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僕だけ居場所のない家から逃げ出した先で見つけた僕の本当の居場所  作者: ムラタカ


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第16話  思い込み

清々しい朝だ…。

いや、少し寝不足なのですこぶる眠い。

しかし窓からみえる空は晴天でコレでもかと清々しさを押し付けてくる。


さて、あの義父に対しては俺なりには一応の解決を見たと思う。

しかし当の秋菜さんはその事実を知らない。

もう義父に怯えないで良くなった。

その事実を彼女にそれとなく伝えたいが馬鹿正直に伝えることは出来ない。

何故か?

決まってる。

俺が色々首を突っ込んだ事が知れれば彼女に気を使わせてしまうからだ。

何かと色々な物に気を使って生きている彼女にこれ以上の負担をかけたくは無い。

しかしだからこそ義父を警戒しなくても良くなった事を伝えたいがどうしたものか…。



「おはよう琢磨…良い朝ね」


「ああ…おはよう」


「どうしたの?なんだか眠たそうね?」


「え?ああ…昨日あまり寝付けなくてね」


「そう?なら私が寝かし付けてあげましょうか?」


「はは…秋菜さんもそんな冗談いうんだね?」


「あら?ふふ、冗談じゃないわよ?」


「へ?」


「思えば貴方はずっと私を自分のベッドに寝かせて貴方は床で雑魚寝じゃない?貴方は私の恩人なのよ?その恩人にこんな扱いはやはり間違いだと思うのよ?」


「はあ…?」


「なら同じベッドで寝れば済む話だし貴方が寝付けないなら私が寝かし付けてあげるわよ?ふふふ」


「あ…あはは…」




どうしたんだ?

なにか変だぞ?

恩人と彼女はいったがそれが自殺を止めた事を指しているんだろうか…?

義父の件は秋菜さんの知らない事だからその筈だけど仮に自殺の件なら彼女は感謝なんてしてなかった筈では…?

それに男に対しては例え相手が俺でも一定の距離感を維持していた秋菜さんが今はその距離感が無いどころか距離をぐっと詰めて来ている……様な気がする。

なんか色々と違和感が半端ない。

しかしここで勘違いなどしてはならない。

相手が自分に好意的だなんていかにも童貞らしい勘違いだろ?

例え真に童貞であってもそんな痛い勘違いをするほど俺はアホではないのだ。

まぁ…もう女関係で痛い目に会いたくないってだけなのだが…。



「ふふ、冗談よ…真に受けた?」


「はっ、受けるかよ。」


「そ?ならはやく朝食にしましょ?今日の卵焼きの味付け…結構自信があるの!是非食べてみて?」


「お…おう。」



やはりなんか妙に積極的な気がする…。

いやいや、ありえないから…


そんな悶々とした思いを抱えながら俺達は連れたって登校した。

ちなみに秋菜さんの自信作の卵焼きは本当に美味しかった。

弁当の中にも別の味付けをした卵焼きの他色とりどりの具材を入れたから楽しみにしておいてとの事だ。


それはまあ…普通に楽しみだ。

美人の手作り弁当なんて簡単に食べれる物ではないのでこの事実だけは感謝しないといけないなと俺は思った。


学校に到着してしばらく、相変わらず男子生徒の視線が痛い。

例の如く秋菜さんと仲良くしている事に対して少なからず嫉妬されているのだろう。

学校であまり一緒にいる所を見られるのは避けた方が良いのかもしれない…?


そんな時タケルが我が物顔で隣の席に腰を落とす。



「よぉおはようさん、琢磨」


「ああ、おはよう。」


「で?」


「でとは?」


「とぼけんなよ?色々聞かせてもらうぜ?沙流さんとの関係とかこの前の事とか?」


「この前?」


「しらばっくれんなよ?義弟君とやり合ったんだろ?知ってるぜ?」


「ああ…相変わらず情報早いな?」



この前の義弟と秋菜さんの言い合いは既にタケルの耳に入ってるらしい。

一応義弟と妹はこの学校では有名人だしその義弟の相手が秋菜さんでコチラも有名人らしいからなにかと話題になりやすいみたいだな…。

てゆーかアイツ…アイドルキャラで売ってるクセに妹以外の女にうつつぬかして荒れたりしないのか?

