5話
スーパーへ着く。
よくテレビとかで見るようなスーパーだ。
野菜と魚と肉が一緒の店にある。
こっちなら普通なのかもしれないが、田舎から出てきた私にとってはけっこう異質な光景だ。
わたしが驚いていると、
「そんなに田舎なの!?」
と逆に驚かれてしまった。
バーさん田舎に来た事無かったのか。
まあ、喧嘩別れならそれも納得か。
「じゃあ慣れるためにもお手伝いしてもらいましょうか。」
「ん?」
「玉ねぎとシーチキン、買ってきて。」
「え~」
「文句あるならご飯抜き。」
「・・・はい。」
バーさんが頭角を著しはじめたか。
今一瞬スパルタ色が見えたぞ。
そんなわけで、嫌々言いながらも玉ねぎとシーチキンの捜索大冒険が始まった。
テッちゃんは早々にビールを探しに行ったので頼れない。
まず、シーチキンから探そう。
・・・。
・・・・・。
・・・・・・・。
シーチキン何処?
「おばーちゃ・・・ん?」
消えた。
いくらタイムセールだからってそんなに急がなくても良いのに。
・・・・・・どうしよう。
いきなり迷子になってしまった。
案内板を探すか。
いや、これ以上事態を深刻化させそうだ。
やめておこう。
店員さんに聞くか。
・・・・・・いない。
誰かに聞くか。
・・・誰に?
周りを見回すと結構な人がいる。
でも大人ばっかりだ。
この年になってシーチキンの場所なんて聞けない。
別に聞けない理由はないけど、この年特有の羞恥心が許さない。
かといって、誰かに聞くしかどうしようもないし・・・。
などと困っていると、
「どうしたの?」
突然声をかけられた。
声の主は同年代くらいの女の子。
髪はロングで優しそうな感じ。
この人になら聞いても大丈夫そうだ。
「シーチキン、探してるんだけど・・・」
「ああ、シーチキンならあっちの方にあるよ。」
「あ。・・・・・・ありがとう」
彼女の指さす方には、「缶詰」と書かれた看板がぶら下がっていた。
最初から冷静に探せばよかった。
変な奴だと思われただろうなあ。
「看板見れば大概のものは書いてあるよ。」
「ありがとう。・・・えと、ごめんね?」
「いやいや。こっちから声をかけたんだし。引っ越したてとか?」
「う、うん。実は今日来たばっかりで。」
「そっか。このへん?」
「うん、まあ。」
「じゃあ同じ学校だね。私、相田優李っていうの。よろしく。」
「あ、うん。よろしく。」
「名前聞いてもいい?」
「え?ああ、そうだよね。英和っていうんだ。」
「はなぶさ?」
「うん、英語の・・・・英って書くんだけど・・・。」
「えい・・・・わ?」
「うん。」
「辞書みたいな名前だね!」
うぐッ。
満面の笑みで言われた。・・・・ショック。
「じゃあ私そろそろ行くね。和ちゃんも買い物しないといけないだろうし。」
「あ、うん。ありがとう。」
「じゃあまた学校でね!!」
バイバーイ!と手を振って彼女は店から駆けて出て行った。
邪魔しちゃったかな?
と申し訳なさを抱きつつ、私は缶詰コーナーへ向かった。
相田さん?優李ちゃん?
学校で会ったらなんて声をかければいいだろう?
そんなことを考えていたらテッちゃんが現れた。
「お、和。ビールってどこ?」
どうやらテッちゃんも同じ状況のようだ。
「看板見れば大概のものはかいてあるよ。」
私はそう言って「酒類」の看板を指差した。
ドヤ顔で。