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Scene#4 江ノ島・恋人の丘

 星華と治の故郷、鎌倉市の隣にある藤沢市江ノ島、その一角に「恋人の丘」という高台がある。「恋人の丘」の入り口から少し入ると、そこには「龍恋の鐘」が見えて来る。

 土曜日の夕暮れ、ようやく二人の時間が持てた星華と治の二人は、海を見下ろす位置にある龍恋の鐘の前に立った。

「鳴らそう」

「ええ」

 鐘から下に伸びる短いロープを、二人は手を重ねて握り、そして鳴らした。

 鐘の音は、薄紅色に染まる相模湾に向かって響いた。

 それから星華と治が足を向けた恋人の丘で、近くの金網に「二人の名前を書いた南京錠」 をつけると永遠の愛が叶うといわれていた。

 星華たちは、その儀式のためにここに来たのだった。

「わたしね」

 用意した南京錠に、自分の氏名を書き込みながら、星華はいった。

「運命の人がきっといるって信じていたの」

 そういってから、星華はサインペンを治に渡した。

「おれ、小学校でお前に最初に逢った時、なにか感じた気がする」

「なにかって?」

「多分、同じことだよ。運命の人だって」

 実は、この治の言葉は嘘だった。

 教室で最初に星華を見た時の治は、それまで見たこともないほどの星華のかわいらしさに、ただただ見とれていただけだった。

「そう。嬉しい」

 微笑みながらの星華の答えを聞いてから、治も、南京錠に自分の氏名を書き込んだ。

「内示が出たんだ。次の定期異動で、特殊作戦群に行く」

 治は、選抜試験に合格し、希望が通ったのだった。

「おめでとう、角田くん」

 正面から治の顔を見つめて、星華は祝いの言葉を述べた。

「おれたちは、やったんだ」

「ええ」

 相模湾、そしてそれにつながる太平洋を見渡して、二人は確認した。

 二人の手で、南京錠が金網につながれた。カチリという音がした。

 そのあとで、二人だけの儀式が待っていた。

 治は、一応周囲を見回し、誰もいないことを確認してから、星華の上半身に両手を回し、二度目になるキスに及んだ。今度は、奇襲攻撃ではなかった。

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