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Scene#6 新田原基地

 タイガーフライトは、各エレメントに分かれて、二機づつランウェイ10で着陸した。

 ランディングし、そのまま駐機場へ入り、エンジンを落とす。

 キャノピーが上に開けられると、整備員の手でラダーがかけられた。

「お疲れ様でした」

 そういって敬礼する整備員たちに、答礼し、ヘルメットからキャップに被り替えたパイロットたちが地上に降りる。

 体力を使い果たしたかのような遅い動作で、星華も地上に降り立った。

 その星華に、バッグを片手にした玲子が近づいてきた。

「天辺」

 と、彼女は相手の姓を呼んだ。

「藤堂さん」

「見事だった、さっきのACM」

 少し微笑んで、玲子は相手を讃える言葉を述べた。

 そして、右の手を握って真っすぐ、星華に向かって突き出した。

 星華も、右手のこぶしを突き出し、二人はグリップとグリップを軽く付き合わせた。

「でも、次は負けないから」

 そういって、玲子は足早にその場を去って行った。

 後姿を見送ってから、星華は心のなかで母に語りかけた。

 ――ありがとう、お母さん。

 一つ一つの動作を疎かにしない。

 そして、次の次を読んで今やることを決める。

 そういう母直伝のCA修行の数々を守って、これまでやってきた。

 今日のACMもそうだった。CAになるための厳しい教えが、パイロットになるために役立っていた。

 「尼将軍」のDNAは、確実に娘へと引き継がれていたのだ。

 ――

 新田原基地での教育開始から半年で、戦闘機操縦課程は修了となる。

 そして、卒業を命じられた航空学生出身者たちは、奈良県の幹部候補生学校に入校を命じられる。

 ここで、防大・一般大学・部内選抜者とともに、幹部自衛官となるための最後の教育を受けるのである。

 着校の日、新田原から到着した同期に交じっていた星華と玲子は、記憶のある声を耳にした。

「藤堂! 天辺!」

「ケイ!」

 呼び声は、以前と変わらない陽気さに満ちていた。

 鳥取県美保基地で、輸送機操縦課程を履修していた山之内・ケイト・恵子だった。「久しぶり」、「元気そうね」という再会を喜ぶあいさつを交わしてから、ケイも「C―130の操縦資格を取った」と語った。

 そして、ここを卒業と同時に星華、玲子、ケイの三人は他の同期たちとともに三等空尉に任官し、晴れて操縦士たる幹部自衛官に任官したのである。

 卒業式の日、訪れた両親の目の前に、星華は三尉の階級章と航空徽章を装着した制服姿で現れた。

 星華は、まず礼をいった。

「お父さん、お母さん、来てくれてありがとう」

 三人で記念写真を撮っても、晴れやかな顔つきの母と娘に比べて、父のそれはやや硬かった。

 未だに父は、娘がパイロットになることに、心配を隠せないのだった。

「いやですよ、あなた。笑って下さい」

「……とはいってもだなぁ」

 そう妻から促されて、漸く夫はぎこちない笑顔を作った。

 ――

 新任地は、玲子が北海道千歳基地第2航空団、星華が石川県小松基地第6航空団、ケイが愛知県小牧基地第1輸送航空隊と発令されていた。

「元気で、二人とも。また会いましょ」

 比較的近く、市街地の近い小牧に行くケイは、ご機嫌だった。鹿児島弁は、すっかり抜けているようだった。

「これからも、しっかりやりましょう。私たちは、開拓者なんだから」

 既に、彼女たちの期の下には、何人もの女子の戦闘機操縦課程の履修者がいた。

 これから先も、自分たちがなにかトラブルを起こしたら、「だから女子は」という目で見られるのは避けられない。

 玲子は、かつての水野二曹のセリフを引用して別れの挨拶にした。

「わたしも、頑張ります」

 星華もそう答えて、そして二人は握手で別れた。

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