第24話 決意と結果
スーパーに買い出しに行った俺達だが道中で俺の実妹、
中岸愛莉を目撃してしまい俺達は回れ右するかの如くその場を後にした。
別方向のスーパーで買い出しを済ませた俺達はそのまま帰宅したが後を付けられてないか注意をはらいながらの帰宅なのでヘトヘトだ。
安心もつかの間、俺は自分の中でずっとくすぶらせていた事を秋菜さんに話す事とした。
恐らくこれは後回しにしたり逃げたりしてはいけない事だと自分でも自覚していたからだし、そんなのは俺の事を好きだと言ってくれた秋菜さんに対して失礼だと感じたからだ。
「秋菜さんに聞いて欲しい話…いや、聞いて貰わないと駄目な話があるんだ。」
「……そう…。」
「秋菜さんは俺が強いってよく言うけど俺は自分が強いなんて思った事は無い…少なくとも強い自分なんて何処にもいないと思ってる…俺の強さなんてハリボテなんだ。」
「そんな事無い…貴方は強いわよ、私は貴方の強さに何度も助けられて来た、それは事実よ。」
「それが間違いなんだ、俺は秋菜さんを助けた事に理由や大したお題目なんてない。ただそうしようと思ってやっただけなんだ。」
「それの何がいけないの?人を助ける事は勇気を伴う事だわ。それが強さでなくて何だというの?」
「人助けは助けた側が気持ち良くなるだけの偽善行為だ、助けられる側の都合をまったく汲み取ってない。」
「そんなことは無いわ、助けられて嫌がる人間なんて普通いないでしょ?現に私は貴方に助けられた事を感謝している。」
「それは結果論だ…以前俺が君の自殺を止めた時は勝手な事をするなって怒ってたじゃんか」
「それこそ結果論よ…今はあの日の事を感謝してるしああして助けられて無ければ私は貴方にこうして出会えて無かった。人生に絶望して早まった行動に出ていた、私は貴方に感謝してるのよ。」
「でも俺は…」
「家族から…幼馴染みから逃げだした事を後悔してるんでしょ?」
「え…?」
「私は最初…貴方は家族や幼馴染み…貴方に対して酷い裏切り、仕打ちをした連中に強い怒りを持ちながらそれを許せてしまう優しさ…強さを持ってる人だと思ってた…。」
「秋菜さん…」
「でも違った…私は貴方に憧憬を抱いていた…それではあの元幼馴染みや妹と変わらないわ…だから私は貴方の事をもっと知りたい…知ろうと思ったの…。」
「………。」
「貴方はあの連中を許してなんかいない。ただもう傷つくのが嫌だからあの人達と関わり合いたくない…。だから逃げだした。貴方はそれをずっと後悔しているのよね?」
「やっぱり秋菜さんは凄いよ…全部…お見通しだ…。」
「全部じゃないわ…わからない事だらけよ…だからもっと知りたい…知りたいから私はもっと頑張りたいのよ」
「でもそれだけ解ってくれてるなんて…その…嬉しいよ…嬉しいけどおれは逃げだした憶病者だ…弱虫なんだ…秋菜さんが言うような強い部分なんてないだろ…?幻滅しただろ…俺はこんな奴なんだ…。」
「はぁ…バカね…その程度で幻滅すると思ってるの?言っておくけど貴女が思ってる以上に私は貴方の事が好きよ?なめないでくれるかしら?」
「えぅ…?」
「うぅ…。」
赤面した秋菜は先程の強気な態度はなんだったのかと思う程呆気なく縮こまってしまう。
「ごほん…、それに私はやっぱり貴方は強いと思うわ、どれだけ逃げ出したくても…いざと言う時貴方なら逃げ出さずに立ち向かえると思うからね…」
「買いかぶりだよ…そんなの、でも…」
「…。」
「でも…俺の中で踏ん切りがついたら俺の気持ちを聞いて欲しい。」
「ええ…楽しみにしてる。」
琢磨は覚悟を決めた。
あの家族から自立と言う大義名分を盾に逃げだした。
何もかもが嫌になって逃げ出したんだ。
もう俺はあそこには帰らないと決めて出てきたのだ。
