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僕だけ居場所のない家から逃げ出した先で見つけた僕の本当の居場所  作者: ムラタカ


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第14話  無難な決着

俺は今半同居生活を送る事となった隣人、季空秋菜のベッドの中にいる。

女の子のベッドの中というのはこれ程までにいい匂いなのか…。

自分が変態に近づいていく感覚を必死に制しながら俺はある目的の為ぐっと息を潜める。


義父の行動に悩み続ける彼女…秋菜さんに平穏な日常を送って貰う為にはあの義父を何とかしないといけない。

社会というステージからあの男を引きずり落とすのに最も適した方法…それはあの男が秋菜さんを襲っている所を現行犯で捕まえる事だろう。

幸い今の世の中、録音器具などは誰もが持ち歩ける様になって久しい。

◯ーチューブとか何かしらの配信サイトに自分で取った動画をアップするのなんて今の時代そこまで難しい事ではないのだ。


とはいえ実際に秋菜さんに囮になってもらう訳にはいかない、そんな事をしたら本末転倒だ。

俺がやれることは囮役を率先してやりあの男の弱みを握るというものだった。

ちなみにこれは俺の独断でやっている

こんな事を秋菜さんに馬鹿正直に言っても止められるのは目に見えているからな…。


しかし…

まさか作戦開始の1日目から襲ってくるとは予想外だった。

どんなけ辛抱弱いんだこの男…。

長期戦を予想していたから色々と覚悟していたんだけど良い意味で拍子抜けだ。


ただ何と言うか必死過ぎる!

寝込みを襲うのはまぁ予想通りだけど俺の上に大の大人が乗っかっているのだから気持ち悪い事この上ない。

さっきから秋菜!秋菜!と呟きながら何かを押し付けて来ている。

その何かが何かを想像すると気持ち悪さがエスカレートするので敢えて無心を貫く。

しかしこっちのメンタルを著しく削ぎ落とされるのでそう長い事我慢も出きない。

元幼馴染みと義兄の交尾をはじめて見させられた時くらい気持ち悪い。

なのでそろそろ奴の夢の時間は終わりにしたいと思う。



「凄いなおっさん…相手が男でもお構い無しか?性欲半端なさすぎだろ。」



「は!?」



おっさんの間抜けな声が証明が付いてない真っ暗な部屋に木霊する。

状況を読み込めてない様だ。


「いやいや、その歳で元気だなおっさん」


「なっ?誰だ君は!何故秋菜の部屋にいる…っ、秋菜…秋菜は何処だ!?」


「さぁ?何処だろうね?」


「ふっ…巫山戯るな!秋菜は僕のモノだ!君のようなワケのわからない奴の物じゃない!」


「おいおい、仮にも娘を物扱いとか正気を疑うよ?」


「黙れ!質問に答えろ!」


「秋菜なら俺の家のベッドで寝ているよ」


「はぁ?お前のベッドで…?巫山戯るな!僕だってまだ押し倒した事しか無いのに!お前が秋菜を!?嘘だ嘘だ!」


「嘘じゃない…本当の事だよ…残念だったな?美味しかったよ?秋菜の料理は?」


「ふぐぅ〜!秋菜は!秋菜は僕の物なんだ!それをぽっと出のお前みたいな奴が!」


「いつも秋菜さんが言ってるよ?義父は目付きがいやらしいから怖い、気持ち悪いってさ」


「そ…!そんな事!僕だって僕だって!!家族になろうとした!でもアイツは!アイツは!だから僕は!」



どうも直情傾向が強い人間みたいだ。

簡単に誘導に引っかかってくれる。

こんな状況だからかどうか知らないが録音されてるとかそこまで頭が回って無いらしい。

まぁ勘付かれる前に出来るだけ色々ゲロってくれる様に挑発しないとな…。


「秋菜さんの料理はそれはそれは美味しいよ?久しぶりに人の温もりを肌で実感できたよ?まさに幸せなひと時だったね!」


「ぬぎぃ〜っ!!巫山戯るな!僕がどれだけ我慢してきたと思ってるんだ!!僕は…僕だって父親になろうとしたんだ!でもアイツは僕を汚物を見るような目で蔑むんだ!まるで僕を不審者かの様に見るんだ!だったらお望み通りにしてやるまでの事だろ?僕は何も悪くない!悪いのは大人をコケにするあの小娘だ!全てあの小娘の自業自得だっ!」


「何言ってんだアンタ…アンタはそんなのでも秋菜さんの父親だろ?父親としてあの子の前に出て来たならその義務を果たすのが大人じゃないのか?」


「知った様な事を言うね君は?大人の義務?そんなものがなんだと言うんだ!秋菜程の女を前にして何故我慢する必要がある?無意味この上ない。それにあの子の母親はね!僕を信じたんだよ!そしてあの子は母親の幸せを望んでいるんだ!あの子は僕を拒絶しながら僕を否定できないのさ!」


