Scene#12 修了式
二年間の航空学生課程にも、終わりがやって来た。
三月下旬、修了式が挙行される。最初の試練を潜り抜けた七十四名は、飛行幹部候補生を命ぜられた。
「申告します。――」
飛田の去ったのち、学生長を命じられたのは、玲子だった。航空学生の歴史上、初の女子の学生長である。
式典の終わったあと、体育館の片隅で三人の女子学生は内務班長を囲んだ。
玲子が代表して述べた。
「班長、これまでのご指導、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
それを聞いた水野にも、こみ上げてくる感情があった。
「三人とも、よくやりました」
二年間の月日は、両サイドのどちらにも辛いものが多い日々だった。
教育の一つ、断郊競技会も、そうした思い出の一つである。
背嚢を背負い、右手に木銃をつかんで何キロものアップダウンがあるコースを走り、タイムを競うのである。
課程中、最も厳しい課目だったというのが実感である。
女子三人でチームを組み、ピストルの音でスタートを切った。
まず抜かれ、抜き返し、また抜かれを繰り返した。
「がんばれー!」
「あと少しだー!」
ゴールの百メートル手前で三位に返り咲き、そのまま走り切った。
三人は、一つになって泣いた。
「私にも、パイロットの夢がありました。でも、飛行幹部候補生となった直後、気管支喘息を発症して、挫折したのです。そのまま負けたくなかったから、気象職種の道に進み、気象予報士の資格を取って気象員となりました。――教え子には、絶対そういう夢を捨てる目に遭わせたくなかった。だから、嫌われるのを承知で厳しい指導を行ったのです。自分のようなエリミネートは出したくない。ただ、その一心であなたたちを指導したつもりです」
水野は、涙をこらえているようだった。
「藤堂。あなたの能力が高いことは認めます。でも、誰でも完全はありません。今後も、常に学ぶことを忘れないように」
玲子は頷いた。
「山之内。一時はどうなるかと思いました。けど、よくやりました。これからもパイロットになるまでは気を引き締めて。――そして、天辺」
「はい」
「私の指導どおりやり遂げましたね。立派です」
水野は、星華の体力が著しく向上し、体力測定で二級に達したことを称賛した。
「あなたたちのなかからは、戦闘機に乗る者も出るかもしれません。そうなったら、開拓者です。三人とも、胸を張って行きなさい。私は、あなたたちが立派な飛行幹部候補生になると信じています。以上!」
玲子が号令を発した。
「気を付け!」
残る二人も、不動の姿勢を取った。
「内務班長に敬礼!」
三人からの最後の敬礼に、水野も見事な敬礼で答えた。
「ありがとうございました!」
三人の声がシンクロした。




