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僕だけ居場所のない家から逃げ出した先で見つけた僕の本当の居場所  作者: ムラタカ


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17/28

第17話  告

琢磨と秋菜は屋上で弁当を食べていた。

今朝方秋菜が言っていた通り弁当の中身は様々な味付けがされた卵焼きと栄養バランスを考慮した肉や野菜が詰められていた。


弁当であれば時間の経過に伴い、出来立ての温かみは失われるがそんな事が小さく思える程に美味しい。

冷めても美味しい工夫がされているのだろう。

改めて琢磨は秋菜の料理スキルの高さを実感した。



「秋菜さんコレもコレも美味しいよ、いや、マジすごいよ、プロ並み!」


「ふふ、ありがとう褒められるのは悪い気はしないわ。どうかしら?胃を捕まれてる?」


「へ?」


「ふふ。」



意味深な事を言ってくる秋菜に動揺が隠せない。

見るものが見れば妖艶にも見える微笑みを浮かべる秋菜。

思わずドキりとさせられそうになった琢磨は目を逸らしてしまう。

やはり今日の彼女は何処かいつもと違う。

何処か魅惑的に見える。

いかんいかん…女友達をそんな風に見ては失礼だと琢磨は自分を戒める。

向こうは友達として接しているのにこっちがこんなんでは軽蔑されてしまう。

琢磨は悪魔でも冷静にいようと思うがそこで秋菜が件の話題を持ちかけてきた。



「琢磨は知ってるかしら?例の噂」


「え?ああ…俺が秋菜さんに言い寄ってるって奴か?」


「ええ…思い込みも甚だしい…妄想そのものの言いがかりね…実に不愉快だわ…」


「でも良かったよ…」


「え?」


「秋菜さんには実質的な被害が有るわけじゃないからな」


「貴方はまた…」


「え?」


「琢磨はもうすこし自分を可愛がる必要があるわね」


「何の話?」


「貴方は自分を卑下しすぎる…そこをあの連中に付け込まれているのよ…」


「……。」


「貴方の噂を流しているのはあの義弟の取り巻き女子達よ…全くどうかしてるわ…」


「好きにやらせておけばいいさ…」


「………、やっぱり貴方は強いわね…眩しい程に…」


「俺が強い…?それは流石に勘違いだよ」


「勘違い?そんな事は無いわ…貴方は強いわよ…こうして貴方を卑下し見下す連中を許す強さを持ってる…その気になれば退ける力強さを持ち合わせてるのに…」


「それは買い被りだ…俺はそんなお人好しじゃない…」


「琢磨…私はね…」



「こんな所にいたんだね、沙流先輩!」



二人の仲を引き離す様に割って入ってきたのは件の義弟…中岸蓮司だった。

今回は最初から妹の愛莉も最初から同道させていた。



「……また貴方なの?今琢磨と大事な話をしていたの、悪いけど外してくれないかしら?」


「どうしてそんな冷たい事言うんですかぁ〜嫌ですよ〜!沙流先輩とはお昼休みくらいしかこうしてお話する時間が無いんですもん!僕も混ぜてくださいよぉ!」


「愛莉も久しぶりに琢兄とお弁当食べたいな!」



「……。」


「……っ。」



何なんだ…コイツ等…

気持ち悪い…何が琢兄だ…そんな呼び方もうしなくなって久しいだろうが…腹立たしい。



「食いたきゃ勝手に食ってろよ…秋菜さん…別の所に行こう」


「そうね…ここは不快だわ…」


「そんな邪険にしないでよ?今回は義兄さんを蔑ろにしたりしないからさ?」


「愛莉もそんな風にされると悲しいです。先輩」



流石にこれ以上はマズイ。

この学校は基本的に屋上は開放されている。

誰もが屋上を使う事が出来る。

周りには多数の生徒。

蓮司と愛莉に心酔している奴がいないとも限らないし下手すれば拡散されて俺達の学校生活に何かしら支障を来す気がする。


こんな事ならいつもどおり旧文芸部の教室を使っておけば良かった…。



「はぁ…」



俺は黙って腰を降ろす。

それに秋菜さんも習うが彼女の目は私は納得してないと語っていた。



「はは、嬉しいなぁ流石義兄さんだ!話が分かるね!」


「琢兄のお弁当久しぶりだね!」



愛莉がコチラに来て俺の腕に自分の腕を回そうとする。



「さわるなっ」


「……あっ…ごめんなさい…琢兄…」



そんな様子を見ていた一部の野次馬は俺に物言いたげな視線を寄越す。

愛梨の狙いはコレか?


