第6話
王都に向かって進撃中。 道中の様子を簡単に、あとは主人公のお世話をしてくれるメイドさんについて少々。
ちょっと丁寧目に描写しているので、読んでやってくださいませ。
さて、もうそろそろ自領を出発しないと後宮での入所式(?)に間に合わないと言うことで、習いかけだった薬草学の教師、顔馴染みになったメイド2人と共に馬車に放り込まれ、揺られる事1ヶ月。
いくら広いとは言え所詮は馬車、拵えられた簡易寝台は相応に狭い。
寝返り打って床に落下するくらいなら外で寝かせろという主張が通るはずもなく、その窮屈さは王宮に続いたのである。
途中、馭者に食って掛かったら馬の飼い葉代と最低限の食糧しか持たされておらず、宿など土台無理なのだと白状された。
何とまぁ、開いた口が塞がらなかった。
お母様は何処まで行ってもお母様である。
そんなこんなでふて腐れた謡子をあの手この手で宥めてくれたのが、同行したメイドだった。
メイドの1人、カリーノはその名の通り『可憐な』と言う形容詞がよく似合う、小柄で華奢な可愛らしい女の子である。
よほど特殊な性癖の男で無ければまず手が伸びるだろう、容姿に健気さ。
謡子とて、男に生まれていたら真っ先にアタックしただろう。
普通ならその出来すぎ具合が鼻につくものだが、生憎彼女は天然。
悪気もないので同性にも好かれると言う、稀有な才能の持ち主だった。
そんな彼女に、「あぁっ…お嬢様の御気分が優れぬのも私が至らぬせい、どうかお怒りはこの私に…!」等と涙ぐまれては、うっかり眉間に皺も寄せられない。
上手いこと操縦されている気もするが、そこは気にしたら負け。
可愛いは、正義である。
もう1人、スフォルツォーゾは「貴女何でメイドなんてやってるの。」と初対面の謡子をして言わせたある意味規格外の淑女である。
はっきりとした目鼻立ち、メリハリの効いた体型、優雅な仕草、豊かな教養。
にわか仕込みの自分より、よほど貴婦人として様になる。
初対面の人間には些か不躾なその問いかけに、当の彼女は小首を傾げて問い返した。
気になりますか?と。
うーん、その返しは予想外…と返事に詰まって腕組みした瞬間。
「ちょっと来てくださいますかお嬢様ーっ!」
何処から走ってきたのあんた、はしたなくてよ…とか言いたくなる勢いで爆走してきたカリーノに引き摺られて、謡子は自室に叩き込まれていたのである。
ぜーはーぜーはーと真っ赤な顔で息を整えるカリーノはいつもの可愛らしさとは程遠い危機迫った表情を浮かべていた。
「お嬢様っ、スフォルツォーゾさんの素性を面と向かって訊ねるとは…!」
自殺願望をお持ちなのですか!?
鍵を掛け、扉につっかい棒を差し込み、椅子と机でバリケードを拵えた後、ベッドに謡子を腰掛けさせ、自身も残った小椅子に腰掛けた彼女は真剣な顔つきでそう呟いた。
「は?単に美人で作法もきちんとしてるから、にわか仕込みの私よりよほどお姫様に向いてるなと思っただけなんだけど…」
「そうでした、彼方からいらっしゃったお嬢様はご存知なかったんですね…わかりました、1度しかお話し致しませんから覚悟を決めてお聴き下さいませ。」
びくびくと震えながら、彼女が話してくれたのは以下のような顛末だった。
短くてごめんなさい。 次はスフォルツォーゾさんの過去編完結。