「最低だなアンタ…彼女の弱みに漬け込んで…」


「君は何かな?秋菜の彼氏かなにかかな?いいねぇ学生の恋愛…青春だねぇ?でもね…学生の恋愛なんて無意味なんだよ、大体が成就しない!君のような子供があの子にしてやれる事なんて何もないさ!勉強になったと思って手を引くんだね?ソレが君の為にもなるんだよ?」


「学生の恋愛が成就しないね…そんな事アンタなんかに言われるまでも無くよぉーく理解してるよ…それにこれは俺がしたくてやってるんだよ…」


「はは、意味がわからないね…そんな事して何になる?意味がない!生産性のない…………、君…もしかして…」


「なっ……なんだよ…?」


「図られたよ…君…録音してるだろ?」


「っ……!」


「どこだ?何処にある…今すぐスマホなり盗聴器なりを出せ…君もこんな所で人生棒に振りたくないだろ?」


「人生棒に振るのはアンタの方だろ?俺はアンタに遠慮なんて一切しないし手心も加えるつもりもないよ…」


「ふふ…ふふふ…賢しい餓鬼は嫌いだよ…まったく…これだから子供は…一時の感情で実に無意味な行動にでる…ソレが正義感のつもりなら辞めておいた方がいい」


「はぁ?」


「どうせ君も秋菜に気に入られたいからこんな無意味な事をしているんだろう?アレはたしかに美人だ、君の様な思春期の少年にはさぞかし輝いて見える事だろうねぇ?でもね?秋菜は感謝なんてしないよ…?秋菜は無意識に他人を見下してる…彼女は君を同列には見ないよ?それを理解してるかい?」


「ははっ、ふふふ…」


「?…何が笑しい?」


「いや…さっき言っただろ…俺はやりたいから勝手にやってるんだよ…秋菜さんに感謝されたい?されてどうなる?それこそ意味がない…そんな事で俺の鬱憤は晴れない…」


「はぁ…?君…何を言ってるんだ…?」


「俺はアンタみたいな他人の幸せを食い物にして愉悦する屑が地獄に落ちてくれたらそれだけで満足なんだよ」


「…何言って…」


「ふふつ…録音は充分とれた…あんたを破滅させるならコレで充分…」


「巫山戯るなよ?そんな事をしたら…僕も君を無傷で返す事は出来なくなる…」


「俺にケガさせたり最悪殺したりしたらどの道後悔するのはアンタだ…嫌ですよね?そんな人生をこれからおくるのは?」


「ぐぅ…」


「取り引きしませんか?沙流さん…貴方にとって悪い話じゃないはずですよ…」



義父は苦渋に濡れた顔をしながら僕はどうすればいい?と尋ねてくる

見た目温厚そうで荒事に慣れていないイメージだったので実力行使には出てこないと踏んでいたが上手く事が運びそうだ…。



「簡単な話ですよ…もう秋菜さんに手を出さないでくれますか?それと彼女が母親と和解出来る様に手助けしてあげて下さい。」


「本当にわからない…そんな事をして君に何の理がある…さっきも言ったが秋菜は君に感謝なんてしないしこのままでは君の言う僕を地獄に叩き落とす事も出来ないよ?」


「俺の事は貴方にはどうでもいいでしょ?約束を守ってくれるなら俺はアンタを告発とかしたりしない…約束しますよ?」


「………。わかったよ…はぁ…約束は守ってくれるんだね?」


「ええ…守りますよ…貴方が守るならね…」


「わかったよ…」



了承した義父はそのままトボトボと部屋から出て行った。その背中を見ても琢磨が何かしらの感慨に囚われることは無かった…。

ただ虚しさは感じた。

いっそ警察に被害届をだしたり秋菜さんの母親に録音した音声を聞かせるなりすれば簡単にあの男を破滅させられる…。

そうすればきっと俺は満足出来るだろう。

俺はきっとああいう奴が地獄に堕ちる様を見たいだけなのだ。


あの男はあの猿家族…中岸の連中を想起させる。

俺から全てを奪った糞みたいな連中。

あの糞共を地獄に落としてやりたい…。

そんな事を俺は心の何処かで望んでいる…。

あの男を地獄に叩き落とす事でその望みを擬似的に叶えられるかも知れない。

しかしそれに意味は無い。


地獄に落ちるのはあの男であって中岸の連中ではない。

それに社会というレールから外れたらあの男はもう一切躊躇しなくなるだろう。

復讐心をそのまま性欲に変換して人生をかけて秋菜さんにストーキング行為を実行するだろう事は安易に想像出来る。

その可能性を考慮に入れるなら、結局はこの選択が一番無難なんだと思う。


そんな事を考えながら俺は秋菜さんの部屋から出る…

あの男が部屋の前で待ち伏せしてる可能性も危惧して警戒しながら出たけどそんな事も無く普通に出れた。

自室に戻った俺はパソコンを立ち上げスマホに取った音声データをパソコンに移動させておく。

コレで万一スマホを紛失してもデータは残っているので大丈夫だろう。


俺のベッドで穏やかに寝息を立てる秋菜さんを見てせめてこの少女には穏やかな日常を送って欲しいとそんな事を望むのだった。


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