き止めるのはむずかしいだろうね…だから、警察に頼もうと思う。ちょうど警察関係者に知り合いがいるから頼むよ。僕達素人がするより確かだろ?」
「兄さんの知り合いなら安心ですね。彩乃、よかったね。」
「っ…やめて!!!バカじゃないの!!そんなことしたら…」
青ざめた顔で叫び出す彩乃様。
「そんなことしたら…ばれちゃうって?」
クスクス笑う喜一様。
「全然ストーリーと違うじゃない!!…だいたい喜一様がどうして悪役の味方なのよ!!」
「彩乃??…まさか、本当に…」
「触らないでよ役立たず!!」
優二様が伸ばした手は彩乃様に叩き落とされました。呆然としている優二様を置いて彩乃様はこちらに向かって走ってきます。
その瞳は私だけを見つめ、憎しみで染まっていました。私に手が届く寸前、
その手を払いのけ彩乃様の胸元に手を伸ばし、払いをかけ背に乗せそのまま
「おー綺麗に一本決まったね!!」
床に叩きつけられた彩乃様はどこからか現れた黒服の方達に連れていかれました。
「さて、美玲。どうせこの後は休校になるだろうから一緒にご飯食べに行かない?父も仕事を早く終わらせて合流する予定だからさ。」
「行きますわ。」
「よっし。じゃあ行こうか。ああ、優二は来なくていいよ。父の会社の引き継ぎの話だから優二には関係ないしね。」
「あら。喜一様の会社と合併させるんですの?」
「いや、いまのところは合併はしないかな。僕が立ち上げた会社は将来的には美玲に引き継いでもらえたら嬉しい。もともと、あの会社美玲のために立ち上げた会社だし。美玲が昔からしたがっていた仕事の基盤は作ったつもりだからあの会社をどう仕上げるかは美玲次第ってところかな。もちろん、無理にとは言わないよ。美玲自身で立ち上げたいならあの会社は合併させてしまえばいいし。」
「喜一様…私の夢覚えていてくださったんですか。」
「もちろん。優二は女が仕事を、ましてや会社の経営なんてと思ったみたいだけれど。僕は、その話を聞いて美玲に惚れたんだよ。」
「兄さん!!ちょっと待ってください!!父の会社を継ぐのは俺では…!!」
「今回の騒動で父はお前を後継者として相応しくないと判断したんだ。僕には僕の会社があるから今までは断ってきていたけどね。でも、今回のことでそうも言ってられなくなったし、…僕が引き継ぐ変わりに美玲との婚約をする権利を貰ったんだ。」
「兄さん…美玲は俺の婚約者ですよ?」
「『元』だろ。美玲…後で正式に申し込むつもりだったんだけど。…会社のことは別として。僕と結婚を前提に付き合ってください。生涯美玲一人を愛すると誓うよ。」
「こんな、こんな私でよろしければ、喜んでお受けいたします。」
「美玲!!」
涙を流し震える身体を喜一様は強く抱き締めてくださいました。
優二様に冷たくされてからずっと…いえ、きっと昔から私のことを気にかけて支えてくださっていた喜一様。いつしか、喜一様に惹かれ始めていました。
私は優二様の婚約者だからと抑えていましたが。まさか、喜一様も私のことを。嬉しすぎますわ。
幸せに浸りながらふと気がつきました。視界の端には絶望した顔で立ち尽くす優二様が見えました。そんな優二様を遮るように瞳を閉じて喜一様の胸に額をよせました。
ああ、初恋よ。さようなら。
ざまぁ感は出ていたでしょうか。
とりあえず今回ので投稿の感じが掴めたので…R18にもチャレンジしてみたいですね。ワクワク←