蹂躙
私はギリギリで意識を失わずに済んだ。原作通りなら主人公も残っているはず。原作ではこの事件で80から十数名まで減った。でも残った人たちも全員ボロボロだ。そのため原作の読者の中にはこの試験を泥試合と言っている人も少なくない。
私ももう魔力が少ない。耐えただけ褒めてほしい。原作の現時点での主人公ならあのタイミングで攻撃されていたら耐えられていないだろう…
すると1人の足音がやってくる。
「ん…あなたは確か…」
「なんでこのタイミングでここにあんたがいるのよ!」
花咲奏は原作では魔法で学園を破壊後飽きたと言ってクラス分けの試験から抜ける。なのになんでここに…
「あとはあなただけ…だから倒しに来た」
「は?」
いやいやいや!まだ主人公や他のサブキャラが生きているはず…あ
一つの仮説が思い浮かぶ。私が打った神罰のせいで2人の戦いが早く終わってしまったのではないのか?それなら私と奏だけになっているのも頷ける。
でも今の私じゃいい勝負どころか相手にもならないよ…どうしよう…
「貴方の攻撃…興味が出た…貴方は私が倒す」
「そうですか…そのためにわざわざここまで来るなんて…暇人ですね」
「挑発…してるようなんてあるの?」
瞬きにも満たない時間で奏は距離を詰めてきた。手元にはいつのまにか魔力の塊、所謂魔力弾を作っていた。通常なら指先程度のサイズだが彼女が作ればそれは拳サイズすら簡単に作り出してしまう。私は避けることすら叶わず真正面から食らってしまう。私は吹っ飛ばされて壁に激突する。口から血を大量に吐き出す。体調がかなり悪い。少し寒くも感じてしまう。前世の死を思い返される…
こんなところで…死ぬわけには行かない…
私はゆっくりと地面に手をつけて詠唱を始める。私ができる最強の魔法…
「我の声に応え、我が目の前に現れよ…そして我が敵を撃ち倒せ…召喚」
手元が光り輝く。それを見た瞬間、私は気絶した。
・・・
目の前の彼女が最後に魔法を放った。魔力の流れからして召喚魔法だろう。でも今の人類の技術では特定の生物を召喚するのは契約しないといけない。彼女が契約した生物がいたなら既に召喚してたはず…つまり今回の召喚は何が現れるかわからないということ…目の前の光が晴れ、召喚された生物が見えてくる。そこにいたのは白い髪に白い瞳、6枚もの白い翼を広げ1人の女性が現れた。
「まさか…我を召喚する人物が現れるとはな」
「…誰?」
「ん?我か?ふむ、我の存在も時代の流れにより忘れ去られたということか。では名乗らせていただこうか。我は熾天使が1人、サディンだ。」
「熾天使…サディン…知らない」
「失礼なやつだ。我は名乗ったのだ貴様も名乗れ」
「…花咲奏」
「そうか…少し待て」
サディンと名乗ったそいつは気絶した彼女に近づき手を掴む。
「我は汝の剣となり盾となり知となろう。」
唱えた瞬間再び眩い光に包まれた。晴れるとサディンは振り返り私と向き合う。
「待たせたな。では始めようか」
「…いいよ」
私は大量の魔法を展開する。でも展開した瞬間、その全てが破壊された。
「!?」
「ふむ、遅いな。見本を見せてやろう。魔法は得意ではないがな…」
気づいた時には私は吹き飛ばされていた。防御魔法を展開する余裕すらなかった。私が魔法を認識する暇すらなかった。何が起きたのかも理解できなかった。
「ガハッ」
たったの一撃…その一撃だけで私は身動きが取れなくなっていた。
「この程度にも気づかんとは…人類も落ちたものだ…」
私が呼吸を整える間にもサディンは一歩一歩と近づいてくる。サディンは私の目の前で足を止めて見下す角度で私を見る。その瞳は私の全てを見透かされているような感覚に陥るほど美しかった。それとともに恐怖を感じる。もう一度あの攻撃を受けたら私はどうなるのだろう。私は魔法の技術は高いし精度は人類の中でも上位にあると思っている。その代わり身体能力は低いし素の防御力も高くない。そんな私がアレをもう一度食らえば致命傷に至るかもしれない。私の身体は無意識のうちに震えていた。そんな時だった。起き上がるはずのないと思っていた彼女が立ち上がった。その姿を見て私は…
「え?」
そんな驚愕の声を出すことしかできなかった。




