誘うまなざし(文字数制限無しお題小説)
お借りしたお題は「誘うまなざし」です。
「何見てるのよ!」
目の前を歩いていたミニスカートの女性にいきなり詰め寄られた。
「え?」
僕は今日もバイト先で小言を言われて項垂れて歩いていただけだ。
女性は僕が自分の脚を見ていたと勘違いしたらしい。
「嫌らしいわね! 近寄らないで!」
何も反論できない剣幕だった。いや、反論していたらもっとややこしい事になっていたかも知れない。
何とか動揺を抑える。
周囲の視線が気になったので、歩き去った女性とは違う道を選んだ。
「ふう」
思わず溜息を吐いてしまった。
「どうしたの、溜息なんか吐いて?」
どこかで聞いた事がある声がした。
ふと顔を上げると、目の前に同じ学部の三小瀬亜華莉さんがいた。
同学年の男子達の憧れの存在だ。僕には接点が全くないはずなのに何故声をかけて来たのか不思議だったので、何も言わないでいたら、
「何よ、無視? そんなに私の事、嫌い?」
三小瀬さんには悪い噂が立っている。次々に男を乗り換えているというのだ。
だから、彼女の誘惑するようなまなざしに抵抗できない。
「そんな事ないよ。只、僕、三小瀬さんと話した事ないから……」
俯いて彼女の視線を避けようとしたら、今度はさっきの女性よりも短いスカートが視界に入って来た。
「やっぱり貴方、脚フェチなのね? さっきもミニスカートの女性の脚を見てたでしょ?」
三小瀬さんが言う。否定したいところだが、脚フェチなのは全くその通りなので何も言い返せない。
僕は女性の脚を見るとドキドキしてしまうのだ。
「いいわよ、好きなだけ見て」
三小瀬さんは僕を引っ張って建物の陰に引き込んだ。そして、スカートの裾をゆっくりと上げていく。
思わず唾を飲み込みそうになった。
「もっと見たい?」
流し目で僕を見る三小瀬さん。理性が吹き飛びそうだ。思わず頷いてしまった。
三小瀬さんはクスッと笑い、更にスカートを引き上げていく。
あと数センチで下着が見えてしまいそうだ。
「おっと、ここから先は有料だよ」
そう言って三小瀬さんの背後から男が現れた。
そいつは今彼女と付き合っていると噂されている一学年上のラグビー部員だ。
「パンツ見たけりゃ一万円出しな、変態ヤロウ」
ラグビー部員は僕と三小瀬さんの間に立ちはだかって命令口調で言い放った。
「ちょ、ちょっと待ってください」
僕は鞄の中をゴソゴソと探した。
「早くしろよ」
ラグビー部員が顔を近づけて来た。
「ほらよ!」
僕は鞄の中に隠し持っていた鉄アレイでそいつの鼻を思い切り殴った。
「ぐわあ!」
ラグビー部員は鼻血を噴き出しながら仰向けに倒れた。間髪入れずに馬乗りになる。
その向こうに引きつった顔の三小瀬さんが見えた。
「もっとスカート上げてください」
僕は右の口角を吊り上げ、鉄アレイでラグビー部員の腹を何度も殴りながら三小瀬さんにお願いした。
「は、はい」
三小瀬さんは震えながらスカートを上げていく。彼女の奇麗な内腿を尿が流れ落ちていた。
相当怖いみたいだ。悪い事をしたかな?
今日は理性を保ったまま帰宅したかったのに。
この筋肉バカのせいで、またやっちまったよ。
僕は血塗れの鉄アレイを更にラグビー部員の顔に叩きつけながら、自分の短気さに呆れた。
ちょっとスプラッタでした、ごめんなさい。