第19話 夏芽明音
夏芽明音には幼馴染みが2人いる。
共に彼女が幼稚園の頃から面識のある間柄だ。
それというのも家が隣で自然と共に遊ぶ様になり身内と言ってもなんら不思議ではない関係を築いていた。
1人は琢磨。
幼稚園が一緒で家が隣という事でか何方からともなく話しかけて仲良くなった。
昔からおどおどとした性格だったので私が見てやらないとなって強く思った記憶がある。
今のやや男勝りな性格はあの頃の思いが地続きで続いたけっか琢磨の兄貴分的なノリで形成されたんだと思っている。
妹の愛莉は出会ったころはまだ幼稚園に入る前で当時まだ幼稚園児だった私からみても幼かった。
嬉しかったんだと思う。まるで私に妹が出来たみたいで浮かれていて良いお姉さんにならなきゃって思った記憶がある。
兎にも角にも私には世話の焼ける弟と妹が出来たんだと当時は思っていた。
それから月日は流れ私達の間柄は大きく変化していった。
大きな変化は私と琢磨…タクが付き合った事だろう。
タクの方から告白してくれてその時はじめて私はタクを異性として意識していた事を知って驚かされた。
だから私はそれが純粋に嬉しくてタクの告白を受け入れ恋人となった。
しかし、でもやっぱり一番大きなきっかけはおじちゃんの他界だろう。
私は立儀家の大黒柱、琢磨や愛莉のお父さんを当時はおじちゃんとそう呼んでいた。
良い人だった。
私にもとっても優しくしてくれた。
大人の人として好きだった
だからそんなお父さんが大好きで憧れだった対象を失った琢磨の喪失感は多少なりとも理解しているつもりだったけどやっぱり理解は仕切れていなかったんだろう。
琢磨は私の予想以上にふさぎこんだ。
それでも私や愛莉に迷惑をかけまいと振る舞っている姿は痛々しかった。
だから私は恋人として幼馴染みとして琢磨の側にいなきゃなと思うようになったんだ。
だけど…
それっていつまで?
琢磨には悪いけど私にとっては他所のおじさんが亡くなっただけに過ぎない。
そりゃ悲しいし悔しいし生き返って欲しいしって気持ちもあるし日に日に弱っていく琢磨を元気付けたい、励ましてあげたいって気持ちも嘘じゃない…。
でも正直うんざりしている自分もいた。
いい加減立ち直れよと思う私もいた。
いつまでもくよくよいじいじ…
女々しいことこの上ない。
薄情な奴と思われるかもしれない。
でも中学生時代はそんな琢磨のオモリで過ぎていったんだ。
恋人と色々な所を歩き回りたい。
手を繋いでデートだってしたい。
琢磨が望むならエッチなことだってしたい。
でもいつまで待ってもそんな時は訪れない。
琢磨の家が困窮してるのは理解してたし大変なのも分かる。
でも当時中学生の私には実感が伴って無かった。
琢磨の事は好きだ。
恋人として…幼馴染みとして支えたい。
大好きだったんだと思う。
でもそんな気持ちは中学時代を泣きべそを晒し続ける琢磨の相手をして四散した。
残ったのは惰性で琢磨の幼馴染みを続けている現状だけだった。
そんな時だ。
おばさんが再婚したのは。
琢磨のお母さん…おばさんは45歳くらいの年齢だけど近所でも若くて美人で有名で鼻の下を伸ばしてるおっさんが近所でも多かったくらいだ。
そんなおばさんが再婚した。
中岸家。
それが結婚した相手の姓名。
再婚に際して琢磨達の姓は立儀から中岸へと変わった。
そして私達の関係も大きく変わった。
中岸智也さん
智也さんは私達より2つも年上の20歳の大人の男性だ。
大学生で再婚相手の新しいお父さんの血を引いたエリートだ。
大学卒業した後は起業して自分の会社を立ち上げるのだと意気込んでいる。
頭もとてもよく私じゃ良くわからない話をよく自分のお父さんとしていいる。
見た目は眼鏡をかけたインテリちっくな風貌だけど体はガッチリと鍛えていて筋肉もある。
インテリ細マッチョで見てくれも凄いカッコいい。
しかも私にとても紳士的に接するのに時折獣のように乱暴でそのギャップが堪らなく心をかき乱される。
気付けば私はあっさりと彼の事が好きになっていた。
当時はまだ表面的には琢磨と恋人の関係だったけど私は隠れて彼と関係をもった。
最初は当然拒んだ。
でも彼は口もウマイ。
的確に私の本心を見透かして私の心を書き換えていった。
「いいのかい?君の人生は君だけのモノのはずだよ?義弟《琢磨》に費やして無駄にする必然性なんてないんだよ?」
「明音、君にだって君の立場がある!それは分かるよ?でもね俺は不憫でならないよ、琢磨、アイツのせいで明音の貴重な人生が浪費されていくのがさ。」
「花の高校生活なんていうけど遊べる時期は学生の間だけだ、社会に出れば人は生活するために働かなきゃいけない…いいのか?このままで?」
私はいつしか我慢するのを止めていた。
私だって自由に生きたい!