決別の意味を込めて…きっかけは逃げ出した事から始まったかもしれないが彼女と出会って俺は前を見る勇気を貰えた。
ならいい加減ハッキリさせないといけない。
いつまでも問題を先送りにしてばかりではいられないし秋菜さんをこれ以上待たせるのも悪い。
俺は本当の意味でアイツ等と決別する。
その覚悟を決めた。
__________________________________________________________
秋菜は琢磨の部屋から自分の部屋へと戻って来ていた。
義父の件が解決してからこの部屋にアイツがくる心配も無くなったからだ。
むしろ今はその義父を利用出来る立場にある。
そして秋菜がこの部屋にいるのは現在その義父とスマホで通話しているからだ。
琢磨の部屋だと義父と会話が出来ない。
いや、物理的な問題はなにもないのだが単純に秋菜が会話の内容を聞かれたく無いからだ。
会話の内容がもろに琢磨に絡む事柄なだけに彼に聞かれるのははばかられる。
「それでどうなったの?」
「ああ、例の件…あの智也とかいう青年のことだよ。君の指示通り彼とウチの会社との投資取引に細工をしておいた、恐らく彼は数百万程は大損すると思うよ?」
「ふふ、ありがとう、お義父さん」
「しかし君にそこまで恨まれているとはあの男も災難だね…まぁ多分に自業自得だけどもね。」
「あの男には痛い目にあってもらわないとね…人の物を盗るとどうなるかを身を持って学んでもらわないと…ふふ」
「はぁ…あと君の耳に入れるか迷ったけどついでだ…」
「なに?」
「どうも彼詐欺にあってるみたいだよ?」
「詐欺?」
「ああ、当人は未だ気付いて無いみたいだけど多方面に敵を作ってるみたいでね、彼が他に手を出してるウチ以外の投資先は基本的に軒並みダミー起業で彼が支払った投資金が帰って来る事はまぁ…無いだろうね。」
「ふふ…くふふふ…本当に愉快な事になってるのね…こっちは頼んだ事以外は何もしてないのにここまで上手に堕ちていくなんて彼は貧乏神にでも祝福されてるのかしら。」
「さあね…まぁ少なくとも一千万は借金が増えるんじゃないかな?あの年齢でろくに蓄えも無いだろうにどうするのかな彼は?」
「それこそ私の知った事ではないわ、因果応報だと思って諦めて貰うしか無いわね」
「まぁ僕からの報告は以上だ、今後はもうこう言った頼み事はやめてくれよ、生きた心地がしない。」
「ええ、善処するわ。」
「はぁ…じゃーね、」
秋菜は通話を切りスカートのポケットに乱雑にスマホを入れた。
自身のベッドに腰を下ろしふぅ~とため息をつく。
このアパートは壁が薄いので会話の内容が最悪隣に聞かれる恐れがあるので秋菜は出来るだけ声量を抑えて話していた。
これなら会話を聞かれる事も無いだろう。
しかし詐欺か、そんな事になってるなら無理に義父を利用しなくても良かったかも知れない。
まぁ義父の口ぶりでは少なくとも100万以上はアイツの手元から飛んでいったわけだし、私もあの男に恨みを持つ人達に少しは貢献出来たと思えば良いだろう。
しかし弟もあれだが兄の方も口だけの人間だったのがこれで証明された訳だ。
投資で自滅など正直もはや語るに落ちてる。
一千万の借金なんて桁外れの額、常人では普通に無理だ、借金しようとして出来る金額ではない。
そういう意味ではあの男は確かに特別な存在なのかも知れない。
しかし多方面から恨まれてると義父は言っていたがもしかするとあの男がいっていた人脈って脅したり脅迫したりで作った人達なんじゃないか?
もしもその人達から噛みつかれているのにその事に気付かず利用出来てるつもりなんだとしたら本当に救いようが無いほど愚かだ。
まぁ同情の余地なんて無いのだけれどもね?




