第11話 中岸兄妹
ファンシーに飾られた少女の部屋の中はその主の桃色の欲望に支配され男と女が混じり合う歪な音が反響する。
少女、中岸愛莉は義理の兄である中岸蓮司に求められる事を至高の喜びとしていた。
悶え喜ぶ義妹の体を組み伏せその快楽を味わいながらも蓮司はまったく別の事を考えていた。
当然それは目の前の性欲処理機の事ではない。
(あの女もコイツみたいにチョロければいいのに…いや…でもそれじゃ面白くないか…)
あの女とは当然秋菜の事だ。
蓮司にとって女とは自分が少し煽てたり甘えたり微笑みかければ歳上も下も関係なくこの義妹のように直ぐに媚びへつらい頬を赤らめ腰をくねらせて擦り寄ってくる存在だった。
しかしあの沙流秋菜という女はどうだ。
自分がどれ程言い寄ってもまったく意に解する事無くまるで汚物でも見る蔑みに近い視線を送って来る。
こんなのは初めての経験だ。
本来なら腹立たしい筈のその態度も彼の中では未知の快感に昇華すらされていた。
だからそれを味わいたくて何度も彼女に接触した。
今までならそれで良かった。
しかしソレが今日はじめて苛立ちとして彼の中にくすぶりはじめている。
何故か…
そんなのは決まっている。
(クソクソクソ!どうして僕よりあんな低俗な凡人を選ぶんだ!クソ!意味がわからない!クソクソ!)
低俗な凡人。
彼にとっての義理の兄
蓮司達兄弟に幼馴染みの彼女も妹も母親も全部取られた情けないだけの哀れな凡人。まごうことなき雑魚。
男として底辺も良い所な存在。
そんな生きてる価値すら無い奴があの高嶺の花たる沙流秋菜から信頼を得ている。
僕の知らない内にあそこまでの親交を得ている。
コレが腹立たしくなくてなんだというのか。
僕は今まで女なら全て手に入れてきた。
女なんて僕が微笑みかければ向こうから勝手にやって来た。
この目の前で媚びへつらい淫らに喘ぐ義妹も例外では無かった。
最初こそあの凡人の義兄に全幅の信頼を寄せていたが今はこの有り様だ。
所詮は女なんてこんな物だ。
気にいったら抱いて飽きたら捨てる。
それだけの物だ。
なのに今回に限ってはまったく見向きもされない。
それどころか見下してた奴に横から掠め取られる体たらく。
ふざけてる!
ふざけてる!!
(クソクソクソクソクソクソ!!)
激情に駆られ、執拗に愛梨を攻め立てる。
それを喜ぶ愛梨。
あれ程上質でお気に入りだった義妹の体が唐突に陳腐なモノに思えて来る。
僕がほしいのはコレじゃない…
どうして僕ではなくあんな雑魚が…!
くすぶる欲望は次第に怒りに変換されていく。
彼は知らない
その感情が嫉妬によるものであることを…。
中岸蓮司は馬鹿ではない。
校内に置いて義妹の影響力と自分の影響力は理解している。
自分達は学校というコミュニティでは人気者だ。
義妹の愛莉はその愛くるしい外見と言動から校内に多くのファンを抱えているしそれは蓮司も変わらない。
互いに異性の囲いを持つ程に彼等はモテるのだ。
本来なら蓮司も愛莉も同性から妬まれたりしてイジメとかに発展する可能性もあるがそうはならないのは彼等が作り上げて来た一種のアイドル性から来るものだろう。
あの二人ならお似合いだ。
血が繋がらない義理の兄妹の禁断の愛。
てーてー…尊い。
背徳的なカップルだけどそこが推せる。
そんな周囲の認識が二人の仲を取り持っている。
実際には蓮司は愛莉を性欲の捌け口にしか思ってないし最近飽きて来ている。
なんなら義母とも関係も持ってるし表向きには実兄である智也の恋人ということになってる明音とも何度もやっているのだから始末に終えない。
まぁそこは実兄とは合意の上だし実兄も愛莉をよく抱いてるのだからとやかく言われる筋合いはない。
ついでに学内にも何人か蓮司は肉体関係にある女子がいるのだから彼の貞操観念はガタガタであるしそんな事がバレたら彼の学校生活は破綻するだろう。
だからこそ表向きには愛莉を手懐けておく必要はあるし安易に捨てたりは出来ないのだ。
しかし今はそうして作ってきたアイドル的なキャラが足枷となる。
今一番欲しい女に手を出す環境が整ってないのだ。
愛莉をこれ程煩わしく思った事はないしまさか見下していた雑魚義兄に出し抜かれるとは思っても見なかった。
腹立たしい。
実に腹立たしい…。
そのイライラを自分の下で喘ぐ義妹にただただぶつけるのだった。
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中岸愛莉は最近不満だった。
大好きな義理の兄、中岸蓮司が最近冷たいからだ。
自分の相手をしてくれていても頭の中では別の事を考えている。
ソレが不満だった。
蓮司が何を考えているのか…おおよそだが察しは付いてる。
あの3年の先輩…沙流秋菜の事だろう。
蓮司はモテる。
蓮司の周りには常に女が付きまとっている。
しかし蓮司がソレ等に本気になることはない。
何故なら自分が一番女として優れているからだ。
多くの男子から思われて恋焦がれられている自分は他の女より女として優れている。
持って生まれたこの愛らしさ愛くるしさは男という生物を魅了する。
現に蓮司は愛莉に夢中だった…。
だったんだ…嫌だ…過去形なんか嫌だ。
蓮司は愛莉にとって理想のお兄ちゃんなんだ。
アイツは愛莉の理想のお兄ちゃんになってくれなかった…。
だからアイツはもういらない!
愛莉の理想のお兄ちゃん。
蓮兄がいてくれたらそれでいい。
なのに蓮兄は愛莉を最近見てくれない…。
それもコレもあの沙流秋菜とかいう女のせいなんだ!
どうしてだ!
声も顔も愛莉の方がかわいい!
あんなムスッとしたブサイク女の何処が良いんだ!
胸だってお尻だって愛莉の方が大きい。
みんな愛莉を目で追う。
愛莉がかわいいからだ!
なのにどうして!
沙流秋菜ばかり見るんだ!!
満たされない
満たされない
せっかくアイツを捨てて蓮兄を……理想のお兄ちゃんを見つけたのに!!
これじゃ意味がない……。
意味がないじゃない………