炎上案件だろ?それ…。




「今回は結構ヤバイかもしれないぞ琢磨?」


「ヤバイって何がさ?」


「お前の義弟発信かは知らないがヤバい噂が回ってる」


「ヤバい噂?」


「ああ…お前が沙流さんに言い寄ってて沙流さんを困らせてるって話が広まってる…それを義弟がお前に注意したらお前が逆ギレしたって感じになってる」


「はぁ…想像力逞しいな…」



真実の屈折率が激しい事この上ないな…。

皆退屈な奴が多い。

有る事無い事なんでもいいから広めて話題にしたいらしい。

1人の気に食わない奴を悪役にして叩くことで話題に花を添えたつもりになってるんだろう。

まったくそっとしておいてほしいのに面倒くさい。



「案外気にしてなさそうだな?」


「所詮はただの噂だろ?事実はどうあれ広まったモンはもうどーにもならないし言わせとくさ」


「時々お前のメンタルが鋼過ぎて怖くなるよ俺は…で沙流さんとお前って何なの?いつからあんなに仲良くなってるの?弁当作って来るとか普通に有り得ないレベルで奇跡的な凄さなんだけど?」


「あ~、俺だけの話なら全然するんだけど秋菜さんの事となると何処まで話したらいいのか…本人の許可もいるからな〜」


「ふーん、まぁ…無理に聞くもんでもないわな…まぁ…義弟関連は色々気を付けとけ?」


「ああサンキュー」



今更義弟とか妹とか心底どうでもいい。

絡んで来ないで欲しい。

俺はお前らと関わり合いになりたくないのに何故そっちから絡んで来るんだ面倒くさい。





___________________________________________________________________



琢磨と別れて自分の教室に向かう。

私が所属するクラスは特待生だけで構成された特進科の3組だ。

特待生と言うだけで一目置かれるが私は他の皆より色眼鏡で見られる事が多い。

あの男も言っていたようにどうやら私は人目を引く見た目をしているらしい。

別に誰かに特別に見られたいとかモテたいとか思った事は無い。

そんなのは面倒くさいだけだし目立つのは嫌いだ。

特待生になったのも学費が一部免除されるからと言う理由でだ。

勿論特待生を維持するには一定の水準を常に維持しないといけない。

でないと来年には別のクラスに配属されてしまうのだから…でも今はそれも良いかと思っている。

お金の心配は無くなった。

母は再婚しあの男が形式的な父親となり生活には困っていない。

昨日琢磨が頑張ってくれたからあの男に怯える事もなくなった。

なら特待生なんて止めて琢磨と同じクラスになれる可能性に賭けてみるのも一興だ。

そうなればわざわざ琢磨のいる6組まで行く必要もなくなるしね。



そんな事を考えながら教室に入ったんだけど妙な噂を聞いた。


琢磨の義理の弟…なんて名前か忘れたがそいつ関連の噂だ。

なんでも琢磨が私に付き纏い私が迷惑している所をあの義弟が追い返して私と親密になったとかいうワケのわからない噂が知らない内に独り歩きしているらしい。

もうワケがわからない。

何故そうなるのだ。



「え?じゃ違うの?」


「むしろ私はその義弟に付きまとわれて迷惑してるの…感謝どころか普通に嫌いよ」


「え〜でも蓮司君普通にいい子そうだしもっと優しくしてあげたら良いじゃない」


「無理ね…義理とはいえ、自分の兄を侮辱する精神性には拒否感すらあるわ」


「え〜あんなにかわいいのに勿体無い」


「貴方達も人を見た目だけで判断するのは如何なモノかと思うわよ?」



私は人の陰口とかを平気でいう人間はあまり好きじゃない。

私自身が他人に何かしら言われるのが不愉快なんだからその不愉快な思いを他人にさせたくはない。


もっともあの義弟にかんしてはその限りではない。

私はハッキリとあの人間に対して不快感をもっている。

あの猫を被った態度で馴れ馴れしく付き纏って来るのも問題だがなにより許せないのは琢磨を軽視し見下している所だ。

それに琢磨の大事な人達を奪った連中の1人ならますます好きになる要素がない。


しかし彼には私が思っているよりもいっそ狂信的とすら言える程の取り巻きがいる事を知らしめられた。