琢磨のオモリなんていやだ!
恋がしたい!デートがしたい!
可愛い服を来て街を出歩きたい!
恋人と愛し合いたい。
琢磨と出来なかった青春時代を取り戻したかった。
その思いを智也さんは叶えてくれた。
智也さんは私の望む事の全てをしてくれた。
大好きだった。
それから私達は一線をあっさりと越えた。
「智也さん!好き!好き好き好き〜!!」
「はは!落ち着けよ、俺は逃げたりしないから!」
「本当に?だったらもっとして!沢山してぇ!」
「仕方ないな!」
この日、私は処女を彼に捧げた。
最初は痛かったけどだんだん馴れていき次第に痛さよりも気持ち良さが勝っていった。
恋人同士が愛し合い互いを求め合う行為に私は魅了されていった。
あと今だからわかるけど彼は女の扱いに長けていた。
何処をどうすれば女は気持ちいいかそれを熟知していた。
だから私はあっさりと彼との行為にハマった。
琢磨にバレるのは時間の問題だった。
と言うよりもワザとバレるように立儀…いや中岸家でやりまくっていたのだからバレるもクソもない。
どうやら智也さんは琢磨が嫌いらしい。
敢えて私とやってる所を見せつけて寝取ってやったぞということを子供のように無邪気にアピールして自慢したいみたいだ。
普段は大人びてるのにたまに垣間見せる無邪気な所、子供っぽい所はギャップがあって私の心を書き立てる。
しかし一番私を興奮させたのは琢磨のあの顔だろう。
信じられない物を見たような顔。
信じていた者に裏切られた絶望。
足元が崩壊して奈落に落っこちたような喪失感。
彼の中で何かがひび割れ粉々に砕け散る音がした…ような気がした。
私は今までにない興奮をその身に感じた。
もっとその顔を見せて欲しい。
もっとめちゃくちゃに絶望して欲しい。
泣き顔なんて見飽きてると思ったけどこれはそそる。
智也さんとの行為は気持ちいいけど琢磨の絶望顔は最高のスパイスだ。
この顔が見れるなら私はなんだって出来る気がした。
それからの私は枷が完全に外れていた。
琢磨のあの絶望顔をみるためならなんだってした。
新しい方のおじさんともしたし弟の蓮司君ともしたし酒池肉林パーティにも参加した。
気持ちいい事ばかりで私は人生で一番の幸せを謳歌していたのだがある日琢磨が中岸家から出て行った。
今アイツは何処かもわからない所で一人暮らしをしている。
でもどうせ直ぐに帰って来る。
一人暮らしなんて出来る程の蓄えなんて高校生が用意出来る訳が無いだろうしあんな女々しい腑抜け男にそんな堪え性や持続性があるとは思えないからだ。
そうして私は高みの見物を決め込んだ。
しかしある日もっとも意外な出来事がおきた。
私達の通う学校には特進科なる特別クラスがある。
頭の良いやつだけが入れる特別なクラスだ。
そこにはこの学校で一目置かれる女生徒がいる。
沙流秋菜。
紫がかった長い黒髪に宝石のような黒瞳の美少女だ。
清楚って私からはもっとも縁遠い言葉を体現したかのような女生徒で男子に人気がある。
あの蓮司君さえも彼女に心奪われている程だ。
しかしいかなる男子にも靡かず冷たくあしらうその姿勢から氷のように冷たい令嬢…縮めて冷嬢なんてあだ名まで作られる始末だ。
コイツと何故か琢磨が最近妙に距離が近い。
最近では愛莉から聞いた話から付き合い始める可能性すら危惧している。
だめじゃないの…琢磨はずっと1人で孤独にいてくれなくちゃ…
そしてまた私の前であのみっともない姿を晒してくれなくちゃ…。
でもどうにも出来ない…
私の頭じゃ沙流秋菜には勝てないだろう。
蓮司君の二の舞いはごめんだ。
だから適切な配役を配置したい。
智也さんなら沙流秋菜を籠絡出来るだろうしね。