「おいおい兄さん…愛莉が何したってのさ?可哀相だろ?」


「……。」


「はぁ…茶番はそのくらいにしてくれる?貴方達の用は私でしょ?」


「はは!話が早くて助かるなぁ〜僕にもお弁当作ってよ沙流先輩!」


「嫌よ?何故私がそんな事しなきゃいけないの?」


「え〜義兄さんには作ってるじゃん!義兄さんばかりずるいよ!」


「琢磨には恩があるの…貴方には恩もない、作る義理も義務もないわ」


「寂しいなぁ〜じゃーせめて僕も沙流先輩の事下の名前で呼ばせてよ?秋菜ってさ」


「絶対止めて…虫唾が走るわ」


「え〜義兄さんは良いのに僕は駄目な事多過ぎない?それってさ…ずるくない?」



蓮司は琢磨を睨みつける。

琢磨は黙って秋菜の手作り弁当を食べる事に集中する。



「ねえ義兄さん僕にもそれ分けてよ?僕等血は繋がってなくても兄弟だろ?」


「ふざけんな…お前に分け与えるモンなんか何一つとしてない」


「あ~あ、器量が狭いな〜そんな事だからさ〜」



蓮司は大仰な手振でアクションを取り琢磨の耳元に口を近づける…そして


「明音ちゃんを兄さんに取られるのさ」


明音とは琢磨の元カノ…

厳密には義兄に寝取られた元幼馴染みの彼女だった何かだ。

琢磨の顔がみるみる怒りに染まっていく。



「貴方の心はとても薄汚いわね?弟さん?」


「え〜僕のことは蓮司って呼び捨てにしてよ〜?蓮司君でもいいよ?」


「で?薄汚い弟さんは何がしたいの?あんな趣味の悪い噂を流して?」


「アレは僕も知らなかったんだよ〜あの子達が勝手にやったことだからさぁ〜ははっ困っちゃうよね〜」


「そうね…本当に困るはねぇ…このさいだからはっきりさせておくわ。」



秋菜は周囲を見渡す。

周りには野次馬と化した生徒達がこちらに聞き耳を立てている。

あれでさり気なくやってるつもりならもう少し普段の自分達の挙動に気を使うべきだろう。

秋菜はすぅーと息を吸い込むとそれを大声で吐き出した。



「私は…沙流秋菜は立儀琢磨の義弟…中岸蓮司にこれっぽっちの恋愛感情も持ち合わせていないわ、正直いって不快!不愉快!生理的に無理!!私を説き伏せて押し倒せば他の女性達と同じく籠絡出来ると見下しているのも鼻に付くわ!!私の好きな異性は琢磨!!立儀琢磨よ!私の心はコレでもかと彼に魅了されてるわ!自分でも驚く程に彼に魅了されてるわ!!そこの義弟が入り込む余地などこれっぽっちも無い程にね!!!」


「へ?あ…秋菜さん!!?」



突然の告白に琢磨は勿論…それを聞いていた周りの野次馬達も、妹の愛莉すら膠着している。


ただそこからいち早く立ち直ったのは意外にも蓮司だった。



「わからない…わからないなぁ!!どうしてなの?どうしてそんなにコイツに固執するの?コイツには何もないじゃん!!ただのモブ野郎じゃん!!」


「なら貴方には何があるの?」


「はあ!?僕に何がある?そんなの決まってるじゃん!僕は皆に好かれてるしアイドル並にイケメンで愛嬌もあるし運動だって得意でっ!!」


「それが?」


「えっ?」


「だからそれが何?皆にモテるのはよく知ってるわ?で、それが何?見た目が優れてるのも認めるわ…で?それがなに?愛嬌もいいわね?で?それが何?」


「はっ?へ?何って……だって僕は…僕…」


「琢磨はね?私が好きになった男の子はね、強い心を持ってるの!

普通殺したい程憎い相手がいたら殺すなりそれが出来なければ社会的な制裁を加えようとするものよ?

現に琢磨にはそれを可能とする…それだけの力がある!

でも彼は敢えてその力を行使して貴方達を排除しない。許せてしまえる…。

許せてしまえるの!」


「はぁ~?何言ってるのさ?力?こいつに?そんな物あるわけ無いじゃん!現実をみなよ?秋菜ちゃん!」


「下の名前で呼ばないでと言ったでしょ?もう忘れたの?流石は交尾する事にだけ比重を置いてるだけあるわね?

頭まで桃色な貴方に分かりやすく言って上げるわね!彼はね、あれだけの事をした貴方達の悪行を些事と投げ捨てて許す事が出来るのよ!

それは優しさだったり慈しむ心だったりと言われるけど私は強さだと思うの。心の広さ!心の余裕!心の強さが彼には…琢磨にはある。それはなにより慈しむべき尊いものよ?彼は自身の成果をほのめかしたりしない!馬鹿みたいに己の力を過信し傲慢に振る舞ったりしない!

私は彼に救われた事があるわ!

私がどうしょうも無い絶望に打ちひしがれている時、彼はその絶望に立ち向かってくれた。

おそらく彼だって怖かった筈よ?それでも彼は毅然と立ち向かってくれた。

しかもそれを…その事実を理由に私に何かしらの要求をしてくる事もない…何事も無かったかの様に彼は普通に過ごしている!貴方にそんな事が出来るかしら?どうせ恩着せがましく私にあれこれ求めてくるのでしょ?

それを貴方は!

こんなに強い人間を貴方は!!

貴方如きが琢磨の事を何も無いなんてよく言えたものね?それに比べて貴方は何?周りからチヤホヤされてアイドル顔だかなんだか知らないけど中身がまるで伴ってないじゃない!?他人を見下してそれを承認欲求の捌け口にして!私は貴方のような人を舐め腐った態度の人間を見ていると吐き気がするのよ!まだあるわ!貴方は!」


「ひゃあ?ひはああぁあ!!?ああぁあぁぁああ!!?」



「あっ!まちな…ちっ…逃げた……」



蓮司は涙目になって意味を伴わない謎の擬音とともにこの場から駆け出していった。

あんな蓮司を見るのははじめてだ…。

てか…秋菜さん…



俺の事好きって……?




マジ…?





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