3限目の10分休憩の時の事だ。



「すみません沙流先輩少し時間宜しいですか?」


「…?かまいませんよ?」


「ありがとうございます。」



私に話しかけて来たのは2年の女子数人のグループだった。

彼女達はコチラに伺いをたてているがその目はハッキリと敵意を示していた。



「どうして蓮司君の誘いを拒絶されるんですか?」


「蓮司君が可哀相だとはおもわないんですか?」



「………、はあ?」


「蓮司君からあれ程言い寄られたなら普通断らないのに先輩は変ですよ!」


「私達なんて相手にもされないのにぃ!羨ましいぃー」



何かと思えば彼女達はおそらくあの義弟…名前は蓮司だったのか…の取り巻き女子のようだが…

実に下らない。

こんな事をしている暇があるなら勉強の一つでもしていればいいのに…



「何ですか貴方達は?そんな下らない事を言いにわざわざこんな所まで来たのですか?」


「くっ、下らない事?」


「下らないってなんですか!私達は蓮司君の事を思って!!」


「仮に私とあの義弟がくっついて貴方達はそれで満足なんですか?それはそれで貴方達は文句を言っていたでしょ?結局は自分の思い通りにならないからと駄々を捏ねているだけでしょう?コレが下らなくなくて何なのかしら?」


「こっ…この女ぁ!」


「蓮司君の気持ちを知りながらぁ!!」


「馬鹿馬鹿しい…もう休憩も終わりですよ?はやく自分達の教室に戻りなさいな」



これ以上こんな馬鹿馬鹿しい事には付き合ってられない…そう思った私は踵を返し歩き出す、しかしその背後で女性達は気になる事を言い出した。



「ふふ、感謝してくださいね?貴方が蓮司君と上手く行く様に噂を流しておきましたよ?」


「え?」


「知ってますよね?噂を?」


「……あの噂…流しているのは貴方方ですか?」


「貴方が悪いんですよ?蓮司君の思いを踏みにじってあんな冴えない男を選ぶから…」


「蓮司君のお兄さんには悪い事をしたとは思いますけどコレも蓮司君のためです」



何を言ってるんだ…コイツ等は…

彼が…琢磨が冴えない男…?

悪い事をしたとは思ってる…?



「ふふふふふふ…あははは~」


「ひっ?」


「なっなに!?」


「ふふふ…琢磨に迷惑をかけてるのは貴方達?琢磨は誰よりも強い心の持ち主だもの…きっと貴方達がしたことも何でもない事のように許しちゃんでしょうね?でも私は許さない…」


「だっ…だって蓮司君のため…」


「お兄さんには悪いと思って…」


「もう良いわ…行きなさい…授業に遅れるわよ?貴方達の学費だって"ちゃんとした親"のお金でし払われているのよ?そのお陰で貴方達は授業をうけているの…その有り難さをもう少しは理解なさいな?」


「……。」



トボトボとコチラに物言いたげな視線をチラチラと寄こしながら2年女子達は戻っていった。




私にとって唯一心を通わす事が出来る相手は琢磨だけ。

わたしは彼の強い精神性に惹かれた。

あの心のあり方は誰もが真似できる程に有りがちな物ではない。

酷い環境で自分の心ををいじめ抜いて来たからこそ出来た琢磨だからこその強さなんだ。

琢磨こそ私が唯一心を落ち着かせられる特別な異性…。


その琢磨に…あんな人を見る目もないメス共が迷惑をかけるなんてあってはならないんだ。





ハッキリと言えば彼女…沙流……いや季空秋菜は琢磨に過剰なまでの理想を追い求めていた。

実際の琢磨は彼女が思う程強くはないし優しくもまた卑怯でもない。

彼は自分を裏切り捨てた家族を許せる強さなんて持ち合わせていない。ただ相手にするのに疲れたから関わり合いたくないだけ…。

秋菜を助けたのもただなんとかなく見過ごすのが気持ち悪いから助けただけ…。

彼女は琢磨に理想を押し付けている。

それは一種の過剰な想い。

琢磨への過剰な想い。

彼女の想い込みに過ぎ無いのかも知れない


しかし秋菜の心の中では明確に琢磨が大きな存在へとなり始めていた。


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