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第二話

おはようございます。第二話のお届けです。いよいよ怪異が顔を出し始めます。お楽しみに。


「祭りの後、後の祭り」

      (第ニ話)


        堀川士朗



坂野は一人で村をぶらぶらと歩いていた。

どうせ今の時間は宿に戻っても檜葉と弘子はデートタイムなのだ。

坂野は前々から宝弘子の事が好きだった。

劇団に坂野が二人からは遅れて入ってからも、坂野はキュートな弘子の事を遠からず、何となく意識し、やがてそれは淡い恋心なのだと思うようになっていた。

しかし二人の時間に踏み行ってはいけないと自分に強く言い聞かせていた。

そんな自分がもどかしい。


誰もいない畑の道端を歩く坂野。

無人の軽トラが停まっている。

潮風により錆びている。

カラスが飛んでいる。

太陽が照りつけている。


何かが後ろを歩いて来る……。

そんな感じがした。

振り返ってみた……。

三十メートルほど後ろに、痩せた中年男性が覚束ない足取りで坂野の後をついて歩いていた。

男性の肌は病的に青白く、髪はボサボサだった。


「……何ですか?」


と、坂野は大した度胸もないくせに男性に声を掛けてしまった。

すると男性はギクシャクと操り人形のような動きで動き出し、坂野に襲いかかろうとした!


「あ~~~~」

「わあ何何何!」


半泣き状態で全速力で走って逃げる坂野。

随分と遠回りをして民宿のムシ屋に戻るともう宝と檜葉の二人は部屋にいた。


「さ、さっき!さっき変なのに追いかけられたよ……!ハアハア。顔が青白かったんだ、そいつっ!追いかけてきた!」

「え?マサ大丈夫か」

「ああ。『おはぐれさん』だね。」

「何それ弘子」

「祭りの前に出てきちゃう奴。慌てん坊さん」

「???」



民宿、ムシ屋での夜の宴。

地元で取れた新鮮な魚介類が並ぶ。

みな若いので、餓えた狼のように食らいついて食事を楽しんでいる。

弘子は生グレープフルーツサワーを飲んでいる。

それは魔法瓶に入っていて、何杯もおかわりしていた。

顔が赤い。

酒に弱い檜葉は瓶ビールを一本開けたらさっきから畳の上でいびきをかいて寝てしまっていた。


しばらくして、テーブル越しに宝が坂野にすり寄ってきた。

坂野正和は宝弘子の顔を見つめた。

弘子の眼はうるんでいる。

頬は赤みを差している。

軽く震えているようだ。

雨にさらされた仔犬みたいに。


「マサ。キスしよ」


坂野は口づけした。

弘子の口の中からは生グレープフルーツサワーの味がした。


「続きはまた今度ね。檜葉がいない時に」


宝弘子がうるんだ瞳で言った。

夜が更ける。



            続く



ご覧頂きありがとうございました。また来週土曜日にお会いしましょう。

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